負けない志
アルティマの様子が豹変、おっさんはピンチを悟る
そして約五万居た軍隊は殆ど血溜まりと化した
「好き勝手暴れやがって…」
「うふふ…ふふ…」
理性が明らかに飛んでいる
なぜならその目が…瞳孔が開いてる
最早あれはーー人でもない…獣だ
物凄い重低音が鳴り響く、拳を振り抜く
その一撃は砂煙を巻き上げ、大地すら破壊する
「ちっ…こいつはやべぇな。完全に魔法で覚醒されてやがる…」
魔法覚醒、禁断されてる魔法の扱い方だ
普段は魔法は属性によって放てる物
だが…時にそれは違う物にもなる
覚醒とは魔法に対して強い、固有魔法をぶつけるとその本人は理性を飛ばして暴れ回る。
それがどんなに体がボロボロでもお構い無し。
おっさんは背中から剣を抜き、取りアルティマと激突する。
「ちとはマシかと思えばなんだ? 思ったよりも意思が弱っちぃんじゃねぇのか? え?」
おっさんは押しに負けてしまい、立ったまま後方に吹き飛ばされる。
地面を引き摺りながら、耐え凌ぐ
顔を上げた瞬間、アルティマの拳が眼前にある。
轟音が鳴り響くーー
「ったくよ…危ねぇなアルティマあと少し反応遅れてたら首吹っ飛んでお陀仏だったぜ ?」
おっさんは頭から血を流していた
容赦なく走り出すアルティマ
おっさんは軽く舌打ちして、剣を持ち替えた
そしてアルティマの右拳におっさんが握る剣の柄頭をぶつけた。
アルティマの右手拳から血が流れ落ちる
しかし、左拳をおっさんの頬に当てた
二人同時に吹き飛ばされる
凄い…互角で戦ってるけどーー
マヤは感じていた…おっさんの体力が限界に近いと。
はぁはぁっと吐く息の回数が増えていた
そしてアルティマからの左拳をおっさんは腹部に貰い吹き飛ばされた。
もう立ち上がる力すらない
アルティマはマヤの方を向く、ゆっくりと歩きながら不気味な笑をしながらこちらに来る。
マヤは生唾を飲んで構える
「うふふ…」
アルティマ走り出す、左手拳を強く握ってる
マヤは木刀で左手拳に突く一撃を放つ
アルティマは吹き飛ばされるが…黒い翼を広げてマヤに向かって突進ーー
マヤは速さのあまり動けない
攻撃を受け流し、そしてアルティマからの蹴りをその体に何度も受け始める。
「…くっ!? まだ…終わらない…」
マヤは目をギラッと光らせた
集中してアルティマの行動を先読みする。
高く飛んだだけ、回避はしずらい
なら地上の私がやるなら…
アルティマの飛びながら突進を回避して、木刀をを両手に握りアルティマの背中に叩んだ。
砂煙舞い上がるが、アルティマはその木刀を手で掴んでいた。
後ろに手を回して受け止める事で自分が受けるダメージを軽減したみたいだ。
「…普通じゃ考えられ無い行動だわ…」
マヤはそのまま黒い翼に打たれて吹き飛ばされる
そして、物凄い速さで木刀が飛ばされマヤの頭上を通り過ぎて行った。
「うふふ…」
次に動こうとした瞬間、おっさんがアルティマの両腕を掴みあげる
「まだ終わっちゃいねぇ…」
そしてシルバーがふらつきながら立ち上がりアルティマの顔に片手を伸ばして魔法を放つ
「こいつが…俺の取っておきの魔法だーー」
頭を撃ち抜かれたような鈍い空圧の音…。
シルバーは頭から血を吹きそのままゆっくりと倒れた
おっさんもまた…アルティマが抵抗してる時に腹部に強烈な連撃を受けていた。
後ろ向きにゆっくりと倒れるおっさん
そしてアルティマはフラフラしながら口を開く
「わ、私と…した事が…魔法に囚われるなんて…」
「アルティマ…」
「心配なんて…不要です…さぁ早く決着付けましょうか…?」
アルティマの意思にマヤはゆっくりと頷く
マヤは瓦礫に突き刺さる木刀を引き抜く
二人は対等に目の前に立つ
「アリサリックを…取り返せますよ…感謝…しなさい…」
「…」
「どうしたんです…か? さっきみたいな迫力は何処に…消えたんですか…?」
「迷ってるわけじゃわないわ…ただ、アルティマ。あんたはそれでいいの?」
「…綺麗事、腐れ事はもういいんですーー」
アルティマと呼ばれたのはもう五百年前
