ダンジョン9話
安全地帯でお昼ごはんを食べながら私は一応入口の方を見る。
入ってこないと雄兄から言われているし、何かあれば雄兄が対処してくれると分かっていてもなんとなく警戒してしまう。
「別に悪いことじゃないぞ、ダンジョンでは何があるかわからないんだから常に気を張る事は良い事だ、ただし、この後集中力を切らさないようにな」
そう言って雄兄が大き目の弁当箱を抱えながら私の行動をほめてくれる。
「今俺達が使ってるこの場所だって何かの異変で使えなくなるかもしれない、ダンジョン内で地殻変動が起きるかもしれない、モンスターが下層から上がってくるかもしれない、俺達はダンジョンについて何もわかってないのだから気を張って悪い事はないぞ」
雄兄がそう言うと、北原君もコンビニで買った飲み物を飲みながら入口の方を睨みつける。
「さすがに今日明日で何かあるわけではないと思うがな、もしあったら君等二人のどちらかが主人公補正でも持ってるんじゃねえかな」
大きな口を開けてご飯を口に運ぶ、美味しそうにご飯を食べる雄兄を見ていると僕ももう少しおかずを入れればよかったかなと、自分用の弁当箱を見る。
「その時は私じゃなくて北原君でしょうね、年齢的にも見た目的にも」
私は北原君の方に笑いかけながら改めて北原君の容姿を見る、年は前に聞いたところ19歳で、身長は私よりも10cm以上低い160cm台とはいえ、体は引き締まっているし、顔も十分にイケメンと言える。
「確かに30近い小太りのおじさんよりはイケメンの方が画面映えはするな」
雄兄の言葉に私も頷くと、北原君は慌てたように私を見ながら。
「最近は30代が主人公のラノベなんかもありますし、もしかしたら太郎さんが主人公かもしれないっすよ」と私に気を使ったのだろう、慰めてくれる。
「そもそもどっちも主人公じゃない可能性のほうが高いから心配するな、それとも太郎は主人公にでもなりたかったのか?」
「勘弁してくださいよ、痛い思いをせずに生きたいんですから、補正マシマシで痛い思いして成功する人生なんてお断りです」
私が首を横に振ると、そうだろうなと雄兄が理解を示してくれるが、北原君は若干不満顔だ。
「考えてもみなよ北原君、ラノベの主人公とか元は地球の一般人とか言いながら、戦闘中に骨が1、2本折れても、骨が折れたかって言いながら戦闘するんだよ?お前のような一般人がいるか!だよ」
ひどい時には腕の1本くらいならちぎれてもそのまま戦闘をする逸般人か修羅だろお前っていう子までいる、逆に言うと、そんな無茶な人生を送らされるのも主人公である。
「考えるだけで嫌になる、私は頑張らずに楽しく生きたいだけなんだ……」
私の言葉に雄兄以外は呆れたような顔をするが、仕方ない、生活する為には安定収入がいるのだから。
「さて、飯は終わったか?終わったなら出発するぞ?」
私達の何とも言えない空気を振り払うように雄兄が言葉を発する、どうやら皆食事は終わっていたらしく、全員が首を縦に振るのを確認した雄兄は立ち上がり。
「それじゃあ、午後からは北原が前、太郎が後ろだ、いいな」
私達は頷きダンジョン探索の午後の部が始まるのだった。
主人公の身長は180cm弱です