地下にある本 (5)
アリサックは難しそうな表情を浮かべていた。
実の所、アリサックも分からない話である。
すると、あの忌々しい声が響いたーー。
インテクトである、空中で立って口を開く。
「僕達を追い詰めたのは、はるか千年前…この書を書いていた人物…後に魔王になる方。
世界が変わり、周りのみんな、みんなは絶望して言った。時間が経てば食べ物が消え、飢えてやがて、生きながら苦痛を味合わせるあの人を見る目じゃなく非道な冷酷な眼差しとなる。
…この本に触れたら即死、生きる価値もない人間を殺してくれた…それがどんなに快楽か…分からないだろう ?」
宙に浮く淡い光を放つ一冊の本、その目の前には…インテクトの姿が…微妙にぼやけて見えていた。
そして、さらに話し出すインテクト。
「そして、僕はこの本に魂を吸い込まれ。気づいたら本と一体化、理由は地下異界協会からの魂の封じ込めだ。
僕をこの本に封じて、世間にこの「禁断の書」の存在を明るみに出さない為に、地下異界協会の人々はこの本と共に街の地下を作りそこでひっそり暮らして僕は封じられた存在だ。
世間からも消えた地下異界協会は、明るみに出さない為に何度も戦ったらしいが…今回は運が僕に来た」
マヤは、治癒を終えた体でふらついて立ち上がる。
アリサックは、ゆっくりとインテクトを見上げてまやも同じように見上げる。
そして、マヤは軽くため息を吐いて言う。
「あんたの運はもうすぐ尽きる、どんなに待ち望んで書から出て暴れて、恨みを晴らすのが普通だとしたら…違ってる。結局は、地下異界協会に封じられ、恨み、守られたが、暴走…これじゃ駄々をこねた子供よ」
マヤは少なくてもそう思えた。
封印されて、ようやく出れて暴れ回る…それは地下異界協会の恨みを根に持つのは違うと思うマヤ。
インテクトはくすくすと軽く笑いこう言い返す。
「そうだよ?…封印されて、自由を奪われて、ようやくその本を手にした奴に乗っ取れた。恨み?そうだね、恨まずにはいられないんだよ」
マヤは肩をなでおろしてこう言った。
「哀れな人、そんな事してもなんも意味が無い無意味だって事…一番わかってんじゃないの?」
その笑みが消えたインテクト、その本がパラパラとページをめくる。
だんだんと、つまらない顔を浮かべ始めた。
アルサリックは、生唾を呑んで見上げたまま小さく言う。
「マヤ、煽ってどーするのよ…。また死ぬ気…?」
マヤは黙りそして強めに言う。
「そんな気持ち程度じゃ、誰一人殺せないわよ。その思考、弱者が考える弱い気持ち、そんなもんじゃなんも壊せない…なんも壊せるはずがない。
…弱者、人には決して壊れないものがある…それが分からないなら今すぐにでも、禁断の書に帰りなさいよ、死にたくなければねーー!」
マヤは静かに怒っていた。
それは、あまりにも少年のわがままである。
封印されて、自由がないはわかる、だか、それを恨むのは違うのである。
歴史から消えた地下異界協会は、何のために地下を選び、禁断の書を守ってきたのか…。
分からないなんて言わせない、だから私はおこる。
少年は、嘲笑うように笑い始めてこう言いう。
「弱者? この僕が? 笑わせないでよ、六花生でゼロ花の劣等生さん。最弱が最強に勝てると思うのか? ーー思い違いにも成り上がるのも大概にしろっ !!」
少年の背後から魔法陣が展開、魔弾が勢いよく飛び交う。
マヤは、飛び上がりちょっと高めの瓦礫に飛び移る。
「逃げんのかよ?」
「逃げないわよ、ほら次来なよ」
マヤは鼻で笑った言い方をしていた。
煽るマヤに、インテクトは噛み付く。
「馬鹿にしやがって !!」
マヤのところに目掛けて魔弾を飛ばし、更に着地した場所も飛ばされる。
バックステップして、突き刺さっていた黒刀の柄に手を伸ばして引き抜いた。
よく分からない一撃を受けていた時に、同時に吹っ飛んでいたらしい。
体を横に回転させて、マヤは着地する。
「それで、何が切れる?肉体を持たない僕は切れないよ?」
マヤはニヤリと口元を上げて言う。
「いやーー?」
マヤは、一瞬にして…|インテクトの背後に回り込んだ。
そして、軽く刀を振った。
