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魔物解体講座

「北原の意見は面白い意見だと思うが現在それを裏付ける物は一つもない、今はそんな事よりも君達の仕事の話を続けよう。倒したモンスターからは魔石を取らなければいけない、その為に腹を裂かないといけないんだが、二人は動物をさばいたことはあるか?」


雄兄の言葉に私は首を横に振り、北原君も首を横に振る。

私の友達には冬の間に鹿を狩る人間なんかもいるが残念ながら私はそういった経験はない、北海道の田舎者とて皆が皆野生の生き物をさばいた経験があるわけではないのだ。


「うむ、ならまずは俺がさばくから見ていてくれ、ああ、身構える必要はないぞ、モンスターの腹をさばいても血や内臓は出てこないからな」


そう言って雄兄は首のないネズミを仰向けにすると、腰からナイフを抜き、「よく見ておけよ」と言うとその腹を裂いて

「これを見ろ」

そう言って私達を呼ぶ。

呼ばれた私達は雄兄の手元をのぞき込むと、そこには空っぽの中に魔石が浮いたネズミの死体があった。


「なにこれ?」

私が雄兄に尋ねると、全てのモンスターが、このように体内には魔石しか入っておらず、頭の中も空っぽなのだという。

それは人型だろうと、動物型だろうと、昆虫型であろうと同じだと。


「人の常識では測れない生き物だよなぁ、モンスターって、ま、そのうち研究も進んで何かわかるんじゃないかね、今はモンスターの腹をさばいて魔石を手に入れる、それだけ覚えておけばいい」


「魔石以外は取れないんですか?爪とか毛皮とか肉とかモンスター素材の定番じゃないっすか?」

北原君はネズミを見ながら雄兄に問いかける、確かにモンスター素材と言えば定番だよね。

「ああ、さっき池の水を持ち帰らないのかって聞いたな、その答えになるんだがダンジョン内の物を外に持ち出すと消えてしまうんだ」


そう言って雄兄はモンスターの爪と牙を一つずつ持つと。

「百聞は一見に如かず、このまま一度外に出てみようじゃないか」

私達はモンスターの素材を持ったまま一度ダンジョンから外に出た、出入り口から5分程度の所で戦闘をしていた為すぐに外に出る事が出来た。


「ほれ、見てみろ」

雄兄は私達に右手に爪と牙を左手に魔石を乗せた手のひらをこちらに向ける、10秒くらいが経っただろうか。

右手の手のひらの上に載っていた爪と牙はゆっくりと溶けるように消えていったが、左手に乗っていた魔石はそのまま形を残していた。


「これが俺達が魔石だけを持ち帰っている理由だな、一応新しいモンスターが現れるたびに持ち帰れる素材がないか試してはいるがこれだけ一つとして持ち帰ることが出来る素材はなかった、だからこそ、政府は君達に給料を支払っているのだよ」


その結果を見た北原君は心底残念そうに溜息を吐くと、

「残念っす、給料とモンスター素材で大金持ちになれると思ってたのに」

と名残惜しそうに消えていったモンスターの居た所を眺める。


「悪くない給料だと思うが、足りないか?やめるなら今しか受け付けないぞ、レベルが1になったらやめられないからな」

雄兄に言われ

「やめるつもりはないので安心してください」

とすぐに答える。


「これでも推薦してくれた叔父さんの顔を潰すような事をするつもりはないっすよ」

「そうか、それならよかった、それじゃ謎に思っていたことも解決しただろうし、改めてダンジョンに潜るとしようか、太郎のレベルが1に上がるまでは最後尾を頼むよ北原」

その言葉に北原君が頷き、私達は再びダンジョンに足を踏み入れた。


私達は再びダンジョンに足を踏み入れた、先頭の雄兄は何か謎の感覚でモンスターの位置を探っているのか無言でダンジョンを歩く。


私も素人なりに気を張ろうとしたのだが、慣れないことをすると失敗するからやらないほうがいいと雄兄に言われたので、今は何もせずにゆるゆると後をついていくだけにしている。


北原君はキララ嬢の後ろ姿を見れるのがうれしいのか、若干顔の締まりが失われており、それによって自尊心を満たされるキララ嬢は満更でもなさそうだ。


「遠足じゃねえんだぞ……」はぁっと雄兄の溜息が聞こえてきたが私はそれに苦笑を浮かべる事で返事をする。


雄兄の気持ちはわからないでもないが、実際私のこんなところも危機感の薄さからきているのだろうが、人間痛い目を見ないと分からないものだ。


「その為のレベルアップ後の3ケ月の講習期間なんですよね?レベルをあげて傷つきにくくした後に単独でモンスターと戦い痛みで危機感を養うんだよね?」

「そういう事だな、それまでは仕方ないというのはわかっているんだがなぁ」

実際最前線で命がけで戦っている人間からすれば歯がゆいのだろう。


「雄兄、私のレベルアップにはどのくらいかかりそう?」

さっき1匹ネズミを倒した時には残念ながらレベルは上がらなかった、一応経験値の入手には法則があり、困難であればあるほどモンスターの討伐後にレベルアップまでに必要なモンスター討伐数は減る傾向にあるそうだ。

目に見えないけどゲーム的な経験値のようなステータスがあるのではないかと現在検証が行われているが、詳しい計算式等はまだわかってはいないし、今後解明される見込みも薄いだろう。


「まぁ、時間はかかるだろうけど、午前中には二人ともレベルが1にはなるだろう、今日中に2は難しいと思うから、今日は二人ともレベル1になったところで上がりだな」

「随分ホワイトな日程みたいだけどそれでいいの?」

「これから退職までダンジョンに潜るんだから最初から無理する必要はない、というか一生無理する必要はないぞ怪我せずマイペースでやればいいぞ」

そう言って私の顔を見て雄兄は

「お前たちは冒険者じゃなくて、公務員でしかないんだからな」

と今日何度目になるかわからない念押しをするのだった。





わざわざ武器として剣を使った理由は、モンスターを倒す方法は2通りで

1、頭を破壊するor切り落とす

人の目には見えませんが頭にはモンスターを動かす回路が入っているので頭と胴体が離れるとモンスターは動かなくなります


2、広く深い傷をつける

傷をつけられるとそこから魔力が漏れ出て体内の魔力がなくなると動かなくなります

槍だと、広い傷をつけるのには向かず、広く傷つけようとすると浅くなる

斧でもいいけど、普段斧を使うイメージを持ちにくいですし、剣術スキルは小さな刀包丁や、モンスターから魔石を取るときに使う解体用のナイフでも効果が発動するので、わざわざ斧を選ぶ必要性が少ないという理由で剣術が選ばれやすいです

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