13話「ダンジョン製作3」
「だぁ!帰って、来た!」
『暗黒』からダンジョン内転移で帰還したレイジの顔には大量の汗が流れ、顔色は蒼白していた。
「お、お兄ちゃん!無事だったんだね!」
レイジが顔を上げると心配そうな表情をしたゼーレが近ずいて来た。
そして、ゼーレに続きレイスとファントムも近寄って来た。
「大丈夫お兄ちゃん!?顔が真っ青だよ!」
「だい...じょ..う..ぶ..?」
「(オロオロ)」
「ちょっと...怖かったわ...」
「何があったの!?」
「...襲撃された」
「しゅ、襲撃!?」
レイジは一度深呼吸をし、気持ちを整えた。
「この襲撃について話す前に、ゼーレはいつ帰った?」
「お兄ちゃんが引きづられて行った時。レイスちゃんと一緒にだけど」
「...何で助けてくれなかったのかは聞かない。なら、ファントムはいつだ?」
「ファントムちゃん?ファントムちゃんならゼーレより先に帰って来てたよ」
「なに?」
「なんでも、餓鬼を連れて行こうとしたらしいんだよ。ほら」
そう言ってゼーレは餓鬼の方を指差した。
そこには召喚したときからたいして移動していない餓鬼の姿があった。
餓鬼は気づいてもらえたことが嬉しかったのかことらに向かって手を振っている。
「あ、忘れてたわ」
「で、ファントムちゃんと今回の襲撃に何が関係あるの?」
「今回の襲撃で使われたあれは...おそらく影魔法だ」
「そ、それって...」
「ああ、俺も最初はファントムの仕業だと思ってたが、さっきのゼーレの証言で白だな」
「(コクコク)」
「何じゃ、何かあったのか?」
「うお!?」
突然遠くにいたはずの餓鬼が近くにいてレイジは驚く。
そして餓鬼の隣では...
「つ....か...........れ............た」
いつもより間隔を長くレイスが呟いた。
「え?何運んでもらったの?」
「そりゃあ、ワシだけ蚊帳の外は嫌じゃし、お主はこっちに来てくれんしのぉ」
「....も...う....む...........り...」
そう言って、レイスは倒れてしまった。
「...おい、餓鬼」
「...今後は自重しようかのぉ」
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「それで、襲撃者の特徴は何かのかないの?」
ゼーレはレイスの頭を膝に乗せ聞いてきた。
「一瞬だけだが、赤い瞳が見えたな」
「他には?」
「すまん。それ以外はわからん」
「うーん、そうなると困ったなー」
「なんだ、ゼーレはわかったのか?」
「そもそも、階層作る時、階層主も一緒に現れることがよくあるんだよ」
「は?」
「階層主の強さはあんまり強くないんだけど、ごく稀に強い場合があったりするんだよね」
「おい」
「ん?どうしたのお兄ちゃん?」
「階層主がいるって何で言わなかった?」
レイジのその一言にゼーレの表情が固まった。
そして...
「てへ、忘れてた」
...悪びれた様子もなく笑顔で真実を語った。
「そういう大事なことは忘れんじゃねぇ!」
「にゃああああああああぁ、いふぁいいぃいいい」
レイジはゼーレの両頬をそれぞれ片手で掴み引っ張った。
「たふへてたふへて!ほっへははほへひゃふううぅ!」
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「で、階層主をどうにかする方法はないのか?」
「うんとね、一番は統治下に置くのがいいかな」
赤くなった両頬をさすりながら涙目でゼーレは答えた。
「他にはないのか?」
「弱体化するまで待つか、倒すか。または、そのまま消滅まで待つか、かな」
「弱体化、消滅ってどういうことだ?」
「魔物は皆ダンジョン内で循環する魔力をエネルギーとしているんだけどダンジョンマスターの統括内に入っていない魔物はダンジョン内で魔力を得られることができないの」
「つまり、階層主は俺の統括内にいないから段々と腹減っていくわけか」
「そういうこと」
この話を聞いたレイジは少し安心した。
「なら、消滅まで待つか。行くの嫌だし」
「多分消滅までに1ヶ月くらいかかると思うよ」
レイジの安心は一瞬にして砕かれた。
1ヶ月何をするのか。
この場にいるメンツとただ、ダベっているだけか。
階層を増やそうにも食費に当てるKPまで使ってしまう。
KPを増やそうにも『暗黒』が邪魔で多分増えない。
更に、レイジの中には外に出たい欲求があった。
結果、
「よし、討伐するぞ。3日以内に!」
この瞬間、階層主討伐が決定した。
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「まずは階層主の情報が欲しいな」
「お兄ちゃんなら階層主の情報と『暗黒』のマップが手に入ると思うよ」
「あー、確かに俺ダンジョンマスターだしな」
そして階層内を調べていると発見した。
「お、わかったぞ」
「なんて名前なの?」
「....『パンドラ』」
そこには厄災と名高い匣の名前があった。
「ま、まだだ!まだ不意をつける地形とかかもしれない!」
そう言って調べるとそこには、中心に比較的大きな広い円形の場所があり、その場所を境に上下に道ができていた。
つまり、どんな方法を使おうと円形広場の場所は必ず通り、なおかつ一本道のため不意打ちはレイジ側だけなら不可能であった。
「おいこれどうすんだよ!絶対この円形の場所にアイツ居るだろ!」
「こ、これはちょっと...」
「はぁ...何この戦闘能力に自信があるような地形...もうやだ...」
レイジの意欲は徐々に削がれて行くのだった。




