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チートなしで異世界に飛ばされた件  作者: 結城
第一章 『英雄の息吹』
5/12

女子会

「突然だが今日は別行動を取らないか?」


 今朝。

 朝起きて一番にカイのもとに駆け付け、今日こそは討伐クエストに行けると意気込んでいたイズミは、かけられた言葉に衝撃を受けた。

 まだ、パーティを結成して1日も経っていないのだ。

 それなのに――。


「私、捨てられるんですか?」

「ええ!?」


 寝耳に水、といった表情で驚くカイ。

 しかしイズミにとって、そんなカイの表情はまさに図星を突かれて驚いただけのように見えていた。


「そんなことしないよ」


 カイはニコニコと歯列を剥き出しにして笑う。

 本人としては安心させるつもりだったようだが、確実に何か裏があるということしか伝わってこなかった。


 繰り返すが、まだパーティを組んでから24時間も経っていないのだ。

 見切りをつけるには少し早すぎるのでないだろうか。


 たしかにイズミは魔法があまりうまく使えない。

 戦い方も少し大雑把だ。

 だが、昨日戦ったのはたかがスライムである。

 スライムを少しばかりうまく討伐できなかったからといって、パーティ解消を決断するのは早計ではないだろうか。


 そこでイズミは昨日のカイの表情を思い出す。

 パーティを組みたいといったときの少し困ったような表情。

 クラスがバーサーカーと知ったときのそこそこ困ったような表情。

 一緒に武器を買いに行ったとき、思わず自分の武器を内緒にしてしまったときのかなり困ったような表情。

 大剣で討伐報酬のコアごとスライムを潰してしまったときのとても困ったような、表情――。


(あああああああ……!)


 思い出せば思い出すほど、自分のダメっぷりが明確に浮かび上がってくる。


「あ、あと少しだけ……せめて一週間は一緒に行動しませんか? ほら、親睦を深めたり、お互いの出来ることを一つ一つ知っていくのが重要だと思うんです」

「お、おう」

「ダメ、ですか……?」


 少し涙目になりながら、上目遣いに頼み込むイズミ。

 連帯保証人になってほしいと言われても反射的に頷いてしまうかもしれないような威力が込められた瞳に、カイが抵抗できるはずもなかった。


 そんなこんなで、次のランクにあがるために必要なクエストをいくつかこなしていく二人。

 イズミは精一杯カイの役に立とうとがんばり続け、盛大に空回り続けた。

 そして何事もなく一週間が経ち……。


「じゃあ今日は約束通り、別行動を取ろうか?」


 うにゃああああ!?

