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ダンジョン7話

レベルが上がれば強くなる、RPG系小説ならありがちですが、じゃあ筋トレは意味がないのか?というお話

ダンジョンでの狩りを再開して2時間が過ぎたころ10匹目のモンスターを倒した時に体に強い熱が生まれた。

それと同時に今まで握るたびに若干のだるさを感じていたグローブが素手とまではいかないがバッティンググローブ程度まで抵抗なく握れるようになった。

「これがレベルアップ……かな?」思ったほど劇的な変化がなくて戸惑っていると私の様子を見ていた雄兄が近づいてきた。


「レベルアップおめでとう、思ったほどの力が感じられなくて戸惑っていると言った感じかな?」

「そうですね、劇的にパワーアップできるかと思ったけどなんだか、こう」

「まぁ、筋トレを続ける方がパワーアップできるだろうな、でもなレベルアップには筋トレとは違って大きな利点がある」

「利点ですか?」そう尋ねたのは私ではなく北原君だったが、確かに私も興味はある。


「ああ、大きな利点だ、それはな筋トレと違って時間が立っても能力が落ちないという事だ」

レベルは上がれば下がることはない、その為怪我等で長期間体を動かせなくても一定の能力は最低保証されるという事になるのだ。


「お前達もテレビで見たことあるだろう、アメリカンフットボールの試合にレベル持ちが出場し、他の選手を寄せ付けなかった試合の事を」

それはダンジョンが現れたばかりの頃、レベル持ちの人間がスポーツの試合に出る事を規制される前の事、一人のレベル持ちの人間が参加した時の出来事だ。

雄兄が言ったように短距離走の速さは劇的に早くなったわけじゃないが、その圧倒的な身体能力はボールを奪わせないし、他の選手に当たれば当たった選手を吹き飛ばした。


後に発表された報告によれば、彼はダンジョンの4階までしか潜っていなかった為最大でも8レベルであるという事が報告された。

もちろんスポーツ選手として鍛えていた身体能力に加算された結果という事はあるが、それでもその後のスポーツ業界に大きな影響を与えたのも事実である。


「ま、小さい力の上昇の積み重ねだから、自分が強くなった実感が薄い部分もある、だからと言って高レベルになった時にかっとなって民間人とケンカをされると困る」

雄兄に言われ確かにそう考える危険性もあるかもしれないと思う、一気に強くなるわけじゃないから自分の強さの実感がわきにくいというのはあるかもしれない。

「ま、なんにしても太郎のレベルが1になったから北原と交代だな、太郎と同じ流れで行くぞ、見ていたな?」

雄兄の言葉に北原君の目が若干泳いでいる事に私は気づいてしまった、一体何を見ていたんだかねぇ。


北原君と持ち場を後退して私は後ろから全体を見渡す、一応後方からの奇襲に気を付けてはおくが、雄兄がそんなミスをするとは思わない。

前に出ているときには気づかなかったけど、三橋さんはビデオカメラを回しながら私達の動きを録画しているようだ。


「ああこれかい?、ダンジョンに入る前に言っていた通りネット上に上げる動画だよ」

私の視線に気づいた三橋さんがカメラを向けてくる。

「近いうちに動画としてネット上に上げる事になります、お二人の顔にはモザイクをかけるのでご安心ください」

僅かな間をおいて私に向けていたカメラをキララ嬢に向けた、キララ嬢はそのカメラに満面の笑みを浮かべてカメラに手を振った。


後ろから見るとわかることがある、雄兄が私が思った以上に広い視野を持っていた事、モンスターに向けて踏み出した時、1歩目に比べて二歩目で大きく減速している事、キララ嬢が後ろから声援を送っている事、三橋さんがそれと戦っている北原君が同時に映るように位置取りをしている事。

余裕があるつもりだったけど、思った以上に私は視野が狭まっていたのだなと思う、ついでに集中が切れたからなのか、だるさを感じ、集中力を保てなくなっている。


「よっしゃー!」そんな私とは違い北原君は元気一杯に叫び声を上げながらモンスターを倒すと、キララ嬢にピースサインを向けていた、キララ嬢はそんな北原君に声援で答えていた。

それを見て三橋さんが満足そうに頷いている、確かに私は後ろに振りかえる事とかなかったし動画映えしなかったのかもしれない。

とはいえ、30近くなった私にはさすがにそういった動きはテレが出てしまってみてる人間もいたたまれなくなるだろう、北原君には感謝である。


「ほれ、嬉しいのはわかるが今日中に北原のレベルも上げたいんだから次行くぞ」

雄兄はキララ嬢の方にアピールしている北原君の首根っこを掴むと引きづるようにしてダンジョンの奥へと歩き出す、首がしまったのか北原君は情けない声を上げながら連れていかれてしまった。


それからしばらく、私の時同様に北原君も雄兄の押さえつけたモンスターを倒す事を繰り返す事2時間ほど私の時と同じように北原君もレベルアップを迎えたようだ、私と同じように手を握ったり開いたりを繰り返した後に首をかしげる。

私と同じように思ったほどの変化を感じなかったようだ。

「お、北原も上がったか、それじゃあ、今日はこの位であがりにするかね」

雄兄は腕時計を見たので、私も時計を確認する、時間は14時半でもう少し働かなければいけない強迫観念のようなに襲われてしまう。そんな私を見た雄兄は頭を掻いて。

「もっと働きゃなきゃいけないと思っているのかもしれないけど、体調管理も仕事のうちだぞ、特に太郎はこの後家まで1時間運転しなきゃいけないんだから慣れてないうち位は余裕のある生活を送るべきだぞ」


確かに事故にあったらレベル1の私では普通に死ぬ、それは政府としては避けてほしいだろう。

「わかりましたおやつがてら何か食べながら休憩をしてから帰る事にします」

「お、それなら俺がいい店紹介しますよ、キララちゃんと三橋さん達もどうっすか?」

「申し訳ないですが、プライベートで異性と一緒にいる所を見られたら困るのでここは辞退させていただきます」

三橋さんが北原君に頭を下げるとキララ嬢と三橋さんは二人で駐車場へと歩いていく。

「俺はこの後自衛隊の基地に戻らないといけない、二人とも気を付けて家に帰るんだぞ、特に太郎は車で移動するんだから気を付けてな」


そう言って雄兄は基地へと帰っていった。

「それじゃあ、北原君、私は帰るけど、どうする、2人でいく?」

「さすがに男2人で喫茶店に入るのはきついんで、案内だけで勘弁してほしいっす」

「確かにそうだね、それじゃあ、案内よろしくね?」

「任せてほしいっす!」



こうして私のダンジョン捜索1日目は終わった思った以上にぬるい感じで終わったのだった。

1歩目に比べて2歩目が遅くなるのは、一歩目は静止状態からのスタート、2歩目は動く中で踏み切る動作だからです

10レベル以降はスキルやジョブ等の影響もあってステータスの合計値が大きくなりすぎて、今まで生きてきた30年の常識が邪魔をして、能力を十全に使いきれていません、そのせいで動きに自分から枷をかけてしまっているので、連続した動作を常識外れの速度で行う事は難しくなっています

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