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ダンジョン31話

「佐久間さん、少し聞いてほしいことがあるのですが」

私がセバスさんと話をしている間に、エリカ嬢と、彩音嬢の間でも何か話をしていたようで、二人でこちらに向かってくる。


「解体スキルについてボク達なりに予想を立ててみたので、これから佐久間さんに協力してもらって検証をして行きたいのですが、いいですか?」

彩音嬢もエリカ嬢に続いてやってくる、どうやら私がセバスさんと話をしている間に彩音嬢とエリカ嬢はスキルについて仮説を立てていたようだ。

私は二人に向かって頷くと、彩音嬢が言葉を続ける。


「まず、私達はこのダンジョンを大きな冷凍庫だと仮説しました。そしてダンジョン内のモンスターを氷等の溶けやすいものだと想定しています」

「ですから、ダンジョンからモンスターの素材等を持ち出した場合、溶けて消えてしまうそう仮定しました」

彩音嬢の言葉にエリカ嬢が続ける。


「ですが、〈解体〉を使った場合に限り持ち出せる。ということは〈解体〉を使ったアイテムはクーラーボックスに入れられたような状態になるのではないでしょうか?」

「クーラーボックスに入れられている間は溶けないからダンジョン外でもその形を維持できている」


なるほど、一理ある、だがそれと料理をすることができないことにどのような関係があるのだろうか?


「〈調理〉を使わずにモンスターの肉等を切った場合、その切り口から魔力が失われていく、けれど〈調理〉を使った場合、その断面をスキルの力で覆うことができて魔力は漏れることなく保持される」

「この場合は、クーラーボックスよりも、サランラップ等をイメージした方がいいかもしれませんね、〈調理〉を使わなかった場合は、ラップを剥がしてから切るので外気に晒されて魔力が奪われていく、〈調理〉持ちの場合はラップを剥がさずに、切った断面もコーティングされるので魔力が奪われない」


だから〈調理〉持ちが切れば魔力を失われずに普通の食材として扱えるということだろう。


「では、木になっている果実にそのまま齧りつけばおいしく食べられるのでしょうか?」

セバスさんの言葉に、2人の女性は、ハッとした表情を浮かべる、確かに私も気づかなかった。


「水を飲んで美味しいのはそれと同じで、一切調理していないからなのかな?」

私の言葉に全員が頷く、だがそうなると疑問も残る。


「水は持ち出したら消えるのに、果実等は持ち出しても消えないのは何故でしょうか?」

私の言葉に二人は少しだけ難しい顔をした後に、彩音嬢が断言できる情報はないのですがと前置きしたとに

「ダンジョンから生まれるものには2種類の魔力があるのではないでしょうか?モンスターが倒された後、魔力はなくなっているはずなのに〈解体〉を受け付けるように、解体スキルでは見ることができない、動くために必要な魔力とは違う、第2の魔力が存在し、それが水や素材になる爪などに比べて果樹等には大量に含まれている」

「だから水やモンスターの爪等は簡単に消えていきますが、肉等は時間をかけて消えていく、断言はできませんけどね……」


結局断言できるだけの情報がない以上予想でしかないという話だ、ただ、だからこそ

「「「面白い……まだ誰も知らない情報を他の誰よりも早く検証し、仮説を立てることができる」」」

僕と、彩音嬢、エリカ嬢の3人は声を揃えて言う、ああ、面白くなってきた。


まだ誰も踏み込んだことのない未知の情報を私達が踏み重ねていく、恐らく私が生きているうちには正解が解き明かされることはないだろう。


つまり私は死ぬまでに一定の説得力のある仮説を立てれば、それを真実だと思い込んで死ぬことができるだろう。


後世覆されても私が知ることはない、それは私のような人間にとって、とても幸せなことだ。

そんな私達3人の言葉に、雄兄は呆れたような表情を浮かべ、セバスさんはいつもより表情が硬い気がする。

「こうしてはいられませんは、佐久間さん、彩音、急いで休憩地点に行って果実に噛みつかなくてはいけません、それで美味しいのでしたら、さらに二口目も食べて実験してみなくてはいけません!」


私達がこうしてはいられないと足を踏み出そうとしたときに、セバスさんがぽつりと言う。

「もし、一口目で魔力が無くなれば二口目は酷い味のものを食べる事になると思うのですが?」


セバスさんの言葉は私達の足を止めるには十分な破壊力を持っていた。

「果実の実験は後日にしましょう……」

「そうですね、急いで実験しなくてはいけないことではないですから……」

私達はあの味を思い出し動きを止める、一日に二度も三度もあの味を体験したいわけがない。


「それでは次の実験に移りましょう、セバス、ネズミを見つけてください」

「それには及ばない俺が見つけている、ここを直進して一本目の交差する道を右だ」

セバスさんが、走り去ろうとした時、雄兄がモンスターのいる場所を告げる、雄兄の言葉にセバスさんは礼をいい、エリカ嬢は頭をぺこりと下げる。


雄兄の指示通りに少し歩いたところにネズミが一匹いた。

それを見たエリカ嬢は全員の動きを止めると、次の実験について話し始める。

「次はネズミを普通に倒してください、その後に〈解体〉で取得できる部位を確認した後、次のネズミは取得可能部位の一部を破壊してから倒します」

私が何かを言おうとすると、彩音嬢が後ろから口を塞いでくる。


そんな私を気にせずにエリカ嬢は話を続ける。

「私達はモンスターから得られるアイテムは倒した相手から奪っていると思っていました、ですからモンスターの取得可能部位を破壊した場合、その部位は〈解体〉で取得できなくなるはずです」


私は頷が頷くと、エリカ嬢はそのまま話を続ける。

「ですがもしかしたらモンスターというのはものが記号でしかない場合、この仮説は覆ります」

「モンスターがゲーム屋さんにおいてあるゲームの空の箱だとしたら、箱の状態がどれだけ悪くても、中身のゲームディスクは傷がないものを購入できるよね?」


つまり、四肢を切断したものと、綺麗に首を刎ねたもので〈解体〉で選択できる部位に違いがないかを検証したいと

「普通に考えればないと思いますけどね、今までずっと普通じゃないことばかりだったのだから、可能性が思いつく限りやってみないとね」

彩音嬢がそういうので私が返事をしようとした所に雄兄がやってきて


「おう、太郎ネズミ倒したからさっさと解体してくれ」

私が彩音嬢と話している間に雄兄はネズミを倒してくれていたようだ、しかたなく私は倒したネズミに触れる。


表示されるのは『魔石』『肉』『爪』『尻尾』の四種類だ。

一応、『魔石』と『尻尾』を選んで手に入れると、ネズミの死体は消えていった


「では青木様、次のネズミでは尻尾を切り落としてから倒してもらえますか?」

雄兄の方を見て、エリカ嬢がそういうと、雄兄は一つ頷き、次のネズミを探しに行く。

私達は少し遅れてそれに続き、3分くらい歩くと、次のネズミが見つかった。


「それでは青木様、お願いします」

「あいよ」

エリカ嬢にそう言われて雄兄はネズミの方にかけより、軽く一声答えると、ネズミの尻尾、頭の順番に切り落とす。


「ほれ、太郎」

雄兄が動かなくなったネズミをこちらに放り投げてくるので私はあわてて受け取って〈解体〉のスキルを使用すると

『魔石』『肉』『爪』『尻尾』


私は全員にMP3プレイヤーを見せる、そこには切り落とされたはずの尻尾が解体可能部位に表示されていたのだった。



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