 真面目な表情のカイに呼び出され告げられた言葉に、イズミは声にならない悲鳴をあげたのだった。



 †



 捨てられる――。

 そう危惧したイズミは、ここ最近できた友人に相談することにした。


 呼び出した友人に泣きつき、ここ一週間での出来事を話していく。

 その上で今日、別行動しているときにパーティを解散されてしまうのではないかと恐れていることを告げ。

 どうすれば捨てられないようになるか一緒に考えてほしいと頼み込んだ。


「いや、イズミンさ、それ考え過ぎだと思うんだけど」


 そう答えたのはイズミと同じ獣人系のクォーターである少女、スイである。

 何度か同じパーティメンバーの勧誘をなだめるうち、同じ種族であることに気づき、それから頻繁に話すようになった。

 性格は正反対の二人だが、不思議と馬は合った。


 特徴的な水色の髪から伸びたアホ毛が呆れたように揺れる。

 この世の終わりのような表情をして泣きついてきた友人に対して、スイの対応はおざなりだった。


「でもぉ……」

「男には男が一人で行きたい場所に好きなように行きたい時ってのがあるのよ」

「なんですかそれぇ……」


 色町とかね。

 反射的に答えようとしたスイであったが、この知識とカイがそういうところに行く可能性を考えさせるのは良くないだろうと判断し、黙っておいた。


 英雄クラスの才能があるらしいが、いまだにその才能の片鱗は見えてこないようだ。

 全身から『私、自信がないです』という主張が伝わってくるかのようだ。


 それもそうか、とスイは思い直す。

 トップクラスのパーティメンバーのサポートを受けるならともかく、適正の低レベルな狩場で安全にクエストをこなしているのだ。

 それが正しいこととはいえ、いきなり成長するようなことはないだろう。

 それに、パーティメンバーとは就いているクラスも、同じ近接とはいえ方向性は180度違う。


『こういうのを才能を腐らせているというんだ……彼女が私たちのパーティに入れば、すぐにでも一流の冒険者として名を馳せることができるんだがな』


 とは、スイのパーティリーダーの言である。

 間違ってはいない。

 確かにうちのパーティーにはそれだけの力量はあると、スイは自負している。


 しかし強引過ぎる話だろう。

 誰がどのパーティに所属するかなんて自由だ。

 才能がどうたらなど、他人が心配することでもない。


 悪いやつではないのだが、たまにこうと決めたら梃子でも動かない時がある。

 頑固者だった。

 スイはそんなところも別に嫌いではないので、同じPTを組み続けているが。


「あはは。じゃあ今度さ、一緒に訓練とかしてみようよ。無理な勧誘とかはぜっっったいしないように言っておくからさ。他のPTの動きを見てみるのも良い経験になると思うよ?」

