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記憶


 

 キュラスがまだ存在しなかったころ。当時の国王はとある土地に三十人の人間を送った。若く未来ある彼らを開拓の為にと送った。

 

 

 魔物はおらず、豊かな山と森が広がったその地。彼等はその地に骨を埋めるつもりで旅立ち、根を下ろした。

 

 ───────

 

 「キュラスの中心ってどこなんだろ」

 

 見つけた狭い洞穴に彼等は身を寄せあい、寒さを凌ぐ。小さな声でルベリオンが火の魔素に呼びかけ、持ってきた(まき)に火を着ける。

 

 「知らないが、進むしかないだろう」

 「あー寒い寒い、これだけじゃ火足りないよな、もっと木を持ってくればよかった」

 「魔術でどうにかならないのか?天才なんだろう?」

 「あのな、いくら天才の僕でも苦手な属性があるわけ、特に火が苦手なの、わかる? むしろ天才だから苦手な魔術でも使えるんだからな」

 

 そうなのかとつまらなそうに相槌をつくオーギュストにルベリオンは深い溜息をついた。

 

 白が静かに降るのを見ながら少ない薪をぱちぱちと音を鳴らし燃える炎をふたりで呆然と見つめる。

 

 

 思えばジネヴラ学園に通うことになってから互いに長い付き合いとなった。魔術学科と騎士学科。相反する学科同士で、関わりが少なかったのに、同じ平民上がりの天才だと言うことで有名になった。

 

 二人とも村は違ったが同じ辺境で育っていたこともあって、周りがはやし立て会わせたのが始まりである。

 

 結果から言うと、前代未聞の大喧嘩となった。騎士学科と魔術学科による決闘まで始まり、学園を上げた騒動にまで発展してしまう。

 それを経て二人は天才だと言うことと同時に犬猿の仲で手に負えない問題児ということも広まった。

 

 オーギュストはルベリオンが嫌いだった。女遊びが激しいこと、魔術に胡座(あぐら)をかき他者を見下す事を。

 

 ルベリオンはオーギュストが嫌いだった。自分より大きく、力が強いこと。話が上手くなくても周りからしたわれることを。

 

 けれど。

 

 「オーギュストはなんでキュラス(こんな所)に来たんだ?」

 「お前こそどうして…」

 

 二人は似ていた。

 本人達に自覚は無いものの、二人の本質は同じで、譲れないものが違っただけだった。

 

 ルベリオンは魔術で全てが決まる魔術学科に飽き飽きしていて。色々試しては見たが女遊びをするしか幼い頃に引き離された消えぬ寂しさを誤魔化す方法が無かった。

 

 オーギュストは剣だけを見ていた。同級のものなど気にする暇もなく、ただ剣を振り、強くなるしかなかった。言葉をわざわざ交わす意味すら見いだせない。

 

 彼等に余裕なんてなく、ただ、ただ一心に。

 

 “自分を生きようとしていた”だけなのだ。

 

 

 

 

 

 

 

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