捕らえられたのは
お読み頂き有難う御座います。
「でも、魔の坂森をどうやって抜けよう……」
何を隠そう……この町は山に囲まれてるから、四方八方滅茶苦茶坂なのよね。貧しかろうが偉かろうが、人力か馬の力で移動しなきゃならないの。
誰か偉い人が、山のトンネル工事に着手しないのかしら。あの失礼な王子がまだ居るんなら、お金を出して工事してって欲しいわ。
「おやー、付き添ってくれるんですー?」
「だって、ジェントさん町から出たこと無いでしょ?」
「ニノンちゃんは有るんですかー。都会的ですねー」
「……そ、そうかしら……」
都会的……我ながら滅茶苦茶似合わない単語ね。悲しくなるわ。
まあ、恋愛はちょっとお役に立てそうにないし……。綺麗なお顔立ちで温厚なんだけど、得体が知れない上に性別不詳聖女様ってのがな……。
流石に其処を超えるチャレンジ精神は湧いてこない。後、そんなややこしいラブストーリーには、私の瞼のビジュアルが解釈違いなのよね。もっと肉が刮げ落ちてくれないかしら。痩せようが腫れぼったいのは本当に何故なの。腹立つなあ。
「ジェントさんは、森に詳しいんですか? 安全に抜ける御力とか……」
それに、恋愛絡まないならちょっと冒険みたいで素敵かも。
不謹慎だけど、おもしれー感じになってきたかもね。聖女様が居られるんだから不思議な力で危険生物とか避けられそうよね。
「あ、特に獣に対して能力発揮されないですけどー、ニノンちゃんは野営ノウハウ有りますー?」
「や、野営……キャンプ位ですが、え。能力……無いんですか?」
こ、此処は……魔物虫や魔獣も従える清らかパワーで危ない目に遭わずに出掛けられるパターン、ではないの? 人の立ち入らない森で美味しい食料を奇跡的に見つけたり、便利強い獣を従え楽勝旅……は!?
そんな、ニコヤカに否定……するの!? あんだけ金ピカ其処らを光らせてたのに!?
「ある程度言語で解り合える関係か、無機物にのみなんですよー。私の聖女能力」
キラキラ光る自己主張激しいバケツが、ジェントさんの笑顔並みに眩しいわ。
言語で解り合える関係……則ち、人間……。そして、無機物……。
……獣と虫とは意思疎通出来ないもんな。
「つ……」
「使えねーんですよねー」
「いえ、そ、そんな事は……」
使えねーだなんて流石に本人に言えないけど、本人が言ったな……。いえ、つい口から漏れちゃったけど……セーフよね。
「そ、そうですか。取り敢えずキャンプ用品とご飯系を仕入れて来ないと死にますね」
「有難いことに前向きですねー」
全くよね。
……何で私、出会って間もないジェントさんの世話を焼いてんのかしら。
面倒見なんて良いタイプでは無かったのに……。
「取り敢えず……家に戻りましょうか。此処からなら裏道を30分くらい彷徨けば、現地人でも撒けますし」
「……頼もしーですねー」
しかし、この光るバケツどうしたもんかしら。
持ち歩くと確実に神官に身バレするしなー。
「あの、ノーマルなバケツに戻して貰う事って……」
「え」
「え?」
何故そんなビックリした顔を……。いや、原状回復は当然よね?……当然ではないの? そういや、井戸も戸棚も……まだ光ってんのかしら。家の光は直ぐに消えたけど。
「……私の気持ちなので持っておいて欲しいんですが」
「……そもそもウチの商品なんですが……」
ちょっとお高めのブランドバケツなのよね……。光ってても売れるかなあ。
「見つけたぞ! 聖女様を誑かす端女!」
「は……」
……え。嘘でしょ。
……ジェントさんが、逃げ出した!?
私が……バケツ持ったまま、神官に組み敷かれたというのに!?
「う、嘘でしょおおおおお!?」
中々に株を下げる行いですね。