「あ、ありがとうございます」


 スイの言葉に、イズミの表情も明るくなる。

 とりあえず今よりも強くなり、カイの助けになることを目指す。

 そんな感じでイズミの中で決着がついたようである。


 空気が変わったのを感じ取ったからか、スイはにやにやとした邪悪な笑みを浮かべ始めた。


「で、ところでさ……二人はもうヤッたの?」


 聞き方は最低だったが、前々から気になっていた二人の関係を問いただすための質問であった。


「え? 何をですか?」

「もう、とぼけちゃって。これよ、これ」


 そういってスイは指でジェスチャーを行った。

 お子様にはとても見せられない下品な形に指がぬるぬる動く。

 それを見てイズミは頭に疑問符を浮かべた。


「えっと。つまり?」

「えー。これでわかんないのぉ? 仕方ないなあ」


 ごにょごにょと。

 イズミの耳元でスイが囁くこと、数十秒。

 次第に顔を赤くしていき、最後には熟れたリンゴのようになったイズミが悲鳴をあげた。


「な、なななななんてこと言うんですか!」

「え? だからもうセッ」

「あーあーあーあー! 乙女が往来でなんてこと言うんですか! 言わないでください説明しないでください!」


 イズミは真っ赤になった耳を塞ぎながら首を振って叫ぶ。

 その姿を見て、スイの嗜虐心は刺激されるばかりである。


「あーでも安心したわー」

「何がです?」

「イズミィはかなーり初心だけど、初心なだけで知ってることは知ってたからさー」

「~~~~」


 イズミの下ネタ耐性が限界を迎えたようである。

 俯いたまま顔を上げないイズミに対して、やり過ぎたかと思うスイであったが……。


「そういうことはですね、きちんとご両親と挨拶して、結婚してからするものなんです……」

「え……?」


 信じられない、といった表情を浮かべるスイ。

 『あれ? 私がおかしいんですか?』とくりくりとした大きな目を回しながら呟くイズミ。

 その反応を見て、スイの我慢が限界を迎えた。


「あーもう、かわいいなぁ!」


 『カイ君ごめんねっ』と胸中で形だけ謝りながら、イズミをぎゅーっと抱きしめる。

 百合百合な空間が形成された。

 ギルド中の視線が集中していることに、イズミはそれどころではないので気付かず、スイは気付いていても気にしないようだった。


「こんにちは、イズミさん。スイさん。仲が良いのはいいことだと思うけれど……一応ここが公共の場ということは忘れないでほしいわ」


 いつまで経っても抱きしめたまま離そうとしないスイを見かねて、声をかけてきたのはミリアだ。


「お、ミリアっちじゃん。受付の方はいいの? 大丈夫? 仕事してなくて平気?」

「私、ミリアさんが受付から離れてるの初めて見ました」

「わ、私だってちょっとは受付から離れることくらいあります」


 二人のあんまりな評価に、ミリアは頬を膨らませる。

 しかしその疑問ももっともである。

 なぜならいつ何時ギルドを訪れても、お昼時でも深夜でも早朝でも構わず受付に立っているのだ。

 いつ休んでいるのだろうか。

 二人は疑問に思ったが、聞いたら闇を見てしまいそうなのでその疑問はそっと心にしまっておいた。


「まあ、これも仕事の一つなのですけれどね」

「どゆこと?」

「高名な――いずれ高名となる冒険者と親睦を深めるのも、一流の受付嬢の仕事の一つというわけです」


 実際、そういう仕事をギルド長から"お願い"されているのは事実だ。

 しかしミリアには、もう一つの頼まれ事があった。

 その頼まれ事とは他でもない、イズミのたった一人のPTメンバー、カイからのものだった。


(割と心配性……というわけでもないでしょうか。たしかにイズミさんの才能値は非常に稀有なものです。ここ王都でなければいつ誘拐されてもおかしくないかもしれませんね)


