森の中に置いて行きたい
お読み頂き有難う御座います。
「ふ、深い……」
森なんて長時間歩かないもの、躓くのなんのって……。道を外れると木の根が滅茶苦茶出っ張ってるわ。
ふっ、私も所詮は繊細なシティガールだったと言うことね……。
濡れ落ち葉多くて歩き辛いったら……。
「聖女様ー!」
「出てきてください聖女様ー!」
「おやつは木の実のキャラメリゼですよー!!」
……この面子さえ着いて来なければ、もっと軽やかに探せてたわよね!?
5人も神官に囲まれてへばりつかれて、私って滅茶苦茶可哀想!!
「煩ーい! あんたらが闇雲に騒いで出てくる訳無いでしょ!?」
「うっ、誘拐守護者なのに……」
「突貫で選ばれたのに……」
「文句ならジェントさんに言いなさい!! 私は善意の塊よ!」
置いて行きたい気持ちで一杯だけど!
あの性別不明のジェントさんの親の人から、使えと言われたもんだから!!
……しかし、今日一日で立場がコロコロ変わり過ぎでは!?
ジェントさんも、私も!
「大体、聖女様の性別を決める運命の相手は……立場ある殿方が良かったのに……」
「複数の守護者をお迎えされる気だろうか」
「本妻? は他の姫を……」
ブチッて蟀谷がブチ切れたかと思ったわ。
何なのよコイツら! あまりにもあんまりよ!
「だーかーら! ジェントさんの気持ちを考えろっつの! そんなんだから逃げられるのよ!!
森の中に響き渡るレベルで、好き勝手に愚痴るなってのよ! 人の心が無いの!?」
イライラし過ぎて、思わず負けじと怒鳴っちゃったじゃないの!
「だって、聖女様は……我々と違うお血筋で、我々とは違う御身分で」
「神殿でお慈悲を配るお立場で」
い、イライラするわ。あの親の人は兎も角、この神官共、滅茶苦茶イライラするわ!!
そりゃ、こんなのに囲まれてたら多少なりとも歪む!
「貴方達、聖女様が苦しんでいるのに助けてあげられないの?」
「は? ポッと出の貴女とは違うんですが?」
「我々は常に聖女様をお助けしておりますよ」
よ、横っ面叩きたいわー。顎に頭突きをお見舞いしたい。今なら華麗にノックアウト出来そう!
「だったらアンタが代役をやりなさいよ。あの変なメイクをしたら、顔なんて判別付きゃしないわ」
「えっ……」
え、じゃないわよ。まさか今迄と同じ様に過ごせると思ってんのかしら。
あれだけジェントさんが逃げ出して意思表示してんのに。
「え? じゃないのよ。聖女様が安らかにお過ごしになる為に、喜んで替え玉やりなさいよ」
……まさか、あの侵入者の提案を日を置かずに私がすることになろうとは。
現実って奇異よね。
「高貴な男性でも女性でも、どーんな嫌味で悪辣な人でも喜んで受け入れなさいよ?」
「いや、それは……」
「因みに、あんたらが聖女様へ押し付けた第五王子とやら、御感想をお聞きしたんだけどね」
怖いと友達に評判の笑顔で、ニッコリと嗤ってやったわよ。
「カスに組み敷かれたくないんですって。だから、アンタらも高貴なカスの機嫌を取りなさいよ。替え玉として、聖女様のお心を癒やしなさい! バーカ!」
「キャアッ!」
「な、何をする小娘!!」
足元の落ち葉を蹴り飛ばしたら、神官がひっくり返ったみたい。
弱っちいわね!
よし、奇襲成功! あー! ウザかった!
……早く、ジェントさんを探さなきゃ!
……縮んでたら、獣に食べられちゃう! 保護してから……取り敢えずを考えるべきだわ!
誰でもいいから高貴な血を宛行う、悪しき習慣だったようですね。