ちょうどインテクトの背後に禁断の書の本に微かな切り傷を付けた、するとその少年にも切り傷がついた。
「やっばりね、その本が禁断の書)の本体でもあるのね」
マヤは不思議と思っていた、なぜインテクトの周りに飛んでいるのか。
もしかしたら、禁断の書を切ればダメージがはいるんじゃないかと、思っていたマヤの考えは的中だった。
怒りを滲ませたインテクトは言う。
「だからなんなんだよ!」
今度は天井に巨大な魔法陣を展開、巨大な火の塊を落下させてくる。
マヤは、身動きひとつもしてなかった。
ただ、その魔法を見上げていた。
「これは、切り伏せる事なんて出来ない特別魔法…。ほら、今度こそーーー 」
こればかりはなんとも出来ないと思えた。
だけど、策はあるはずと考える。
するとアルサリックが、魔法述を口にした。
「汝、雨の濁流の渦水流如く流れ打たれろーー !!」
アルサリックは、片手を翳すと背後から渦を巻く水を放射する。
「アリサック…その術は一体…?」
マヤの驚きはアリサックには見えていない。
水が勢いよく飛ばされ、インテクトの魔法に向かって一直線。
だが、火の塊のでかさに比べて、アルサリックの魔法術はかなり小規模に見えてしまう。
「くっ…これでも魔法術は最大の技なんだけどなぁ…。なんでかちっぽけに見えてくるわ…」
魔法術は、魔法のなる前のスペル読みで放てる。
威力は、魔法よりも弱く安定がない。
そんなアリサックの魔法術に歯を擦らせてインテクトは言う。
「そんな魔法術なんてくだらないっ!! 目障りだ!!」
インテクトのものすごい風圧を吹き放つ
言葉だけで、凄まじい風圧でかる。
「きゃっ!!」
アルサリックは弾き飛ばされ地面を転がる。
マヤは心配そうに声をかける。
「アルサリック!?」
「大丈夫よ、こんな事ぐらいで負けない…!」
インテクトは怒りに満ちた声で荒あげる
「魔法が作り上がる、術式の無数なる数の呪文を完璧に扱えるやつなんてまずい無い。今や魔法は魔力により術式なんて存在しないんだよ !!」
地下室の瓦礫が遠くで崩れ落ちる。
アリサックはインテクトの発言に反論する。
「古きものは、現代に在らず…なんて言うけど、そもそも魔法が産まれる前の魔法術よ! これがなかったら魔法なんて存在しなかったのよ !」
アリサリックの反論に鼻笑いで言い返すインテクト。
「ふん、だが魔法術はかなり脆い…安定性が不安定で放つ火力すらまばらだ。覚えとけカス!」
カスと言われて少しショックを受けて慌て声をアリサックは出して言う。
「な、なななっ!?か、カスじゃないもん!!」
アルサリックは、立ち上がり、再び魔法術を唱えた。
次は、アリサックの背後から光の矢らしいのが飛ばされた。
だが、インテクトの前には届かず、同じ魔法をインテクトから返されてしまう。
アリサックは、回避するが…瓦礫に躓き転ぶ。
「ぎゃふんっ!?」
マヤは、転けたアリサックに手を伸ばす。
その手を掴んで立ち上がるアリサック。
そして、マヤは真剣な眼差しでこういった。
「アリサリック、勝たなきゃ。バカにされたなら尚更ね」
マヤは入学して数日後に起きた話を思い返す、意味合い的にインテクトとアリサックの会話はそれに近い。
マヤは刀を左手から右手に持ちかえる。
「わかったるよ、でもさ、私の魔法術はインテクトが言うように不安定よ?」
マヤは何故か確信したような眼差しで言う。
「大丈夫よ」
その発言に、アリサリックは理解出来なかった。
「え?」
意味ありげに、マヤはこういった。
「やすやすと、眠りにつくはずがないと思うよ。最上位序列ならことさらね」
その言葉通りに「オラァ!」っと言う声と同時に、赤い火の塊は壁側に激突して爆発轟音を馳せた。
シルバーは、気だるそうにガレキ破片の上に立ち言う。
「ヒーローってのには正直違うと思うが…帰って来るまで時間かかっちまった…生きてるか ?」
歯を擦らせるインテクト、そして、こう言い履いた。
「次から次へと目障りな虫が…。僕に抗うなんて、千年も早いのを分かんないのか?」
マヤはそれに対してこう答えた。
「抗うのに何年、何千年なんて関係ないわ。ただ、君は間違ってる…それを正す必要がある」