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武器防具は装備しないと意味がないぞ!

「しんど……」

ダンジョンに入った北原君が放った第一声はそれだったが、全員がそれに賛成した。


私達はダンジョンに入るためにデモ隊が騒いでる横を通り抜けなくてはいけなかった、周囲にいる自衛隊員も私達がダンジョンに入るのを手助けしてくれたが、それでも民間人を無理やりどうにかすることができない自衛隊はどうしても弱腰の対応になり、それを知っているマスコミやデモ隊の人間は私達に突撃してきたのだ。


「私達は入れないのに、貴方達だけは入れる不平等をどう思いますかだの、お前みたいな若造ではなく儂のような優れた人間を入れるべきだの、今までテレビでマスコミの取材に対応しない芸能人を批判的な目で見てたけど、今日一日で見方が変わったわ……人間実際に体験してみないと分からないものだな」


北原君がダンジョン入ってすぐに座り込んでしまったため私達も苦笑しながらそれを見守る。

「マスコミと呼ばれる人達が全員ああいう人間ではないですよ、そこだけは勘違いしないでくださいね」

立場的には彼等に近いだろう三橋さんが北原君にそんな言葉をかける。


キララ嬢はキララ嬢で

「アイドルである自分に声をかけないなんてどういうつもりなのよ」

と不満を漏らしていた。

そのまま5分ほどだろうかダンジョンの入り口で過ごすと、パンパンと雄兄が手を叩いて全員の注目を集める。


「はいはい、遠足気分はここまでだ、切り替えろよ、太郎、和樹、ちゃんと国から送られてきた装備はもってきただろうな」


雄兄に視線を向けられたので私は頷いて肩にかけていたカバンを下ろしその中から送られた荷物に入っていた装備を取り出す。


「小剣に両手につける厚手の皮のグローブ、頭を保護するヘルメットに水筒、非常食数食分だね」

剣は刃渡り50cmほどで厚みのある刃だ、包丁のように引いて斬るというよりは、体重をかけてかち割る為の物といった印象を受ける。


グローブは野球などで使う薄いバッティンググローブではなく頑丈なグローブだ、慣れるまでは剣の握りが甘くなってすっぽ抜ける事に注意しないといけないだろう。後握るだけで握力を消費しそうだから、筋肉痛にもなりそう。


ヘルメットはバイク用のようなかっこいいデザインではなく、作業員がつけているタイプの白いヘルメットだ。

水筒には実家で麦茶を入れてきているし、保存食はミリ飯という物なのだろう、意外においしそうだ、横を見れば北原君も同じようにカバンから自分用の装備を取り出している。


「このダンジョンの1階に出るのは大型のネズミだ、最初は俺が捕まえるから二人はそれにとどめを刺してくれ、恐らく2,3匹も倒せばレベルが1に上昇するはず、今日からしばらくは俺が敵を捕まえて二人が倒すという方法でレベルをあげながら5階を目指すぞ」

雄兄がそう言うと北原君が手を挙げて発言の許可を求める、何故か

「サー、いいですか?サー!」

と言いながらだ、この青年、ノリノリである。


「サーじゃないが、なんだ?」

雄兄が苦笑すると、北原君は

「それはネトゲでいうパワーレベリングになるのであまりよくないのではないでしょうか?」と言う。


確かにレベルだけ上がって技術の追いつかない狩り方だなぁと私も思ってはいた為雄兄の言葉を待つと

「じゃあ、適正レベルでモンスターと戦ってみるか?言っておくが攻撃を食らったら相当痛いぞ、それだけじゃなくて、攻撃をするときにも分厚いタイヤを叩くような反動が返ってくるがそれでもいいのか?」


雄兄によると、適正レベルで敵と戦うとき、注意するのは攻撃を受ける事よりも攻撃をするときだという。

適正レベルでモンスターを攻撃当てた時に自分に返ってくる反動は重く、野球をやったことがある人ならわかるかもしれないが、バットで古タイヤにフルスイングするくらいの反動が返ってくるらしい。

しかも変な当たり方をしたらその衝撃は増加し、手の骨にひびがはいることもあるらしい。


「いいか、君達はダンジョンの下層を目指す訳じゃない、地上に近い魔物を倒すのが仕事なんだ、そのついでに魔石を持ち帰る、つまり過剰な戦闘技術を手に入れる必要はないと国は判断しているのだよ」


魔石は現在魔工学というスキルを利用して様々な用途で使われる、その時に使用する魔石を手に入れるのが私達の主な仕事であり、給料の種である。


自衛隊はダンジョンの最奥を目指し、ダンジョンの謎の解明を行い、その間自衛隊員が倒さない上層のモンスターを倒すのが私達。

無理せずに安全に数を狩ってほしい、それが政府の私達に求める役割だ。


「私は痛いのは嫌なので隊長のやり方に賛成だよ、技術を得るだけならレベルを上げてスキルを手に入れてからでも手に入れられる、命がけで戦った方が技術は磨かれるのかもしれないけど……」


別に私は世界を救う英雄だとかではないのだ、ただ毎日作業的にモンスターを倒して魔石を手に入れられればそれでいい、そう言うと北原君はひどく不満そうな顔をしていた。若いなぁ、おじさんにはもうそんな情熱はないよ。


「……わかりました、俺もそれでいいです」

数秒悩んではいたようだが最終的には北原君も雄兄の意見を受け入れる。わかる!私も後10年、いや3年若ければダンジョンに潜るんだから英雄みたいな活躍をしたいと考えていただろうからね!


「話はまとまったな、それじゃあ俺が先頭を歩くからまずは俺の後ろに太郎、最後尾には北原その間に民間人の二人を挟むように歩くぞ、太郎のレベルが上がったら太郎と北原の隊列を入れ替えて北原のレベルをあげる、その後は今日一日そのまま2列目に北原、最後尾に太郎で一日を過ごす、意見は?」


私はすぐに首を縦に振ったが、北原君は少し考えているようだ、確かに一日見るならおっさんの背中から尻のラインよりもアイドルの方がいいだろう、なので私は北原君に近づくと声を小さくして。


「キララ嬢にいいところを見せるチャンスだよ、かっこよくモンスターを倒す姿を見せ続ければキララ嬢の好感度を稼ぐことが出来るかもしれない」

とこっそりと呟くと、鼻息荒く首を縦に振った。


キララ嬢とマネージャーの三橋さんには聞こえなかったようだが、雄兄には聞こえていたようで、北原君を見る目が残念な子を見る目になっていた。


攻撃した時の反動って意外に馬鹿にならないと思うんですよね、というわけでわざわざパワーレベリングする理由として使いました


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