白い少女の行動
白い少女の行動をオーギュストはしばらく見てわかったことがある。彼女は何かを探すように家を出て家から離れようとする。だが、家が視界から外れそうになると時が止まったように硬直し、動いたかと思えば家の中に戻る。
そしてまた畑らしき場所に水をあげ、洗濯をし、家の中で何かをする。
これらを短い時間に永遠と繰り返している。眠る様子すら見せずに。
オーギュストは思い切って少女の側へ歩み寄る。何を思ったのか無言で剣に手を当てることなく自然な仕草で。
それが目に映らないのか少女は変わらず同じことを繰り返す。
そして今度は家の中にも着いていく。不審者地味た行動だが異常でしかないこの空間でそれを咎める者は居ないのだ。
オーギュストは見ていた。家の中に入り一人楽しげに過ごす少女を。
そして少女が発する言葉を。
「ベッドは綺麗だが、起きたままにしてと怒っているな…誰かと住んでいるのか?」
そして少女は再び窓辺へ行き、窓の前の椅子に腰掛け窓の外を見る。
「まだかしら、キール」
オーギュストはその名前に聞き覚えがあった。と言うより、つい先程布に炭で書いた名前だった。
「いい天気だわ、きっとすぐに洗濯物も乾くし、お日様のいい匂いがするわね…ふふ」
驚くオーギュストを他所に少女の行動は進んでいく。それでもオーギュストの中でパズルがハマるように情報が並べられていき。やがてひとつの答えを導き出すのと彼女が家の中を出ていくのは同時だった。
「まさか、夢の中のオレンジの髪の女は───いや、それよりもあの夢がただの夢では無いのならキュラスは元々存在していなかったのか!?」
少女は歌が聞こえると言いながら家を出ていく。慌ててオーギュストも後を追うが、この先はオーギュストが既に知っているとおり、少女がどこかに行こうとして時が戻るように家の中に入り、また最初から行動をし始めるだけだった。




