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あの頃は。2

凛子は直接の妹ではなくおばさんとおじさんとの間の子供だ。凛子は勝気な女の子で、おばさんの気質を引き継いだのかからっとした性格で僕がこの家に来た当初も物おじせず僕を構ってくれた。

 キリっとした細眉、鋭く涼やかな目、髪は首のあたりまで伸ばしそこで切りそろえておりさっぱりとした印象で、体のラインもスラっとしていて細く、それらが合わさってどこか清涼な雰囲気を感じさせる。

今はまだ立ち振る舞いや、言葉使いの幼さが勝つが将来的には、男子よりも女子に人気が出そうなイケメン女子になっている事だろう。

さらに番長気質もあるのか小学校の時に、僕をからかってきた男子に腕ひしぎ十字固めを決めて謝罪させたこともある。そのおかげで寂しい思いをしたことはなかったが先ほどみたいに多少……いやかなり乱暴なスキンシップをしてくる。

 おかげでしょっちゅう泣かされていたがいい子なのは間違いない。最愛の妹、彼氏とかできたらぎゃん泣きする自信がある。

「あはは!わが敬愛する兄を鍛えているんだ、むしろ感謝されてもいいと思うけど?」

相変わらずの純真100%搾りたてのそのまま雑誌のグラビアを飾れそうな笑顔で、僕をからかうように言うと、跳ねるように一階に降りていく。

 鍛える――妹がそう言うには理由がある。

 自分で言うのはかなり嫌なんだが、僕はたまに女の子と間違われるくらい華奢だ。嫌なついでに言うと顔も所謂女顔らしい。そのせいか本当に女の子と間違われることがたまにある。14歳、中学二年生の今でも制服を着ていないときには特に…まあ、自分より妹の方が男前に見えることもあるから完全には否定できないのが悔しい。

おばさん曰く「母親に似たんだねえ、あの子美人だったから」と目元に光るものにじませながら言われたことがあったが素直に喜べない…(髪を伸ばせば瓜二つらしい、その言葉を聞いて僕は生涯髪を伸ばさないと誓った。まあ、髪を伸ばす男性は元々少数派だと思うけど)女性にもてたいのであって男にもてたいわけではないからだ。

 この見た目で損したエピソードは多くあれど、得をしたことなどほとんどない。さすがに筋肉でもつければ間違われないんだろうが、如何せんインドア主義者の僕は、長続きしたことはなかった。筋トレを続けられる人は本当にすごい、筋トレをやっているだけで無条件で尊敬します。

「ちょ、それは言わない約束!」

階下に向かって大声を出しながら、服を着て、家族で朝ご飯を食べ、言ってきますの掛け声と共に妹と共に外に飛び出した。


学校では特筆すべきことは特にない。黙って授業を聞いたり、友達とくだらない会話を繰り広げて毎日が終わる。積極的に部活動を行っている所は放課後も何かあるのだろうが、幸い僕が所属している読書部の活動などあってないようなもの。適当に部室(という名の物置部屋のような空き教室)で適当に本を30分程度読むとさっさと帰宅する。

「…よし!部活動終了!!早く帰ろう!」

 最早本さえ読まずに眠りこけていた妹が、突然ガバリと起き上がり僕に向かって高らかに宣言すると椅子をけって立ち上がり、帰り支度を済ませた僕の手を取り部室から突風のように去った。

ちなみにその間数少ない部員は特に何の反応も示さず黙々と本を読んでいる。慣れているのではなく、妹がこの部に入った時からこんな感じなのでよほど本に熱中しているか、関わりたくないと思っているかのどちらかだろう。

所で意外に思ったかもしれないが、はつらつとして運動神経もいい妹もこの部の所属であり、なぜと理由を尋ねたこともあるのだが、たどたどしくはぐらかされてしまった。

…まさか兄の事を思って?お兄ちゃんとずっと一緒にいたいから?うん、そうに違いないしそうに決めた。たとえ違がっても違わない。

 そんな理由だったらそれだけで僕は生きてきてよかったと思える。大げさではなく。


「あ、CDショップよっていい?」

帰り道――まだ日は高く、どこか町の空気ものんびりしている気がする。

 隣を歩く妹が僕に向かって尋ねた。

「え?いいけど…なんか新譜出てたっけ」

「ん?そういうわけじゃないけど」

暇だしね、といい僕の返事を待たずにCDショップに進路を変える。

まあ、僕も妹の買い物に付き合うのは願ってもない事なので後ろからついていく。



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