 彼は早朝、ギルドの受付までコソコソとやってきた。

 最初は『彼女』に隠れてナンパでもしにきたのかと思ったが、どうやらそんな雰囲気でもないようだった。

 話を聞いてみると、今日はイズミとは別行動するので、その面倒を見てほしいらしい。


「そんなに心配ならついていてあげればいいじゃないですか」


 そう言うと、彼は苦虫を噛み潰したような表情で『それじゃ意味ないんだ』と首を振った。

 今、こうして現状を見てみればわかる。

 彼がいないのは、イズミの現状を深く理解してもらうためだ。

 彼女ははっきり言って、存在そのものが危なっかしい。


 容姿は綺麗とは言えないがかわいらしい顔立ちをしていて、性格も素直で良い子だ。

 それだけでも男からは引く手あまただろうが、その身に宿す才能がとてつもない。

 例えるならそれは巨大な宝石の原石。

 これから美しい輝きを放つと約束されたようなものだ。

 今も虎視眈々と、有力なパーティが彼女を仲間に引き入れようと狙っているのだ。


 さすが治安の良い王都と言ったところか、今のところ強硬な手段に訴える人はいないし、声掛けもおとなしい。

 だがそれも時間の問題かもしれない。

 こうして新人の、ヒューマンではあるがあまりぱっとしない男とパーティを組み続け、破綻することもなければ……。

 ミリア自身は心配していないが、先走る輩がいないとも限らないだろう。


 そしてその宝石の原石は顔を真っ赤にしてスイのからかいに墓穴を掘っていた。


「えー、ということはつまりぃ。私が狙っちゃってもいいってことにゃのかにゃー?」

「そ、そうですよ! 私は別に、カイさんの恋人、というわけでもないですし……」

「んー。じゃ、試しにキスしてみちゃおっかなー」

「え」

「ほら、西の方じゃ挨拶としてよくするって言うじゃない?」

「え、え」

「この前食事に連れてってもらったお礼ってことで、他にもいろいろしてあげちゃおっかなー」

「え? おしょ、くじ……?」


 ついこの前、いつもイズミがお世話になっているお礼とのことで、王都で数年暮らしているスイでも知らないような隠れ家的ラーメン屋に連れて行ってもらったのだ。

 話した内容といえば、感謝の気持ちを伝えられたことと、これからもイズミと仲良くしてほしいというお願いをされたこと。

 そしてイズミのかわいいところ、すごいところでひとしきり盛り上がった。

 そのあとは何もなく解散したはずだが、スイは器用に頬を染め、意味深な笑みを浮かべていう。


「今夜、私の泊まってるホテルに呼んじゃったり?」

「だ、だめええええ!」


 それは魂の叫び声だった。

 ギルドホール内全体に響くその声は、ただでさえ集まっていた視線をさらに強化した。


「うんうん、それはつまり?」

「ち。違いますよ!」

「わかってるわかってる。で、私がカイ君にアピールするのは構わないって言った直後に否定した理由とは?」

「ゆ、友人として、です。友人としてスイがふしだらな行動をしないようにですね! 体は大切にしないとですよ!」

「ま、そういうことにしといてあげますかー」


 これ以上からかっても目新しい情報は得られないと判断したのか、追及が続くことはなかった。


「で、二人の関係は結局どうなのよ」

「どうと言われても……私とカイさんって、まだ出会って一週間しか経ってないんですよ?」

「ええええ!?」


 衝撃の事実にスイが叫び声をあげた。

 スイほどではないが、ミリアも目を丸くする。


「そんなに意外ですかね?」

「そりゃあもう。じゃあそのベタ惚れっぷりは何ってちょっと聞きたくなっちゃった」

「ほ、惚れてません! 話を続けますよ!」


 最初、カイと出会ったときは盗賊4人に取り囲まれているところだった。

 武器を持った獣人と、明らかに身にまとう魔素が希薄……まるで魔素の全くない別の世界から来たかのような丸腰の少年。


「一目でピンチってわかるね」

「ですよね。私もそう思ったんです。だけど……」


 イズミも冒険者――になる前ではあるが、その中でもおとぎ話で語られるような勇者や英雄にあこがれていた。

 当然だが、その勇者や英雄についてのどの逸話にも街道で襲われている一般人を放置するような内容はない。


 ごく自然に助けようとして、踏み出した一歩はそれ以上続くことはなかった。

 持っていたリュックはいつの間にか手からこぼれ落ち、ドサリと派手な音を立てる。

 すると獣人たちの視線がイズミに集まり……。


 助けるどころか、獣人たちの標的が自らに移ってしまったことを悟ったイズミは、どうにか『ポケット』から武器を取り出そうとする。

 しかし、武器を取るための両手すら動かなかった。

 殺意の混じった不快な視線に、動こうとする意志すら消え去ってしまったかのようだった。


 そしてカイから獣人たちの視線が外れた瞬間。

 カイは一瞬で魔力を練り、誰にも気づかれることなく魔法を発動させる。

 それはヒューマンがLv1から使える、最下級の炎属性魔法『ファイア』だった。


 ただでさえ威力の低い下級魔法を、魔素で強化されていない低レベルのヒューマンが、離れた位置にいる獣人に向けて放つ。

 火傷一つすら与えられるか怪しい威力の魔法を、しかし少年は的確に獣人の弱点たる鼻の上で発動させることにより、最大限の効果を発揮させていた。


 それからも最小限の動きであっという間に盗賊を撃退した彼の腕前は、単純なレベル差、ステータス差で表せないものだった。

 王都にたどり着く短い時間のあいだ、何度もそのことについて聞いたが、カイから返ってきた言葉は『別に大したことないよ?』なんて軽い言葉のみ。

 高い才能値があると褒められたが、あんなに細かい魔法の使い方なんて一生できる気がしなかった。


(私が魔法苦手だからかなぁ)


