フラノスの雫
フラノスの雫という宝石がある。
フラノスというのはイスカ周辺で出土する祭壇の遺跡で奉られる最もポピュラーな古代の神だ。
鹿や野兎の骨とともに見つかるそれらの遺物から、フラノスというのは狩猟の神だろうと学者たちは定義した。
実際、神殿以外の遺跡からも狩猟道具等が多く見つかっているため、このあたりに過去住んでいた人々は
確かに狩猟民族であったのだろう。
さて、このフラノスの雫というのは小石程の涙滴型の宝石で、平坦な場所に置くと必ず先端が南を向くという魔法の品である。
また、祭壇跡の他に狩人の墓と思われる遺跡からも結構な数が見つかっており、古の狩人たちはこの魔法の宝石で、自らの位置を確認していたらしい。
また、祭壇に隣接している遺跡からは涙滴型のくすんだ石も多数出土しており、これはどうやら作りかけ、ないしは失敗作の雫らしい。
発掘当初、この石は何のために存在する者かわからなかった。
なにせ失敗作のほうが先に見つかったためにただのクズ石だとしか思われなかったのだ。
ともあれフラノスの雫は西からやって来た開拓者たち、冒険者たちの旅を変えた。
彼らの持つ星見の技術とフラノスの雫の併用は自分たちの位置を把握し、拠点との位置関係を知るのに多いに貢献した。
また、副次的なこととしてこのアイテムのおかげで以前よりも詳細な地図ができたのも開拓者たちにとって追い風だったのだろう。
古代の狩人たちの必須のアイテムは今なお、新たに入植した我々の必須アイテムでもあるのである。