表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンマスターは魔王ではありません!?  作者: 静電気妖怪
2章〜光は明日を照らし、鬼は大地を踏みしめ、影は...〜
64/108

62話「罪深きゲッケイの落とし子3」

「『ゲッケイ』?」


レイジ は全く聞いたことのない人物の名前につい聞き返してしまった。


「そう、他にできそうなのは勇者パーティーなら賢者くらいだね」

「まぁ、賢者にしろその『ゲッケイ』にしろ マーダ は偽名と見た方がいいのか?」

「その可能性は高いと思うよ。実際、ステータス以外では簡単に名前なんて変えられちゃうから」

「『ゲッケイ』...ね...」


レイジ は ゼーレ達から視線を外しカプセルの中で眠る エイナ を見た。


「何にしろ マーダ を殺さないと エイナ は目覚められない」

「そうだね」


レイジ の中では確定した物だった。

元同族である人間を殺すことに全く忌避感を感じないほどに レイジ の中で エイナ の存在は大きかった。


「...もし、このまま地球に戻ればどうなると思う?」


レイジ はふと思った疑問を ゼーレ にぶつけた。

ゼーレ は少し考えるそぶりを見せた後口を開いた。


「...難しい話だね。ゼーレにもどうなるかわからないよ。ただ...」

「...」

「術者から離れすぎて効果が薄れる、ってことはあるかも」


最悪の事態、マーダ の殺害に失敗した結果 エイナ が一生眼を覚ますことができないという危機感を少しでも拭えた レイジ の表情は僅かだが和らいでいた。


「...はぁ、一応それも検討するが外に出て探した方がいいかもな」

「...それってダンジョンを放棄するってことになるよ?」

「ん?できないのか?」

「お兄ちゃんとゼーレ だけなら外には出れるよ。でも、他の子達が外に出たら...」

「ッ!?」


唐突に ゼーレ の瞳から光が消えた。

その眼は レイジ が下手な発言をするなら全てを否定することを物語っている様で、


「皆んな...狂っちゃうよ?」


ゼーレ はそう一言を告げ、レイジ の回答を待った。


「く、狂っちゃうってどういうことだ?」

「そのままの意味だよ? 『突発的魔物発生現象(スタンピート)』って言われることもあるかな?」

「そ、それはつまり...?」

「みーんな理性を失ってただ暴れる存在になる、かな? ...お兄ちゃんはそんなこと望まないヨネ?」

「あ、当たり前だ!」

「ヨカッタ、ヨカッタよ、お兄ちゃん...」

「...だが、それだと直接は探しに行けないのか?」

「言ったヨネ? お兄ちゃんと ゼーレ だけなら行けるよ?そんなにお兄ちゃんは ゼーレ と一緒が...イヤ?」

「あ、いや、そうじゃない。俺だけだと戦力が不安だろう」

「...デモ、ダメ。出て行くならお兄ちゃんと ゼーレ だけ。コレはゼッタイ、絶対なんダヨ?」

「わ、わかった。なら、俺が強くなってからにしよう!」

「...」


ゼーレ は レイジ の回答に満足が言ったのか先ほどまでの雰囲気はかけらもなくいつもの少女らしいものに戻っていた。


「うん!そうだね! いやー、お兄ちゃんに守られながらの旅かー。騎士に守られるお姫様的な? なんか考えただけでワクワクするね?お兄ちゃん!」

「あ、ああ...」

「「...」」


嬉しさで口元が緩んでいる ゼーレ に レイジ はある種の危機感を感じ、パンドラ と レイス もまた別の危機感を感じていた。


「...先輩ヤベーっすね」


以前もそんな光景があったんだろうな、そう楽観している ハクレイ は一人だけ危機感を感じていなかった。


◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾


「ますたー、なまえ...ちょうだい...!」


朝昼夜、いつの間にかどの時間帯に食べているかわからない食事を終えた レイジ に レイスが駆け寄ってきた。


「な、名前?」

「うん...なまえ...。ますたー...が...すきな...なまえ...ほしい」


何故かちょっとイケナイ雰囲気を出しながら無表情で迫る少女に レイジ はたじろいでいた。


そして、そこへ狙った様に各々が集まり始めた。


「そっかそっか、レイスちゃん進化したんだったんだね!遅くなったけどおめでとー!」

「ありがとう...おねえちゃん..」

「おねえちゃん』っすか。...成る程っす、コレで完全に理解したっす!」

「一体何を理解したんだ?」

「ゼーレ先輩がこのダンジョンの家系とか握るオカン...つまりこれがオカン天下ってヤツっすね!」

「お前どこでそんな言葉覚えたんだ!?」


ハクレイ はビシッと決めポーズを取りながらそう言った。


「オ、オカン....お母さん!? それはつまり...お兄ちゃんと結婚!?」

「待て待て待て、何言ってんだこの子!?」

「そ、そうですわ! あ、ああ貴方様はそ、そんなことしませんわ!」

「おお! パンドラ...」

「わ、私が相手になるんですわ!」

「お前も何言ってんの!?」

「何すかここは!? 昼ドラだったんすか!?」

「いやだから何でそんな言葉知ってんだよ!?」

「この前てれび? で見たからっす」

「ゼーレッ!?」

「知識をつけるのは大事だよ!」

「そんな知識いら...」


レイジ 達が茶番を繰り広げていることに耐えられなくなった者がいた。


「「「「あ...」」」」

「.........」


いつもより長い沈黙。

その沈黙の背後には低音の地響きがする程に怒りを表している レイス がいた。


「あ、レイス...さん?」

「なまえ...ちょうだい...いますぐ...」

「い、今すぐ!?」

「じゃないと...」


そう言って現れたのは二本のククリナイフ。

その毒毒しい刃は レイス の心情を物語っているのか一段と煌めいて見える気がする。


「ますたーを....ますたーの...てとか...あしとか...切って...私だけを...みさせる...よ?」


その目は笑っていなかった。

そもそも、レイス の表情は変化していなかった。

ただ、レイジは悟った。


(コレ...本気(ガチ)だ...)


これ以上待たせれば自分の寿命は待ってくれない、そう悟らせるには十分な物だった。


「あ! ゼーレは急用思い出したから!」

「そうっす!自分も エイナ先輩のお世話する必要あるっすから!」

「あ、わ、私も!」

「あ、おいお前ら!」

「ますたー...?」


その後、少女が納得...ククリナイフを納めてくれるのに レイジ は小一時間を使った。

ちょっとしたホノボノ回。

エイナちゃん....。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