入学式前日(3)
前日の夜、マヤは1人で街を見回りしていた
最近、やたらと魔物が街に侵入が増えてきてる
半年前は、特に異変などもなかった
月明かりがマヤを照らし肌寒い風邪が吹き付ける
まだ春は少しばかり遠いのかなぁ?っと思ってあるくマヤは、腰にあるベルトに左右に刀を納めてる
その背後から、アリサリックが付いてくる
何やら力が抜けたような顔をしていた
「帰ってもいいんだよ?」
そんな声に、アリサリックは左右に首を振り否定
なんでこうなってるのかと言うと
アリサリックは、1ヶ月分のお菓子を見つけ出して食べてしまったからである
そりゃ、そりゃ……マヤの表情の笑いには深みが増すわけで
1ヶ月分おやつ禁止が発令されてからこうである
「いいもん……帰ってもお菓子がないなら……いてもいみないもん」
完全にご機嫌ななめ、マヤは軽く頭が痛くなる
何故ならば、そろそろお金が切れそうだからだ
節約しないとさすがに厳しい
そんなピンチの中でアリサリックは1ヶ月分の食料を食べたに近い……解せぬと許せぬしか言葉ない
とはいえ、怒りに狂ってもしょうがない
見回りをする事、一時間後ーーーー
街全体を歩き、とりあえず見回りは終了
二人は、六花学園の正面門の前で立ち止まる
夜桜を眺めてマヤは思う、ちょうど一年前は「劣等生」なんて言われていた自分は今度は「英雄」と称された
もちろん、六花の街並から少し離れた山にある神殿
そこに住んでいる王妃メルトに授与されたのである
正式に王族からの授与は異例で魔力なしの彼女に向けられた白い眼差しは消えて無くなっていた
祝福の拍手だけ神殿内はこだましていた
今思えばあれが始まりだったあの出来事がなければきっとこうじゃないだろう
マヤは静かに目をつぶり、軽く微笑んだ
「何笑ってるの?」
アリサリックのニヤニヤした顔でマヤの顔を覗きこんできて、マヤは笑みを浮かべて言う
「なんでもないわよ」
えーっと声が飛び交う中、見上げた夜空に……
人影が横切っている、マヤは不思議そうに眺めてると
アリサリックがマヤの腕を掴んで指を指した
振り向くと…機械仕掛けの物が無残務像に六花学園の正面門に横たわっていた
先程見た時にはなかったもので、アリサリックとマヤはお互いの顔を見合わせてその場所まで走る
「これは…」
「こんなの初めて見るよ、なんなんだろうね?」
近くで見れば見るほど、人間に近い顔をしてる
機体は大分破損しているが、頭と胴体と脚は直結してるものの腹部から上にかけて何かで貫かれて抉られた様な痕が残っていた
着てる服からしてメイドぽい、服袖やスカートなどはフリルで施されている
それを見てマヤは…右手が震えた
「マヤ…?」
「だ、大丈夫だよ…」
マヤは尋常じゃない冷や汗を滲ませていた
理由的には、マヤはホラー物はあんまり得意ではない
切るとかまでは許せるが……こうも無残務像に転がるものを見ると死体にしか見えない
苦笑い、とにかく、苦笑いしかしないマヤに
アリサリックは察した様な顔で言う
「マヤ、無理しなくてもいいよ?」
「だ、ダイシマョウブだからぁ……」
マヤは機械仕掛けの手に触れた、冷たかった
再現され過ぎて、余計に冷や汗が落ちる
とゆうか、顔色が真っ青である
手はガタガタ、目はかなり動揺してる、脈拍が異常なほど早い
アリサリックは止めるが、マヤは意地でもやろうとしたが……体を起き上がらせた途端、茶色い物質がプシューっと音を鳴らして吹いた
その瞬間……マヤは気を失って背中から倒れた
「マヤ!?起きて!!なんで無理したのよ!!」
「ふしゅ……」
アリサリックは理解していた
茶色い物質は、劣化した血ではなくて機械仕掛けに使うオイルと言う事を知っていた
まぁ似てるから、そう感じちゃう人も少なくないはず
それはケチャップを血と間違えるような感覚である
アリサリックはまず機械仕掛けを六花学園の正面門の壁に起き…そしてマヤを背負って自宅まで帰る……
が、それが上手く行けばいい話だった
「ふごっっっーーーー!!」
アリサリックが持ち上げようとする機械仕掛けはかなり重たい、鉄の塊の割には憎いぐらいだ
アリサリックからしたら岩を持ち上げるようなもんで
踏ん張る姿はまるで顔芸である
夜風が吹いて月明かりが雲に隠れた
アリサリック、再起不可能……
無理である、重すぎて腕がブルブルと震える
生まれた子鹿並を思わせる
「……最悪、私もう知らない機械仕掛け」
そんな捨てセリフをいい吐いて約数分休憩後
マヤを大人しく背負いゆっくりと自宅に帰った
帰り脚だけ自信があるだけあり
片道数十分ほど掛る道のりを数分で到着する
アリサリックは、マヤを部屋まで運んでベッドに転がして部屋を抜ける
力仕事をした後の牛乳は格別で、腰に手を添えて飲む…それがアリサリックなりの飲み方
「ぷはぁっ!美味い!美味すぎるぅ!疲れた体にしみるよ!!」
感謝感激雨あられ的なアリサリックは牛乳をごくごくと飲み干した
まぁ見た目は中年層のおっさんを思い描いてしまうが
大丈夫、ピチピチの16歳の女の子です!って誰に言ってるんだろう的な眼差しでダイニングに月明かりが射す………
「今日も終わりかぁ…明日から学校か。頑張らないとね!」
そう口にして、生あくびをふぁーっとして背伸びする
眠たくなり自室の扉を開けて、ゆっくりとベットに転がり熟睡したアリサリック
何か、きっと忘れてるに違いな……課題を。




