15話「階層主討伐2」
「あぁ、あぁあ!どうしたらいいんでしょう?
どうしたら貴方様は私だけを見ててくれるんでしょう?
どうしたら貴方様は私だけを求めてくれるんでしょう?
どうしたら貴方様は私だけを愛してくれるんでしょう?」
パンドラは頬を赤く染め身悶えていた。
「どうしたらいいんでしょう。
貴方様を愛せば良いのでしょうか?
貴方様は縛り付ければいいんでしょうか?
貴方様を見つめていれば良いのでしょうか?
貴方様以外を..........殺せば良いのでしょうか?」
どこまでも一途な思いを語るパンドラにレイジの頭の中には「怖い」と「サイコパス」と「関わりたくない」と「早く帰りたい」の言葉が錯綜する。
それでもなんとかレイジは言葉を発した。
「な、なぜそこまで俺にこだわる?」
「何故、と言われましても。私が貴方様のことを愛しているからですわ」
その一言がきっかけとなったのかレイスが動いた。
と言うより、初期動作を起こした。
気づく前にはレイスはパンドラの背後を取っていた。
「ます...たー...は...渡さ..ない!」
ーキンッ
「ッ!?」
レイスの渾身の一撃はパンドラに届く前に何かに防がれてしまった。
その後もレイスは止まることなく何度も何度も何度も攻撃を仕掛ける。
ーキンッキンキンキンッカキン!
全て何かに防がれてしまう。
「...どう..いう.....こと?」
「私の技能は『災厄』。災厄とは現象、概念そのもの。貴方のような直接な攻撃では私には勝てませんことよ」
「....」
「では、まずは貴方かーー」
ードシュッ!
ーガッ!
パンドラの言葉を遮るようにファントムが影の槍を放った。
対するパンドラは闇の盾を作り槍を防いでしまった。
「次は、貴方ですの?」
「(コクリ)」
「いいでしょう。ですが、その前に」
そう言ってパンドラは手を払った。
すると、パンドラの足元に小さな魔法陣がいくつも出来上がり、魔法陣からは数十、数百の何かが生まれた。
何かは様々な形を持つ。
あるものは虫の姿を。
あるものは魚の姿を。
あるものは鳥の姿を。
あるものは人の姿を。
それら何かは真っ直ぐにレイスに向かっていった。
「さて、ではこれはどうでしょうか」
そう言って、パンドラは宙に10を超える闇の槍を作りーー
ーシュバババババババ!
ーー撃ち放った。
槍は全てファントムに向かい、煙を立てた。
「ファントム!」
レイジはファントムの安否を確認するように叫んだ。
だが、返答はなかった。
やがて煙が晴れるとそこには無傷のファントムと、ファントムの前には口を開いた餓鬼の姿があった。
「あれ!?いつのまに!」
レイジは周りを見ると餓鬼の姿はなくなっていた。
「無傷ですの!?」
驚くパンドラ。
そこにファントムは一切の躊躇もなく影の槍を20揃えーー
「....!」
ーー撃ち放った。
「っ!」
パンドラは一瞬の遅れをとったものの闇の盾をはりなんとか耐えきった。
「やりますわね。一体、どんなーー」
耐えきり油断したパンドラに拳が近づいた。
「ーーッ!」
ーガキン!
間一髪のところで闇の盾を滑り込ませパンドラは攻撃を防いだ。
「私..も...いる...」
「ど、どういうことですの!?貴方には沢山の厄災を与えたはず!」
「全...部....たお..した」
「ぜ、全部!?こ、この短時間でですの!?そ、それに貴方では私には触れられないはずなのに何故!?」
「魔...力...使えば...こう..げき...あた...る」
「こ、この短時間で魔力を纏って攻撃できるようになるなんて不可能ですわ!」
「で...も...でき...た...」
「い、一体何が...ッ!」
パンドラはレイスの攻撃を耐えながら会話していたためファントムの存在を意識から外してしまった。
その状況をファントムは見逃すことなく20を超える影の槍を作り撃ち放った。
レイスは足を止めていなかったためギリギリまでパンドラを攻撃し、直前に回避した。
一方、直前まで防御に回れなかったパンドラはーー
「ま、間に合わッ!」
ーズドーーーン
ーー直撃した。