 と、無理やり納得していたイズミだったが……。


「なんなのそれ!? わけわかんないんですけど……」

「んー。確かに熟練の魔術師には同じように繊細な魔力操作を好む人もいますが。空間把握能力が高いのですかね?」


 友人の言葉とはいえ信じ切れない様子のスイと、対照的に冷静に考察するミリア。


「それより気になったのはその発動速度ですね。これは一朝一夕で身につくようなものではないはずですが……」


 いつも冷静なミリアですら、カイの行動は信じられないようだった。

 やっぱり、と自分の感覚が間違っていなかったことに安心する。


 そこでイズミは本題に入る。

 まるで英雄のような活躍をしたことなど、イズミにとっては些細なことだった。

 ですが、と前置きをしてからイズミは言う。


「そんな信じられないような戦い方も、すごいなって感想しか出てこなくて。私とは別の世界のヒトなんだろうなって思っていたんです」


 あまり現実感がなく、呆気にとられたまま、目の前で起きた現実に脳の処理が追い付いていなかった。


「まるで英雄のよう、ですね」


 それは娯楽小説のタイトルだった。

 一人の少女が偶然出会った少年と意気投合し、パーティを組み様々な事件に立ち向かっていく。

 しかし次第にお互いが有する才能の差に悩み、そして最後には別れを告げる。

 彼はそれでも旅を続け、やがて魔王との決戦に挑む。

 結果魔王は倒れ、世界は平和になった。

 一人の英雄の命と引き換えに。

 少女は自分がついていけばもしかしたら、などという現実にはあり得ない後悔を抱きながら生きていく。

 そんなお話だ。


 まさにその瞬間のイズミにとって、カイはその英雄のように見えていたのだ。


 そして全てが終わったあと、私を気遣う言葉をかけ、そして――。

 顔面を蒼白にした彼は突然駆け出し、茂みの奥で嘔吐し始めたのだ。

 最初はいったいなぜ、という疑問が浮かんだ。

 しかし、苦しそうに胸を抑える彼を見て、その可能性に思い至った。


「そこでやっと気付いたんです。カイさんも怖かったんだって」


 そう、なんでもないように盗賊を撃退したカイだって恐怖を感じていたのだ。

 元々彼はヒューマンだ。

 奴隷として捕まっても、その扱いはそうひどいことにはならないはずだった。

 だからこそ、両手をあげて降参のポーズをとっていたのだろう。


「でも、それでも私を助けようとしてくれた」


 余計な首を突っ込み殺されそうになった私を、危険を冒してでも助けようとしてくれた。

 本当は怖くて、一人では抵抗する気力すらなかったはずなのに。


 カイに駆け寄り、ハンカチや水を手渡そうとしても、申し訳なさそうにするだけで受け取ろうとはしなかった。

 しきりに何でもない、大丈夫と繰り返すカイを見て、イズミの胸にある感情が生まれた。

 それは『情けない』とか『かっこわるい』とか、そういう負の感情ではなく。


 たしかに、かっこよくはなかっただろう。

 おとぎ話に出てくる英雄のように、完璧な姿というわけでもない。

 だが、それでもイズミはその生き方に、確かな誇りを感じたのだ。


「なるほどねぇ……」

「だから、私が今抱いている感情をあげるとしたら、それは憧れでしょうか。彼のように、自分の身を顧みず人を助けるために動けるヒトになりたい……そのために、彼の傍でできる限り色々なことを学びたい。そんな風に考えています。それに、助けてもらった恩返しもしなくてはいけませんし」


 その後もカイの話は続く。


 今まで全く魔法を使えなかった状態から、適切なアドバイスを受け簡単に魔法を使えるようになっただとか。

 毎日の剣術の修練で、異なる3つの流派の基本型を教えてもらっていて、すでに一つずつスキルを扱えるようになったこと。

 時々何気ない言葉で「かわいい」とか「きれいだ」とか「好き」と褒めてくれること。

 クエストに行く度、いろいろなアドバイスをくれること。

 そのアドバイスのおかげで、これまで力任せや勘に頼った戦い方だったのが、どうすれば有効に敵にダメージを与えられるか考えるようになったこと。

 真剣に魔物と対峙する時の横顔がかっこいいこと。

 掛けられる言葉の一つ一つが優しくて、その声を聞くたびに尻尾が揺れてしまうこと。


 惚気話にしか聞こえない、というより純度100%の惚気話を、スイとミリアは時に驚きながら、時に微笑ましく思いながら聞き続ける。

 今日という一日はまだ始まったばかりだった。



 †



 一方その頃――。

 カイは男が一人で行きたい場所に好きなように行った結果、黒服の怖いお兄さん方に囲まれていた……。

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