ひとでなしから生まれ出る
お読み頂き有難う御座います。
急に寒いですね……。
「この町の人間は、聖女狂いだな」
「せ、聖女狂い……?」
聖女狂いとは!? 聞いただけで病んでそうで物騒ね……。
例えば……。
……聖女様、聖女様あああ……。
そんな科白を呟きながら町中をラリって歩き回ってるってこと?
そんなヤバい町民見たことない……んだけど。
……まさか、其処まで病んでないタイプが潜んでる? や、やばいわね。
「町興しも聖女頼み。観光も、奇跡も……ひとでなしから生まれた性別のあやふやな人外の赤子に頼りきり。おかしいとは思わないのか?」
「ひとでなし……じ、人外!?」
いや、そう言われると町ぐるみで聖女様の御威光に頼ってるけど、それよりも。
人外って、何よ!?
「何だ、知らんのか? 『聖女』は子供を平気で棄てるひとでなしからしか産まれない」
「え」
た、確かにそのくだり……聖女様の、いえ、ジェントさんの生い立ちだけど。
ひとでなしからしか、産まれない?
いや、子供を棄てる輩は確かにひとでなしだけど。そっちじゃなくて……。
それは……聖女様の生まれ方は、同じ? ジェントさん、彼だけの事ではないというの?
そういや……聖女様って、孤児が多いって聞いたこと有るような。まさか、同じ境遇のお生まれだなんて……そんな事、アリなの?。
「性別の固まった聖女からなら、伴侶を得てすることすりゃ子供は作れるし産める。だが、聖女は産まれない」
「そ、そんな」
何てこと……。
明け透けさをツッコむ雰囲気じゃない……。年若き乙女に対して配慮とか全然無いって抗議したいトコだけど……。
「世襲制じゃないんだ。でも、この町のヤツなら、誰しも知ってる事だろ?」
流し目がイケメンな……いや、それどころじゃ無いけど。
聖女が世襲制なのは知ってるけど、他は……し、知らんけど!?
うう、異議申し立てが許されなさそうな視線をヒシヒシと感じるわ。
「し、知ってますような、そうでもないような……」
「まあ仕方ない。自身のルーツを拒むなんて出来んだろう。聖女の血を引く一族だもんな」
「……へえっ?」
せ、聖女の血を引く一族……!?
ウチは、単なる世襲制とは聞こえがいいけど、惰性気味で続いてる町の雑貨屋で……?
そ、そんなミラクルファンタジーな一族になった覚えなんて、全く無いわよ!?
「何だ、知らんのか。家具屋の倅ジローモモ……今は爺か。あいつ、何代か前の聖女ヒロナの倅だろう」
「……え。
家具屋の爺さん、って。あの半分ボケた?」
この前野次馬に来てた……あの家具屋の先代!? て言うか本名そんなんなの!? 人様の名前になんだけど、どういう名付けセンス?
聖女ヒロナって、ええ!?
「何だ、あいつボケたのか。目玉焼きトースト食いすぎで食費を上げて聖女に怒られ倒してたな」
エピソードが、とても、滅茶苦茶御本人……。
え、あの爺さん、聖女の倅いや、息子!?
いや、それよりも!!
「聖女様って、あの家具屋に嫁がれたんですか!? あの人、聖女!? ええ!?」
え、聖女様って高貴な方のお嫁……いや、お婿さんでも可なのか。取り敢えずさ、庶民に嫁がないよね?
ギンギラギンな玉の輿に乗ってんじゃないの!?
私を見初める事態が、イレギュラーなんじゃないの!?
「お前の曾祖父ニニンも聖女の筈だが」
「曾 祖 父 ちゃ ん が 聖 女!?」
更に衝撃波が!!
待って、待ってよ。頭が派手に弾けてパンクしちゃいそうよ!
しかも、意外と血縁関係近い!!
「よ、よりによって……遺影が恐ろしく怖い曾祖父ちゃん!? 曾祖母ちゃんじゃなくて!?」
会ったことないけど、滅茶苦茶眉間のシワがヤバくて怖い遺影が飾られてる、あの人が!?
曾祖母ちゃんはニコヤカ一辺倒だったのに!?
「お前の曾祖母は跡取り娘だろうが」
「そ……うでした」
そ、それは聞いたことある、かも。
な、何て事なの……。
私の身にも、聖女の血が……。
……全くミラクルパワーを放てそうな気がしないわね。
「だから判るだろう。この町のヤツは、大方聖女の子孫。聖女に隷属したい根性が染み付いてるんだよ。その血のせいで」
「いや、別に隷属したい訳では……」
「聖女は、自分の意のままに操れる守護者を見つけるのは得意だぞ。幸い私は他の街出身で跳ね除けて別居しているが」
お前には、その選択肢は無いんだろうって。
……いや、ええと。
ジェントさんと血が繋がってないビシャンさんは、何故か似ているな。その、有無を言わさぬ見つめ方……。
例えば、ジェントさんを見棄てて、町を出る?
隣町とかで、職を探す……とか。
ええと、あの人を棄てる?
「いいように使われるぞ」
「う……」
此処まで聞かされても……。た、確かにジェントさんを置いていくパターンは、選択肢は……心に湧いてこないな……。
色々理不尽も感じるのに。もしかして、コレが聖女の血のせいなのかしら。
ど、どうしたらいいの。
ジェントさんに、向けられるこの感情が、……このちょっと温かくなってきた感情が、造られたものだなんて。
身内に甘くなる派生系……みたいな感じでしょうか。




