聖女様の能力と願い
お読み頂き有難う御座います。
普通ねえ……。聖女様を守る感じって、何かこう……凄く強い騎士様が身を挺して守るもんじゃないかしら。
追手もこう……強そうなゴツい人が目白押しでさ。
……何故、単なるひ弱い町娘の私は屈強……でもないけど騎士ルックの聖女様を連れ、ヒョロい神官から逃げているのかしら。
しかも、金ピカのバケツを提げて……。
……普通さあ、一般人が逃げるにしてもこう、急に扱えるようになる強くて聖なる武器とか……無いの!?
まさか、この追いかけっこでゲット出来るの? ……この、お馴染みの町中で……。
そして、走ってたら結構疲れてきた! 神官達は……あら、結構脱落してるわね。
「あの、ジェントさん……何処に行くんですか?」
「隣町迄行きたいんですよねー」
「……と、隣町!? 山を越え谷を越え、村を3つ越えた、あの隣町!?」
「そうそうー」
き、気楽に言うなあ……。
駅馬車で天気とか良くて何事もなくストレートに行けても、3日掛かるのに!
……因みに隣村は駅馬車で2時間、徒歩4時間なの。此処の町は結構ド田舎なのよ。
「取り敢えず、や、休みませんか……」
「何処か滅茶苦茶目立たなくて誰も座らなくて一日隠れられるベンチでも有るかなー」
そんなもんは無いわよ……。一応観光地なんだけど、此処。
いや、観光客を呼び込んでいる奇跡の聖女様御本人に突っ込むのもな……。
「……取り敢えず、其処の木の陰にしゃがみましょうか……。木が転がってた筈」
「流石、町には詳しいですねー」
……いや、単に不法投棄を覚えてただけなんだけど。誰かが山から引き摺ってきたらしくて……とんでもないわよね。
硬い木だったらしくて、中々腐らないのよ。迷惑よね。
「……この木は……」
「何ですか? あ、まさかこの木から聖剣とか聖槍とか聖ビームとか作れそうですか?」
「素人なんでビームは無理ですねー」
「ビーム以外は作れると!?」
え、滅茶苦茶冗談だったのに!!
凄いな聖女様! ビームは……確かに無理よね。でも、聖剣とかも顕現させるの無茶苦茶無理だわ。
「でもー、一時的に滅茶苦茶光る木を動かせますー?」
「は? どーゆー事でしょう。
まさか、光る木って、これ……この無茶苦茶重たそうな転がった木を動かせってこと!?」
おい!! うんうんって笑顔で頷かないで欲しいんだけど!?
「形あるものを変形は出来ませんよー。私、聖女と騎士しかした事有りませんしー職人さんじゃ有りませんしー」
「そ、そりゃそうですが」
「世の中の聖剣とかなんて、職人さんが丹精込めたお品に不思議な力を宿らせた物ですからねー」
「そ、そうなんですか……」
「まあ、丹精込めてなくとも光らせるだけなら其処らの木でも針金でも出来ますが」
「……あの、そもそもあの光は何なんです? それと、どうして隣町迄行きたいんですか?」
「警備騎士としてボンクラに生きてたいんですー」
「……ぼ、ボンクラに」
……ジェントさんの目が、日陰でもよく分かる程揺れているわ。
「誰かに常に注目される人生を、棄てたいんですー。物を光らせるだけの人形なんて、止めたい」
「……」
……私は、彼の溢れる涙を無意識に拭っていたの。
ジェントさんへの、文句とか……疑いとかスッカリ溶けてしまって。
……この寂しい、知っている筈なのによく知らない人を、力無いけど助けてあげたくなった。
光る剣は格好いいですけどね。




