守護者への口づけを
お読み頂き有難う御座います。間が空いて申し訳なく。
花に囲まれた光るバケツから出されたのは、小さな手。小さな体、小さな顔……。
だけども……滅茶苦茶、知り合いの顔……。いや、守護者認定された……そもそも守護者とは何なのか、未だに謎だし。
兎に角……シュールが過ぎやしないかしら?
いや、混乱しすぎて呆けてる場合じゃない!
何故!? 何故縮んでいる!? 町からここまで、大した距離、来てないわよね!?
ジェントさんが……えーと、私よかちょっと大きめくらいだったから……私、155cmだから、160無いくらい?
……このサイズに縮む迄離れるのって、かなりの距離よ!? それとも、あの親? の人、私を騙した!?
「どどど、どうして……距離が!? いや、騙した? なぜ……。あっ、声が!」
しまった! でっかい声を出しちゃったわ!
結構離れてない所に神官が居るのに! いや、今落石でアタフタしてるから、気付かれない!?
あー、でも私の声、通るのよ。だって、雑貨屋の娘だもの。……まあ、ウチの周りは商店街だし、小声の人の方が少ないけどね。
「このバケツの周りは防音花が咲くから、叫んでも大丈夫ー」
「防音花……とは」
この……パッとしない森に咲いてる割に、主張激しい赤白黄色の花かしら。あ、焦げ茶色もある。……焦げ茶の花とか初めて見たわね。取って付けたように日差しが差し込んでこなきゃ黒い花に見えたわ。
「その花ですよー」
「……何でまた、防音を……」
「そりゃー、密やかな秘め事はーお静かに行うものですー」
「はあ……」
「見て下さい。お花溢れる静かな森ー!」
「……はあ」
局地的だけど、咲いてるわね。そして、恣意的ではあるけど、静かよね。
何なのかしら。……特に開けてないから、特別感というより違和感バリバリなのは。
しかし、光るバケツの中でクルクル回られると……可愛らしいのね。人形のように愛らしい族……とは、言い得て妙かも。
「まるで、物語のようですよー」
「……は、はあ」
こんなに小さいのに、声はよく通るのね。本当に向こうに聞こえないのかしら。
しかし、それを覗き込む私がバケツに映って……胡散臭い……。
急に現実に戻ってしまうな。
「さあ、ニノンちゃん! バッチリですよー!」
「何がですか」
「口づけをください!」
……クチヅケとは。
そんな名前の漬物有ったかしら。それとも、お菓子の名前か何か……? あ、この前お父さんが居酒屋から買ってきた、イカのクチバシの酢漬け?
「……酢漬けですか」
「何でそうなっちゃいますー? 天然さんですかー? 可愛い所、沢山ありますねー。キスですチューですマウストゥーマウスですよー! やだなあ、説明させる? 恥ずかしい!」
「……は?」
え、え? え?
「はああああ!? は、な、何で!?」
「したいからですよー」
「……し、死体から?」
「凄い解釈違いが聞こえてきましたけどー、最初から聞いてませんでしたー?」
「な、な、何を……ヴォア!? 浮けるの!?」
ふわーんって、か、顔の前に人形サイズのジェントさんが!!
よ、寄り目になる!!
「守護者になってくださいってね。聖女からしたら……」
小さい手が、私の頬に添えられる。
……人形サイズなのに、温かくて。
い、生きてる……。
物凄く非常識で、ファンタジーなのに!
「プロポーズなんですよ?」
……視野がね。
近付きすぎだと……見えない訳でね。
何か、くっついた……と。
そして……キランキラン光って。
「うん、嫌じゃないみたいですねー!」
テンション高めの、元のサイズのジェントさんが……私を抱きしめていたのよ。
キンキラバケツに片足突っ込んで。
……いや、その。
確かに嫌ではなかったけど。
嫌がられてると戻れないみたいですね。




