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白い少女


 

 その頃のルベリオンは眠気と疲れに襲われていた。

 何も食わず何も飲まず白の中を歩いたことが本人が思うよりもからだに負担をかけていたようで、膝からだんだんと崩れていく。

 

 「…くそ」

 

 悪態をつくのにすら勢いがなく、伏していく体がいっそ憎らしいとさえ思える。足が重く、体が重く、思考まで重くなっていく。

 

 

 しかし、足掻きは意味をなさず一刻を過ぎる頃には褐色の青年の傍で身体を丸め眠りについていた。他に比べたら温かいとはいえ寒さに身が震える青年の傍で眠りに着く様子は異常でしか無かったが、それを指摘できる者は居なかった。

 

 

 赤い瞳の赤い鳥はその目を細めルベリオンの上を飛ぶ。

 

 まるで眠り続けるルベリオンを(あわ)れむかのような視線は(やが)て他を向き、ルベリオンが歌のようだと比喩(ひゆ)した鳴き声をあげどこかへ飛んでゆく。

 

 鳴き声にすら反応せず、ルベリオンは眠り続ける。体を少しづつとはいえ、白が覆うのに、一切反応もしなかった。

 

 もう、糸が切れ壊れてしまったあやつり人形のように。

 

 

 ────────────

 

 白の中をオーギュストは進む。先程よりも粒が大きくなった白はオーギュストの鎧に当たるとすぐに溶けていくが、オーギュストの限りある魔力では鎧を常に使用することは不可能だった。

 

 だんだんと赤い炎の模様が薄れ、オーギュストを再び白の中へと閉じ込めてゆく。

 

 それでもオーギュストは構わずに足を進めた。不思議とルベリオンが既に死んでいるという考えは浮かばなかった。手足も体も魔力が尽きた今でも震えることも寒さを感じることも無く。

 

 ただ前へ目を向ける。ただ前へ足を進める、そうした彼の前にあの赤い鳥が初めて姿を現した。

 

 赤い鳥は嬉しげに目を細めるがオーギュストは魔物の類かと剣に手をやる。鳥は動じた様子なく歌うように鳴いた。


 「……」

 そして誘導するように先を飛んでいく。思わずそれを見送ったオーギュストは少し悩んだ後、鳥の後を着いていくことにした。

 

 鳥はオーギュストが着いてきていることがわかるとまっすぐと進んでいく。見失わないように低い位置を飛ぶ鳥をオーギュストが追い、たどり着いたのは…。

 

 

 

 白に埋もれかけた家と薄着で何かを行っている少女がいる場所だった。

 

 「何をしているんだ…?」

 

 全身真っ白な少女は柵で囲んであるだけの場所に水桶から水をかける動作をする。それを見てオーギュストはもしかして水を畑にやっているのかという考えに至った。

 

 

 だが、彼女の薄着といい、この埋まりかけた家といい一体ここはどこなんだろうか。周りを白を被った木々が囲んでいるから森か山の中だということは分かるが。

 

 「キュラスの中で唯一生きている者…彼女が?」

 

 国王が賢者から得た情報の通りに確かに居たが、彼女は本当に生きているのかとオーギュストが疑問に思うほど異質な存在だった。

 

 この寒さの中薄着なことも異常だが彼女は白すぎた。髪も眉もまつ毛も瞳も肌も。唯一ぼろぼろの身にまとっているワンピースだけは色があったが彼女自身は全身が白かった。血が通っていないように見えるほど。(ろう)の様に無機質な白さ。

 

 彼女はまるで普通の生活をしているように見えるが、あれは真似しているようにしか見えない。

 

 洗濯物を干す仕草はするが水も凍るキュラスでは干す以前に洗濯すらできない。畑に水をまこうにも水桶の中で凍っているし、作物も育つことなどない。

 

 極めつけは時々彼女は眩しそうに空を見上げ、手の平で太陽の光を(さえぎ)る仕草をしていて、家の中で何かをしていたと思えば窓の外を楽しげに眩しげに見ている。

 

 「キュラスだぞ?ここは」

 彼女の取り巻く環境がキュラスの外であれば納得もいくのだ。けれどここは晴れぬ極寒の地。とても正気の沙汰(さた)ではない。

 

 加えて、彼女の目には目立つ赤い鳥もオーギュストの姿も映っていないようだ。


 

 

 

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