ダンジョン32話
「尻尾があるんですね……」
そう呟いたのはエリカ嬢だ、これもまた情報として与えられていなかったらしい。
「そうなんですよ、例えモンスターから特定部位を切り離しても、〈解体〉では入手可能になります、それから雄兄」
私が雄兄に声をかけると、雄兄は切り落とされていたネズミの尻尾をもってダンジョンの外へと走る。
「青木様は何を?」
突然の雄兄の行動にセバスさんが尋ねてくるが、私がそれに答えるよりも先に手渡されていた、トランシーバーに雄兄の声が入る。
「おう、ネズミの尻尾は消えたぞ、そっちはどうだ?」
そう雄兄はネズミの尻尾をもってダンジョンの外まで走っていたのだ、〈解体〉スキルを使っていない為、ダンジョン外に持ち出せばネズミの尻尾は消える。
それでも私の〈解体〉の対象には、『尻尾』が残っていた。
それを見て、エリカ嬢は彩音嬢に話しかける。
「断言はできませんが〈解体〉のスキルはモンスターからアイテムを取っているのではない。ということでしょうか?」
エリカ嬢の言葉に彩音嬢がわからないと首を横に振る。
「わからないね、ダンジョンについてわからないことがまた一つ増えたね……」
ただこの情報を得たことでいいこともある、それはどれだけ戦闘でモンスターを破壊してもアイテムはもらえるということだ。
これは大きい情報な気がする、今後戦うモンスターの中に特定部位が欲しいモンスターがいたとしてもその部位に気をつかうことなく戦う事ができるというわけだから戦闘の幅が広がると思う。
「そういえば、果樹から果実を取った時は果実以外にも取れたのですか?」
「そういえば確認していないね」
彩音嬢とエリカ嬢がこちらに質問してくるが、答えは果実以外は取れないだ。
ダンジョン内のうちいくつかは触れても〈解体〉の効果が発揮しないものがある、その中の一つが果樹だ。
他にもダンジョンの壁や階段などがスキル対象にならない。
なんでもかんでも〈解体〉できるわけではないのだ。
「なるほど、ゲーム的に表現するなら破壊不可オブジェクトはスキルの対象にならないということですか」
彩音嬢の言葉に私は同じ意見だと頷く。
そんな会話をしているうちに雄兄が戻ってきて僕達に合流した。
「で、3人の中で仮説はできたのか?できたなら、先に進むぞ」
雄兄の言葉に私達は頷き、先に進むことにした。
途中何匹かのネズミを倒して〈解体〉のスキルを使ったが、特に変わったことはなく、無事に2階層、ウサギの下へと到達する。
「それではネズミの時と同じようにお願いします、青木様」
エリカ嬢の言葉に雄兄は頷き、再び先を歩く、私はそんな雄兄を追いながら隣を歩く彩音嬢に疑問に思っていたことを質問する。
「そういえば、彩音嬢は何故そんなに前髪を伸ばしているんだい?ダンジョン探索で不便じゃないのかい?」
私の言葉に彩音嬢は、うぅっと呻いた後に髪をかきあげて
「魔眼っていうスキルを取得したせいでこんなことに」
そう言った彩音嬢の目は左右の色が違った、左目が元々の色であろう茶色っぽい黒に対して、右目は青かったのだ。
「まさかこんなことになるとは思わずに、勘違いしてほしくないのだけど、別に目を合わせる事でなにか影響が出るという事はないよ、ただ、オッドアイってファンタジーならともかく現実だとね……」
だから目を隠すために前髪を伸ばしたのだという。
「別にゲームやマンガみたいに前髪を伸ばしてるからって、内気だったりしないのでそっちは期待しないでね」
そういって、ニヒヒと笑う彩音嬢に私は苦笑する。
「おう太郎、女の子と楽しく話してるところ悪いがこいつを頼むわ」
ニヤニヤと笑いながら、雄兄が倒したウサギを私へと渡す。
私達との合流を待つよりも一人で駆け回った方が早いということに気付いてしまったようだ。
「雄兄、そういう言い方はあまりよくないよ、人によってはセクハラで訴えられるかもしれない」
私は雄兄からウサギを受け取り、〈解体〉を発動させる。
『魔石』『肉』『爪』の3種類がノートパソコンに表示され、
「3種類ですか?」
セバスさんが表示された数を見て尋ねてくる、そう、ネズミと違ってウサギは3種類しかアイテムを取ることができないのだ。
これは私と雄兄が万単位でウサギを虐殺してそれでも3種類しか表示されなかったので、おそらくモンスター毎に入手可能アイテムの数は違うのではないかと思われる。
「特定の部位を破壊したら増えたりとかはないんですか?」
「それも試したが、だめだった、頭、足、尻尾、爪、牙これだけ破壊しても部位は増えなかったんだよ」
エリカ嬢の言葉に雄兄が答える。
そう、私達も色々と試したのだ、だがそれでも増えなかった。
「ウサギは多分、俺と太郎で1万くらいは倒したと思うが、それでも4枠目のアイテムを見ることが出来なかったんだ、だからウサギはアイテム3枠までしかないと思いたい」
そう、私と時々雄兄の2人で結局1万体近いウサギを虐殺し、結局幻の4枠目を見ることができなかった。
なので、物欲センサーではなく、存在したいのだと、そう思い込みたかった。
『うさぎの尻尾』
「「うっそだろお前……」」
私と雄兄はその場に膝をついて天を仰いだ。
3階層に向かう途中、彩音嬢が倒した最初のウサギから出たアイテムがこれだった。(これ以降は一つも出なかった)
私と雄兄が物欲センサーに勝てなかったとか、そんなことはどうでもいいのだ。
「これは、もしやネズミにもレアなアイテムが存在するのでしょうか、いえ、ネズミだけではなく全てのモンスターに存在するのでしょうか?」
そうセバスさんが言った通りだ、もしかしたら全てのモンスターがレアなアイテムを持っているとしたら。
いや、それどころか、私達は4枠までしかアイテム枠がないと思っていたが、実は5枠6枠…とあり、その全てがレアアイテムだったら。
「あっあっあっ……」
私は一体どれだけの数のモンスターに〈解体〉を使わなければいけないのだろうか……
「お、落ち着いて、太郎さん、政府も貴方一人に全てのモンスターのアイテムを判明させろとは言わないから」
彩音嬢が私の肩を掴んで揺さぶる、考えてみてほしい、ネトゲでドロップテーブルが判明していないモンスターのドロップテーブルを完全解明するまで帰ってくるなと言われたら……
「悪魔の証明じゃないか!」
書き直してあげます、今後はこちらの小説で更新を続けます、よろしくお願いします
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