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学歴社会異世界。冒険者ギルド編


レバスタニア王国。その国で毎年行われる、小学生がなりたい職業ランキング1位を調査開始年から今まで独占し続けた職業………


それが、冒険者である!!!


公的に運営されている冒険者ギルドに総合職で就職するには、単純な戦闘力だけでなく、コミュニケーション能力、ガクチカ、学歴、その他諸々を高水準で有していなくてはならないという超エリート職であるのはレバスタニア国民であれば周知の事実であるが、その実、コネや、就職解禁前からの裏内定などの黒い噂があるのも否めない。


そんな冒険者ギルドに総合職で就職しようとする新卒の男が一人。


その男の名は、ハマージ・ショータといった。



ーーーーーー



俺、浜地翔太が転生したのは約20年前になる。

王都の庶民の家に生まれた俺は、まさか自分が異世界転生をするなどとは思いもしなかったので不安の気持ち八割と、あわよくば華やかなな無双生活を送ることが出来るかもしれない期待の気持ち二割だった。


しかし、不安が十割を占めるようになったのはこの国が学歴社会であると悟った時だった。

赤ん坊の頃からなまじ賢しかった俺は、親の目を盗んではできる限りの知識を吸収し、他国の言語を覚え、色々な本を読んでいた。子どもの脳というのは非常に物覚えが良いもので、前世では考えられないような速度であらゆる知識を吸い込んでいった。


そんなある日、ふと学校の数が異様に多いことに気づいた。たかが中世ヨーロッパのような文化でこれ程までに大学が上から下まであるものだろうか。その疑問を突き詰めていくうちに、学歴が今の社会で非常に重視されていることが分かった。

就活四季報によると、所謂大手企業や官僚などの職は貴族でも簡単になれるものではなく、学歴などの優秀な学生を多く採用しているようだ。

逆に、Fラン大学卒の多い企業は福利厚生が薄く、収入も少額で、劣悪な労働環境である傾向だ。

もっとも、労働環境においては大手もそう大差ないらしいが。


そんな夢のない異世界を直視した俺は、頑張った。前世とそう変わらない現実に辟易としながらも、頑張った。キャリアアップの為にならばと大抵のことはした。それを約20年、我ながらよく頑張ったものだ。


さて、この日、俺の第一希望である「レバスタニア冒険者ギルド公社」の最終面接が行われる。

念の為スーツを整えて、手のひらに人と書いて飲み込んだ後、本社の正面扉をくぐった。



ーーーーーー



やはり圧が凄い。名高い冒険者ギルドの最終面接ともなると、就活生や案内の方が見えないオーラを発している。

大丈夫だ。俺はそんなやつらとも引けを取らないキャリアを詰んできたはずだ。場の雰囲気に呑まれるな。


「次、6番から10番までの方お入りください」


10番、俺だ。どうやら最後の選別は集団面接らしく、5名の就活生と3名の面接官で行われるようだ。


「失礼します」

「失礼します」

「失礼します」

「失礼します」

「失礼します」

全員が入室し、最後の俺がドアをしめる。


皆、席に並ぶと面接官の一人が口を開く。

「はい、座って。………まず、お名前と出身大学を教えて貰えるかな?じゃあ、6番の君から」


「はい。イーストキャピタル大学出身、マリベル・ネクソンです」


「ふむ、我が国において最も優れている大学じゃの」

「とあるサイトによると偏差値72と言われておる超難関大学だ」

「開幕からなかなか素晴らしい人材ですわね。では次の、7番の方」


「はい。王都頂点大学卒業予定のマック・KFC・キングです」


「なに!?一年につき30名しか受け入れていないという貴族のみで構成された王都頂点大学だと?」

「世界で最も歴史がある学校と言われているな」

「卒業生は皆、王城勤務と言われていますがまさかウチにくるとは………」


「ゴホン、失礼。気を取り直して8番の方、お願いします」


「はい、テイル・アズールです。大学はノースキャピタル大学です」


「ノースキャピタル大学!?隣の大国の最高峰の大学ではないか!」

「我が国のGDPを追い越したのも束の間、すでに倍以上の差をつけられているあの国か!」

「あそこは異常な程の受験戦争が勃発していると聞きますわ。それを勝ち抜いたということですのね………」


「………ふぅ、ふぅ。では9番の方どうぞ」


「はい。マサチュー摂津工科大学出身、カーリー・リキッドと申します。よろしくお願いします」


「マサチュー摂津工科大学!?世界の私立大学No.1に長年君臨し続けている、あの!!!!????!」

「GDP世界一を誇る超大国じゃないか!やはりあの国なくして歴史は語れないっ!!!」

「なんという………もはやこれ以上ない人材………」


「………………………………………………………………………………えぇ、では念の為10番の方」


ーー来た!俺の番だ。大丈夫、大学を明かすだけだ。これが決め手になるわけじゃない。


「はい、Oxforder大学出身、ハマージ・ショータです」


「「「………………………………え」」」


「えええええええ!!!!!!!!Oxforder大学ぅううう!!!???あの!?例の?!歴代王太子様も留学なされている超有名最強チート無双大学!!!?????」

「なんだと!?唯一のSSSランク大学じゃないか!!!うおおおおおおおおおお↑↑↑↑↑↑↑」

「ふおおおおおおお!!!!FxxxxxxxxxxxxxxK!!!!!!!!!抱いてくださいぃいいいいいいいいい!!!!!!!!!」



面接官だけでなく、他の就活生も発狂し、今は気絶している。


やれやれ。




「あれ、俺なんかやっちゃいましたか?」


就活とかよくわかんないけどこうだったらいいな。

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