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ダンジョンマスターは魔王ではありません!?  作者: 静電気妖怪
2章〜光は明日を照らし、鬼は大地を踏みしめ、影は...〜
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55話「湧き立つ希望、溢れる光、その後に3」

各所の戦闘が激化する中 レイジ は妖刀を地面に刺し、柄を両手で握る態勢で立っていた。


(...なあ、旦那)

(どうした?)

(ワイら...いつまでこの状態なんや?)

(戦いが終わるか、戦況が向こうに傾くまでだな)


両端を見れば エイナ が影に飲み込まれ、パンドラ が光り輝く ラルカ と剣を交えている。


正面を見れば レイス が速度で優位に立ち、ハクレイ が雰囲気の変化した ブラウ を足止めしている。


(...わかるんよ、わかるんやけど...暇や)

(仕方ないだろ。『暴食』を複数に対応させるのに動けないんだから)

(せやけどな...)


レイジ が仕掛けた二つ目の罠。

レイジ を含め円形広場の壁や地中には妖刀の刃が散乱する形で伸びている。


そして、レイジ はそこを起点に踏んだ者(・・・・)から魔力を奪う、という形で『暴食』を発動させている。


勿論、どこに妖刀が仕込まれているかは全員が大体把握している。


各々の立ち位置を見れば ハクレイ が作った鎖の球体を上から見ればちょうど何本かの接線を妖刀が作っている。


他にも、パンドラ はなるべくその地点を踏まないように立ち回っている。


エイナ はその場所に立たず、逆に マーダ は立っていた状況を作り出している。


(でも、ホンマに吸えてるんか?)

(いや、あくまで俺のは模倣(コピー)だ。本物(オリジナル)の 餓鬼 の様に多くは吸えないし、他にも欠点がある)

(そんならやっても変わらんちゃう?)

(いや、そうでもないぞ。案外こういう気づきにくいのは後々厄介になってくるんだよ)

(そうなんか?)


妖刀は納得のいかない様子であったが改めて戦況を眺め始めた。


◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾


光と闇が交差する戦場で一つの変化が訪れていた。


(おかしい...)


ラルカ の頭の中で一つの疑問が浮かび上がっていた。


(体が...重い? こんなに早く疲れるものか?)


ラルカ の横からの斬撃を パンドラ は隙間の入り込みながら細剣でズラし、パンドラ の細剣が突けば ラルカ は体を捻り避けていた。


そして、ラルカ は額に汗を滲ませ、倦怠感を感じながらも戦闘は続いていた。


「おや? どうか致しましたか? 随分お疲れの様子ですが」

「う、うるさい!」


パンドラ の動きに極端な変化は見られない。

当然、戦闘が始まって長くはないため汗も見えない。


(私だけ...? 何故コイツは平然としている?)


「闘いの中、余計な思考は厳禁ですよ?」

「ぐっ!」


問題を解決しようとすれば パンドラ は狙ったように細かく攻めてくる。


そのため、ラルカ はこの問題に対処しきれずにいた。


次第に両者に傷が出来ていった。

パンドラ にはいくつもの切り傷がある。しかし、それらは全て浅い。


一方、ラルカ には傷は無い。傷を負えばすぐに光魔法で治されていた。しかし、鎧には幾つもの貫通した跡があった。


「はぁ...はぁ...」

「どうやら、ここまでのようですね」

「...」


ラルカ が纏う光が徐々に輝きを失っていった。

それの同調するように ラルカ の息も上がっていた。


「では、サヨウナラ。貴方との戦い危ないものでしたよ」

「...お前は」


パンドラ がトドメを刺そうと細剣に闇を纏わせた時 ラルカ の口が開いた。


「?」

「お前は...私が勇者か? と言ったな?」

「貴方はそれを否定したはずですが?」

「ああ。なんせ、私は勇者ではない」

「言いたいことがわかりませんね。時間稼ぎですか?」

「いや、久々に私を勇者と勘違いする奴が居たから答えているだけだ」

「でしたら...」

「私は勇者ではない...だが!」


突如、ラルカ の身に纏っていた光が消失した。

そして、新たな光が ラルカ を包んだ。


「ッ!?」


その光はバチバチと音を立て、不規則に ラルカ の周囲を浮遊した。


「私の本当の魔法は雷魔法。...そして、勇者の血を引くものだ!」


ラルカ の叫び。


その叫びは何処か悲しみと喜びを含んでいた。


そして、その叫びと同時に動いた ラルカ の剣は パンドラ の細剣を持たない左腕を切り落とした。


◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾


「ぐうぅ」

「...」


レイス と ロート の闘いは レイス の優勢であった。


ククリナイフの形状を巧みに使った不規則に変化する攻撃に ロート は防ぎきれずにいた。


その腕や脚、顔にまで幾筋の切られた跡と気が垂れている。

それらは浅いものから深くまで切られたものまである。


「うっ...え?」


攻撃の最中 ロート にはある光景が映った。

それは、姉の ブラウ の『鬼化』だった。


「うそ? なんでお姉ちゃんが...うぐっ!」


その余所見を見逃すことなく レイス は一段と強い攻撃を加えた。


強打を受けた ロート は地面に叩きつけられ小規模のクレーターを作った。


「...うぅ....お姉ちゃんが使うなら...いいよね」


ロート は ブラウ に許しを乞うかの様に呟いた。

そして、金棒を杖にしてゆっくりと立ち上がった。


「...お...わ..り..」


立ち上がった ロート を見た レイス はトドメを刺そうと急接近した。


そして、必殺の刃を ロート の首元を狙い振り下ろした。だが...


「...アヒャ」


その刃は一瞬のうちに出現した ロート の金棒によって遮られた。


「アヒャ...アヒャヒャ? アヒャヒャヒャヒャ!」


突如 ロート の口溢れ出す狂気の鳴き声。

それと同時に侵攻する ロート の肌の変色。


徐々にその肌の色は赤色に変わり、爪は伸び、靴を破り飛び出した。

眼球はギョロギョロと動き焦点は定まっていない。

そして、身に纏う雰囲気は何処か妖しげで恐怖を与えられるほどだ。


「アヒャヒャヒャヒャヒャウヒャー!」


狂気の掛け声とともに突如繰り出された金棒の打撃。


「...ッ!」


レイス はそれを目で追うことができなかった。


直撃した打撃は レイス の骨を砕き、壁に叩きつけた。


「アヒャヒャヒャヒャッ!」


その叫びは勝利への確信か。はたまた、歓喜か。

広場には 一人の少女の笑い声が響き渡った。

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