40話「平穏と窮地の表裏2」
レイジ達はゼーレが待つ最下層に帰ってきた。
「あ、お帰りお兄...どうしたの?」
ゼーレはゲッソリとしたレイジを見て声をかけた。
「...あ、あぁ、ゼーレか。ただいま」
「お兄ちゃんどうしたの?お腹でも空いたの?...もしかして、毒にでもやられちゃった!?」
「あ、ああ、確かにあれは毒だな...俺は今後の魔物達の進化が恐ろしくてたまらないよ」
「? 本当にどうしちゃったの?」
何処か虚空を見つめているレイジを心配するゼーレ。
そして、ゼーレに声をかける人物がいた。
「お姉様ぁ、ただいま戻りましたぁ」
「あ! ファントムちゃん! 何々、進化したの!」
「はい!」
「そっかそっかー、よかったねー」
そう言ってゼーレが黒髪の少女の頭を撫でている。
そして、ゼーレは何故レイジがやつれているか理解した。
「あ、もしかしてお兄ちゃん、ファントムちゃんの名前考えて疲れたの?」
「うっ...そうだよ」
「なーんだ、心配して損したよー」
「...」
レイジはゼーレの言葉を聞き流していた。と言うより頭の中でフラッシュバックする先ほどまでの光景に心がそこに無かった。
「で、で、何て名前をつけてもらったの?」
「えへへ、お兄様には『エイナ』と名付けて貰いましたぁ」
「エイナちゃんかー、いい名だねー」
「はい!」
そんな少女二人のやりとりを羨ましそうに見ている存在がいた。
そして、ゼーレはその存在に気づいた近づいた。
「やっぱ羨ましい?レイスちゃん」
「...う..ん」
「大丈夫、大丈夫。きっと直ぐに進化できるよ! だからメゲないでね」
「....」
「お兄ちゃんもきっと待っててくれるはずだから、ね?」
「う..ん...」
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「さて、ゼーレに質問がある」
どの時間帯に当てはまるか不明だが、レイジ達は食事を終えた。
「何かあったの?」
「襲撃者の件で少しな」
そしてレイジは襲撃者との戦闘を話した。
何故かダンジョンの内装を知っていたこと。
何故かレイジ達の情報が漏れていたこと。
何故か逃げた襲撃者の追跡ができなかったこと。
それらをできるだけ詳しく、鮮明伝えた。
「で、ゼーレはどう思う?」
「うーん、まず追跡できなかったことだけど、これは可能かもしれない」
「できるのか?」
「うん。実際、この世界の技術力次第だけどダンジョンマスターがダンジョン内を確認できることは知ってると思うの」
「そうか、それなら人間も何かしら考えるわけか」
「そういうこと」
「だが、もしそれでずっと隠れられたらダンジョンマスター側は不利じゃないか?」
「まー、確かに何処にいるか分かんないのは不利だね」
「いや、それ以前に侵入されたかどうかも分かんなくなったりしないのか?」
「それはないよ」
レイジの疑問にゼーレは明確な否定をした。
「ダンジョンへの侵入は異物の侵入。これはダンジョンマスターの技能じゃなくて生体防御みたいなものだからこれは絶対にごまかせないよ」
「そういうものなのか?」
「そういうものだよ」
レイジ自身あまり納得はいかなかったが、定義みたいなものだと考えることにした。
「なら、ダンジョン内の情報が漏れていたのは?」
「うーん、確かに不思議なんだよね」
「ああ。...まるで未来からやってきたかのようにな」
「なるほどね」
「...この世界にそれを可能とする方法はあるのか?」
レイジの質問にゼーレは黙った。
そして、少し考えた後、口を開いた。
「時間軸に干渉する技能は確かに存在する...らしいよ」
「らしい?」
「ゼーレも全部知ってるわけじゃないんだけど、神様が関係してくればありうる...かな」
「なんか不確定な言い方だな」
「うーん...」
ゼーレはレイジの指摘に唸った。
そして、困ったように答えた。
「...何故か、思い出せないんだよね。時の神様のこと」
何かは=ヤンデレ でした。
久しぶりに重くないもの書くと逆に書きにくく感じますね。




