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2話「one for all one 2」

『40人の中から4人の犠牲を出せ』


これが今与えられたお題だ。


1人はみんなのために、みんなは1人のために。


よく聞く理不尽の塊のようなお題とそっくりだ。


『制限時間は10分。その間に決まらなかった場合は、全員を犠牲としようか。では10分後楽しみにしているよ』


ーブチッ


校内アナウンスが切れた。


「う、うわあああああああ」

「...お、おい...どーすんだ!?」

「ええええ!?ちょっと何これ!?ドッキリか何かでしょ!?」

「無理だぞ!俺は死にたくないぞ!」

「はあ!?そんなのみんな同じだわ!」

「ちょっと、アンタが死になさいよ!この前私の陰口言ってだでしょ!?」

「え?え?そ、それだけで...?」

「はあああああ!?ふざけてんじゃないわよ!?あんたに権利なんてないわ!」


誰が先に騒ぎ始めたのか。だが、1人の感情が他の全員へと伝播した。


一心不乱に生徒は近くの生徒を犠牲に出させようとする。


実際、外に出ようと扉を開けようとするが開かず、壊そうとしても壊れない。

それは窓も同様であった。


なぜ俺が騒ぎに参加してないかって?

俺が負け組で、ボッチで、フツメンだからだ。言わせんな恥ずかしい。


狂乱になり暴行が始まる一歩手前1人の女子生徒が声をあげた。


「みんな落ち着いて!」


彼女の名前は 立花(たちばな) (かおり)

肩まで伸ばしたゆるふわな茶髪と大きな瞳の少女だ。学年で1、2位を狙えるだろう。

身長は平均、明るい性格を武器にクラスの中心的存在となっている。

彼女に告白した男子生徒は多く、女子性の中には嫉妬している子がいるくらいだ。


「みんなが...その...選ばれたくないのはわかる。でも、このままだと全員犠牲になっちゃうんだよ?」


香の立場的力が場を凌駕したのか事態は収束しかけて居た。が、


「じゃぁさー、アンタが選ばれてくれんの?」


1人の女子生徒が声を高々に聞いてきた。


彼女の名前は 枢木(くるるぎ) 真里亞(まりあ)

肩まで伸ばした金髪の髪に女子にしては少し高めの身長と褐色の肌。

腰には制服を巻きつけている如何にもなギャル生徒だ。

そして、香に嫉妬して嫌う女子生徒の筆頭だ。


「い、いや、別にそういう意味じゃーー」

「えー、さっすが香ちゃん!そういう勇気ある行動いいと思うよ!」

「ーーえ?」


香が弁明しようと言葉を繋げようとした時、どこからともなく男子生徒が声をあげた。


それが悪手だった。

時間が少なく、意識下において市が連想されているこの状況でそんな言葉を口に出したら...


「香....お願いしてもいい?」

「お願い香!この前クレープ奢ったでしょ?」

「ふーん?じゃ、お願いねー」

「え、ちょっと、え?待って...」


当然、乗ってくるやつが居る。

更に、今回は香が仲良くして居るグループからだった。


「はーん、じゃああと3人決めないとねー」


そして、全体の主導権が真里亞に移ってしまった。


「え、ちょっ...!」

「誰か立候補はいない?いないんじゃあ、私が選んじゃおっかなー」


香の言葉は真里亞のわざとらしいタイミングによって遮られてしまう。


そして、クラスの方も真里亞に選ばれないように誰も声をあげない。


実際にそんな権利はなくともだれかが名指しにしてそれに賛成すれば自分は助かってしまうからだ。


「じゃぁあ...」

「俺が行こう」

「「「「「ええええええええ」」」」」


真里亞の言葉を遮って立候補した男子生徒がいた。


彼の名前は 八雲(やくも) (ひびき)

爽やか系イケメン黒髪男子生徒。

スポーツは全ての部門で予想を斜め上に行く成績を叩き出す。

勉強は微妙だがそれに有り余る運動神経を持っている。

クラスでも嫉妬する男子はいるがそれを抑え込むだけのコミュ力がある。

そして当然のように女子からの人気は高い。


「響...あんた行くの?」

「そうだ」


真里亞の質問に響は力強く答えた。


「お、おい響考え直せって」

「響君、行っちゃダメだよ!」

「そうだよ!他の人でいいじゃん!」


響を止めようと響のグループメンバーが彼を説得しようとする。


「誰も行かなかったらみんな死ぬかもしれないんだぞ?なら俺はみんなのために死ねるなら本望だ」


響は説得してくるメンバーに対して漫画の主人公のような台詞を語った。


なんという偽善だろうな。

俺ならあんな言葉吐けない。


「じゃあ、あと2人かー。誰かいるー?響みたいにさ」


その響の台詞を聞いても他のメンバーは動かなかった。


「じゃあ、時間もないしサクッと...」

「私が行く」


またもや真里亞の言葉を遮るものがいた。


彼女の名前は 涼宮(すずみや) (れい)

背中まで伸びた滑らかな黒髪と常に無表情な顔つき。

彼女は常に1人で居たためかこの場で初めて声を聞いた気がする。


「へぇー、まさか涼宮が出てくるなんてね。どういう風の吹き回しか?」

「別に。この茶番を早く終わらせたいだけ」


零は真里亞の質問に対して淡々と無表情に返した。


「ッチ!あぁ、最後の1人!」


零の態度が気に入らなかったのか真里亞の語気と態度が荒くなる。


「誰かいねぇの!おい!」


真里亞の声がクラス内に響く。

そして突如ーーー


「ッ!」


ーーー俺の背中を誰かが押した。


「へー、神ノ蔵。そういや、お前あんま好きじゃなかったんだよ。顔も普通のくせに気取りやがってよ!」


俺だってお前のことあんまり好きでもない。


結果として前に出てしまった。当然この後も読めている。諦めの境地にすら到達している。


「最後の1人、お前で決定な!他のやつもそれでいいな!」

「神ノ蔵君なら...」

「まぁ、あいつならな...」

「誰、あの子?」

「ああ、ほとんど1人でいる奴だよ」


酷い言われようだ。

ただ、お前たちとか変わってもこっちにはなんの利益もないから静かにしていただけなのに。


こうして犠牲となる4人が選ばれた。

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