私は一人のエルフから生まれて育った
それから十歳のある日…
『アルティマ、今日どこに行く?』
『んー…狩りがしやすい場所』
普段と変わらない母親との会話
それがまさか…違う形になるなんて想像も出来なかった。
私は先に狩場へと足を運んでいた
それから数時間は、お母さんは来なかった
不思議と思い私は村に戻った
すると…私に向けて皆矢の矛先を向けていた
『え…?』
『村から出るのは十五歳、それ以外の年齢が村からでたら…裏切り者として村から追放』
私には知らなかった村の暗黙のルール
私は怒りすら覚えた
「はぁぁぁぁーー!!」
「はぁぁぁぁーー!!」
二人は同時に叫び走るーー
私は母親にさえその弓先を向けられていた
理解できなかった
唯一信頼出来る母親が私に矛先を向けるなんて。
その後、私はーー逃げ回り足を滑らせて崖から転落。
酷い終わり方した、なのに誰も見つけやしてくれなかった。
孤独だった、一人が寂しいぐらい…嫌だった
誰かを求めていた、きっと、誰かが私をーー。
アルティマは右手拳を振り抜き
マヤは木刀で振り抜く
二人の拳と木刀はぶつかりあった
「やぁぁぁぁぁーー!!」
「はぁぁぁぁーー!!」
マヤの握る木刀が折れてマヤの腹部にドンッ!! っと言う音が鳴り響いた。
マヤは口から血を吐く
アルティマは勝ったと確信した
マヤの左手には、弾かれたはずの刀が一本収まっていた…ゆっくり流れる時の中でマヤは言う
「どんなに苦境でも、相手を恨んだらその地点で負けが確定するわ。私はーーそんな苦境でも立ち向かい戦った、だからアルティマ…自分に負けないで」
その一言をマヤは言って、静かに技名を言う
「《終ノ太刀…紅葉疾風連撃》ーー !!」
高速で切りつけた無数の刃は、アルティマの体に刻み込んだ。
アルティマは切りつけた時にこう思った。
そうか私は…抗う事せずに死んだんだ…。
そっか、このマヤに勝てない理由がわかったーー。
そして光り出す禁断の書がアルティマの心部から出てきた瞬間ーー禁断の書をマヤは突き刺さす。
「これで終わりよーー !!」
その、そのまま上に切り上げて禁断の書に背中を向いた。
禁断の書は真っ二つに切り裂かれ光を失いパラパラと地表に落ちた。
アルティマが抜けたアリサリックはゆっくりと地表に力なく倒れた。
マヤはそしてこう言った
「…勝った?」
すると切った禁断の書は再び光出した
そしてアルティマの姿を映し出した。
目がクリっとして水色の髪の毛と耳が長いエルフの特徴がある子。
アルティマはゆっくりと言う
「勝ったよマヤ…貴方の価値よ。私は迷っていた、自分の過去に…そして今回の過ちに負けていたよ」
マヤは力が抜けてゆっくりと地面に座る
勝ったのに実感がないのだ。
笑っていいのか、泣いていのか
よく分からないけど…祝せない。
するとマナがゆっくりと現れて言う
「…アルティマ」
「お母さん…」
マヤは驚いた見た目は三十代ぐらいのマナ
だけど、五百年前から現代まで生きてる
それはかなり衝撃で唖然
「アルティマ…私何であんなことを」
「…」
「私は反対したんだ…アルティマを連れて町外れまで逃げたかった」
「え?」
「アルティマはもうさっさと先に行って、家探しても見つからなくて…結果的にああゆう感じに」
「なら…なんで助けなかったのよ…? 実の娘をなんで…」
「…掟に背けなかった。私もその後…アルティマを探して村を出たのよでもーー見つけた時には遅くて崖下でアルティマは死んでいた」
「…そうよ、寂しかったよ」
「だから私は…お墓を作った」
「え?」
「アルティマが寂しくないように、私が…私が…」
マナは言葉を詰まらせて涙がこぼれ落ちていた。
それを見ていたアルティマは…こう言った
「もういいよ…私はもう怒ってない。私は教わった、そして、お母さん…教えてくれてありがとうーー」
禁断の書は強い光を放ち
小さな粒子となり空に向かって、光り輝きながら消えたーー
まやはそれを見上げてただ黙ってながめていた。




