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 歌が聞こえる。

 遠く遠く、かすかに聞こえるその歌はなんの感情も乗っていない。

 

 歌が聞こえる。

 

 ずっと、しんしんと白が降るこの誰もいない土地で。一体どんな歌なのだろう。歌詞は? 曲は? それは一人でのものなのか?

 

 

 分からない。

 

 分からない。

 

 だからこそ。

 

 

 悲しいのだ。

 

 歌は確かに聞こえているのに。その歌を聞きたいと思ってもその音は大きくなりはしない。しんしんと降る白の中必死にもがき足掻き走り回ったところで誰もいない。

 

 だと言うのに歌が消えない。

 

 歌が聞こえる、どこにいようとも、どこに行こうとも。耳を塞いでも。

 

 聞こえるのに聞こえない。

 

 「……ああ、水をあげる時間だ」

 

 朝が来て、陽が高く上がり、沈む。その端々に白がちらつき。

 

 延々と白が降る。

 

 その白の中、芽の出さぬ畑に凍った水桶を引っくり返す。

 しんしんと白が降る。その中で。

 

 

 ただ、延々と。

 

 「水をあげる時間だ」

 

 育つことは無い。育てるはずもなく、育つ物すらない。既に種は凍りきりただの土の一部となっていることだろう。

 

 水桶も、凍っているのだから水がでることもない。

 凍った水を汲み上げようとした空の水桶から水が凍ったままの水桶にうつす動作をして。

 そうして同じ日を繰り返すように明日を生きる。

 

 そうしながら彼女は一人この白の世界で。


 

 一人歌の元へと向かおうとしている。

 

 

  

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