ダンジョン8話
ウサギ、クリティカル、うっ頭が、と言う人は多いのではないでしょうか
私が初めてダンジョンに潜ってから三日が過ぎた。
LV2に上がった私達は現在地下2階に向かって進んでいた
「2階にはどんなモンスターがいるんっすか?」
「2階のモンスターは大ウサギだな」
北原君の質問に雄兄がそう答えると、何故か三橋さんだけが嫌そうな顔をするので私達は思わず三橋さんの方を見る。
「ああ、いえ古いゲームをやった人間からすると、ウサギとクリティカルっていう言葉に苦手意識があるんですよね」
そういえばネット上でも未だに色あせないネタとして首狩りウサギは使われるね。
「安心してくれ、ウサギといってもはねてはこないから、二つの意味で」
見た目はウサギ、サイズは中型犬で突撃してくるモンスターらしい。
「……跳ばないんだ?」
「跳ばないんだよなぁ、まあ、ぶつかられたら結構衝撃はあるから油断はできないけどな」
下層に行けば普通に飛びかかってくるウサギもいるけどな、と雄兄が言う、なるほど、3次元戦闘は難しいから上層では跳ねないのかな?
「っと話してる間に2層への下り階段だな、ちゃんと覚えておくんだぞ、一応案内看板は置いてあるけど、あまり道を外れると迷子になるかもしれないからな、まぁ、5階までは携帯の電波もGPSも通るから心配なら、地図アプリも何故か対応しているから使うのもいいかもしれん」
「まじっすか、電波もGPSも通るんすか」
北原君が雄兄の言葉に反応するさすがの私もこの発言には驚いた、なんでもありだなぁ、ダンジョン。
「ちなみに6階以降では電波とか通らないからな、20階を超えれば無線でも難しくなる、これもダンジョンの5階以降に君達を送らない理由の一つだな」
迷子になっても救助を送れないからなと、雄兄が言う、なんというか、本当に5階まではチュートリアルダンジョンって感じだなぁ。
「さて、今日からこの階で狩りをしていく、基本的には1階と変わらん、俺が動きを止めてお前達二人が倒す、いいな?」
2階へと階段を降りたところで雄兄が口調を変える、ここからは訓練という事だろう。
「できるだけ一撃で倒すように心がけてほしい、まずは動けない相手の急所をつくというのも訓練のうちだ、そうやっているうちに自然とモンスターの急所を覚えられるというわけだな」
「「了解です」」
私と北原君は雄兄の方を見て声を合わせて返事をする、別に声を合わせたりする必要はないのだが、なんとなく軍隊っぽくしようと北原君と話した結果である。
「まずは太郎から行くぞ、午前中は太郎、午後からは北原、明日以降は交互に倒していくぞ」
その言葉に頷くと、最前線である雄兄が、その後ろに私が付き、最後尾に北原君、間に挟まるようにキララ嬢と三橋さんが入る。
この数日の鍛錬で少しずつダンジョン歩きに慣れてきた私達のフォーメーションも最初に比べればましになっただろう。
「いたぞ、危険はないと思うが、一応気合は入れなおせよ」
雄兄は私達に振りかえると、私達が首を縦に振るのを確認してからいつものように飛び出す。
相変わらず速いが、めちゃくちゃ速いというわけではないんだよなぁ、目にもとまらぬとか、風を纏ってと言う表現ではない、にもかかわらず気づいたらウサギは足元に踏みつけられていた。
「不思議なんだよな……見えているはずなのに踏みつけた瞬間は理解できないんだよな」
それは確かにそうだ、私も雄兄が駆けだしているのは見ているし、敵に接敵しているところまでは見ている、なのにウサギが踏みつけられているところは認識できない。
「簡単な話だ、漫画とかで間とか拍子とか言うのを意図的にずらしてるからな、その辺はレベルが10になった時に実際に立ち会いながら説明してやるよ」
だからさっさと倒せと、雄兄が指さすので、私は剣を構えて慌てて駆けだす。
ネズミに比べると固くて中々首を落とす事が出来ないせいで何度も斬り付けるはめになった。
「まだまだ鍛錬が必要だな」
私の手際を見た雄兄が傷だらけのウサギの首元を見て言う。
素材の価値が下がるなどはないが、戦闘はなるべく短時間で少ない攻撃回数で済ませた方が安全だからこその言葉である。
「ネズミを簡単に倒せるようになって少し慢心していたのかもしれません」
レベルが上がるごとに楽にネズミを倒せるようになっていたが、多少剣筋がぶれても身体能力で無理やり倒していたのだろうと、今回の結果から気を引き締める。
「ま、危険がないから気が抜けるのもわかるが、変な癖がついたら大変だからななるべく一戦一戦気を引き締めて剣を振ってくれ」
雄兄はあまりクドクドと言わない、私は頷いた後に首を落としたウサギの胴体から魔石を切り出す、雄兄はそれを確認して次のウサギを探しに歩き出す。
私も剣を鞘に納めると雄兄を追いかけた。
それからしばらく狩りをして、私が10匹目のウサギを倒したころにちょうど昼を回ったので休憩に入る為に安全地帯を目指す。
1階で狩りをしていた時は昼はダンジョンから出て各自取っていたのだが2階から地上に戻ると時間がかかるので安全地帯を利用して休憩する事になっている。
「この先、二人も使う事になるからよく見ておいてくれ」
そう言うと皆が見ている前で雄兄は安全地帯に伸びている柱の上の石に触れると赤かった石が青くなる。
「これで安全地点内にモンスターが入ってくることはない、これは自衛隊が実験した結果だから安心してくれ」
それでも半信半疑の私達の為に、雄兄は実際にモンスターを広場の近くまで連れてきた後に石を青くするとモンスターはこちらを見失ったように、どこかへと行ってしまった。
「今日は俺がやるが、明日からは練習もかねて二人にもやってもらうからな、覚えておいてくれ」
私と北原君は雄兄を見て頷いた。
本当にダンジョンは便利だ。
作者は酷い方向音痴なので3Dゲーではちょくちょくマップを開かないといけないタイプなんですが、地球にダンジョンが出来た系作品で迷子になって命の危機!みたいなものはあまり見かけませんね(作者が知らないだけかもしれませんが)