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人形
人形は眠る
その背中に生えたゼンマイが巻かれる事を
唯ひたすら待っているようだ
だけど人形は待たない
目を綴じても夢など見ない
なにも望まない
なにも愛さない
なににも涙しない
何もない
だって人形だから
でも人形は愛を以て作られた
だって愛される為に作られた
人形は踊る
その背中に生えたゼンマイが巻かれた時
人形はそれは見事に踊りだす
歯車の軋みに弾かれ
張り付いた楽しげな笑顔の仮面を揺らし
皆に愛される踊りを踊る
皆はその踊に喜び、嘆き、感動に震え
皆は小さな歯車を1つずつ人形に贈った
歯車を手に入れた人形は
より複雑な動きを見せた
優雅に、幼稚に、繊細に、難解に
人形はその表現力を極めて行く
やがて人形の卓越した表現力は
こう呼ばれた
“ココロ”