ゼンマイ仕掛けの道化師
君の願いは何?
道化師は言った
僕は分からないと答えた
君の願いは何?
僕は尋ねた
道化師は答えた
ゼンマイを巻いとくれ、うんとキツく
僕は道化師の背中のゼンマイを巻いてやった
道化師は踊るのを止め
おとなしく座って背中を向けている
そしてブツブツと退屈しのぎの歌を歌う
オイラを作ったヤツはさあ
きっとうんとバカなんだ
何故ならオイラのゼンマイを
背中なんかにつけたから
背中じゃオイラにゃ届かない
近くて一番遠いトコ
ゼンマイ切れたらバタンキュー
あらあらダンスはもうおしまい
僕は小さく吹き出した
そして見つけた願いを口にした
僕が君のゼンマイを巻いてあげる
だから踊って
道化師はヒューと掠れた下手な口笛を吹き
また歌い出した
オイラを作ったヤツはさあ
きっとうんと天才さ
何故ならオイラのゼンマイを
背中なんかにつけたから
背中じゃオイラにゃ届かない
近くて一番遠いトコ
アンタがいれば踊れるさ
アンタがいなきゃ始まらない
オイラを作ったヤツはさあ
きっとオイラを好きだった
何故ならこんなオイラでも
ひとりぽっちじゃ生きられない
そんなふうにしたからさ
おかげでアンタの願いもお手のもの
オイラだけじゃ踊れない
それってきっといい事さ