12話「ダンジョン製作2」
階層『暗黒』の追加を承諾すると...
ーゴゴゴゴゴォ
「な、なんだ！？」
突然に地震が発生した。
「階層が作られてるんだよ」
驚くレイジにゼーレは言葉をかける。
しばらくすると地震は収まり、洞窟内の壁の１つが崩れ、入り口と思しきものが現れた。
「あの先が『暗黒』か？」
「多分。一応この階層が最下層になるようになってるからね」
「じゃあ、行ってみるか」
「(コクコク)」
「......う..ん」
「...いいのぉ」
ファントムは喜んでいるのか返答と首の振る速さが速く、レイスは少しオドオドしながらも楽しそうに見える。
一方、餓鬼は終始羨ましそうにしている。
入り口に入ると階段式になっており、階段を登りきると、その先は何も見えなかった。
上も下も右も左も。
辛うじて、上がってきた階段が見えるくらいである。
「なるほど、わかっていたけどなんも見えん」
「ファントムちゃんは何か見える？」
ゼーレがファントムに質問するが返答はない。
「なぁ、ファントム喋れないから無理じゃね？」
「....レイスちゃんは？」
「すこ...し..だけ..なら...。ます..たー...と...おねえ...ちゃん...みえ..る...」
「...え？今なんて？」
レイスの言葉の中に耳慣れない言葉がありレイジがつい聞き返してしまった。
「どうしたの？」
「今、レイスが『おねえちゃん』って言ったよな？誰のこと？」
「ゼーレだよ？」
「そ..う...」
「え？お前らいつからそんな仲良くなったの？」
「いつからってそれはねー、そんなの最初からだよ！ね！」
「うん....」
ゼーレの台詞にレイスは過去最高の速度で頷き返した。
「今、レイスの言葉の中の間が少なかったような...」
「そう言えば、ファントムちゃんは居る？」
「.....どこ...に...も...いな..い」
「え？迷子か？」
「...あ」
レイスが何かに気づいた。その時...
「え？うわっ！？ちょっ！？何！？」
レイジは何かに引きづられるように動き始めた。
「え！ちょっ、ムリムリムリ！！何！？引きづられるぅ！えええぇ！！」
そのまま、レイジは暗闇の中へ進んで行ってしまった。
それも、車並みの速度で。
「今の...ファントムちゃん？」
「...う...ん...？」
「...私たちは帰ろっか」
「...う..ん..」
◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾
「うわああああああああぁああぁ！」
引きずられ移動すること数分。
どこかに辿り着いたのか急停止し、放り投げられ何かにレイジはぶつかった。
「いてて...ん？ここは？」
と言ってた周りを見渡すも何も見えない。
「何なの？何が起こったん？」
急展開が進みすぎ、思考することを諦めたレイジ。
そして、そのレイジの肩を叩く者がいた。
「誰って...ああ、ファントムお前か？」
レイジはようやく解答に辿り着き、納得する。
「大体、何だよ急に。さっきの影魔法の時も今回の時も、俺になんか恨みでもあんのか？俺ここから帰れないし、帰れなかったら餓死するんだけど！」
文句を言うも何も返答は来ない。
「はぁ、とりあえず帰るぞ。そろそろ腹が減ってきた」
レイジはそう言って立ち上がり歩き始めようとしたが...
ーシュッ
突然レイジの顔付近に下から何かが通り過ぎた。
そして、レイジの髪を数本散らした。
「お、おいファンッ！」
ーシュシュシュシュシュッ！
レイジがファントムを怒鳴り付けようと声を出す瞬間さらに多くの何かがレイジの周りを通り過ぎて、次第にレイジは壁と思しきものに手足を固定されてしまった。
「か、影魔法か！？う、動けねぇ！？」
ーヒタヒタ
何かがレイジに近ずいてくる。
「ふぁ、ファントム！これを外せ！」
その命令は何者にも届かなかった。
ーヒタヒタ
徐々に何者は近ずいてくる。
近さが増したためか、興奮した洗い鼻息も聞こえ始める。
「フー、フー...」
「え？ちょっ、ファントムさん？怖いんだけど！...怖すぎるんだけど！！」
ーヒタヒタ
そしてついに、近ずく音が消えた。
「フー、フー、フー」
代わりにより鮮明に聞こえる荒い吐息。
何者かは直ぐ近くまできてしまった、とレイジは直感してしまう。
この時、レイジに電流走る。
今までの経験を、記憶を、知識を総動員した。
この場で死なないために。
この場で襲われないために。
この場から生きて帰るために。
そして、出した答えは...
「だ、ダンジョン内転移いぃ！最下層ぅ！」
その一言と共にレイジの周りが光に包まれレイジは消えた。
その時、レイジの視界にはじっと見つめる赤い瞳が映った。
