ダンジョン24話
時間が過ぎるのは早いもので、気づけば私がダンジョンに潜り始めて4ケ月が過ぎていた。
ウサギを狩り始めて2ケ月が過ぎ、私達は5階層のモンスターを単独で狩る事が出来るようになり、来週からはそれぞれ単独でダンジョンに潜る事になる予定だ。
「しばらくは2階3階をメインかな、1階は通るときに倒せばいいだろうし」
私達がダンジョンに潜ってモンスターを間引きするのは、一つの階層にいるモンスターが多くなりすぎると、モンスター同士が合体してユニークモンスターになるという噂があるからだ。
このユニークモンスターはダンジョンの外に持ち出す事ができ、長時間暴れまわる……らしい。
断言できないのは、この情報がアメリカから回ってきた不確定情報で、日本では少なくともその存在が確認されていないからだ。ではその情報元のアメリカはどこから情報を持ってきたのか?と言うと、なんでも元中国の中の一つの集団がアメリカと同盟関係にあり、その集団と敵対している集団が、モンスターをダンジョン外に運び出し、そのモンスターを使って村を襲ったという報告があったかららしい。
うん、怪しい!
もちろん雄兄も国も怪しんでいるが、それでも私達のような探索者という集団を作るのに便利な理由だからという事で真偽を確かめずに利用したらしい。
探索者は公務員なので、給料は税金から支払われるが、民営化するべきではないかと言う意見が出ているのだ。
そんな意見を抑える為に、誰かが定期的にダンジョン内のモンスターを間引きしなければいけない、その為の探索者である!という風に理由付けとして使ったのだ。
たった4ヶ月でこれまで自分とは関係のなかった世界に触れすぎたせいで少し精神的に参っている部分はあるが、それでも世界が変わってしまった以上仕方ない、なるべく頑張らずにそこそこの生活ができるようこの仕事は私にとってあっているのだと思おう、不満ばかりを挙げてもどうしようもないのだから……
*****???*****
一人の人型が大きな樹を眺めている、男とも女とも青年とも、老婆とも見る事が出来るそれは、目の前にある巨大な樹になる2つの果実を眺めていた。
その2つの果実には七色に輝く鎖が刺さり、お互いを支えあう様に繋がっていた。
「やぁ、***、EZ60318とEZ43092の様子はどうだい?」
そんな人型の下に別の人型が背中から声をかける、この人型も人の形をしているという事がかろうじてわかるだけの存在だった。
「やぁ◇◇◇、やっと安定したようだよ、まったく驚いたよ、まさか何の前触れもなくあんなことになるだなんて」
***と呼ばれた人型はアンカーが刺さった2つの果実のうち一つに視線を向ける。
「混乱は起こらなかったのかい?それとEZ43092の反応は?」
「混乱はもちろん起きたさ、ホルダー達が現政府に対して反旗を翻し、何万、何十万という人間が死んだよ、けれど幸い滅ぶことはなかったからね、少しすればまた元に戻るよ、それからEZ43092は巫女に話を通してあるから心配ないさ」
「そうか、それはよかった、しかし、ホルダー達がホールを降っているという話もある、いいのか?放っておいて?」
「それで滅ぶなら、それもまた彼等の運命さ、私達は彼等にとって都合のいい奇跡をいくつも起こした、それでも滅ぶというのなら、それが彼等の種の運命だったんだ」
「そうか……せめてあの作品が完結するまでは生きてほしいものだ」
「いやー、それは無理じゃないかと思うなぁ、私としてもあれの新作が発売されるまでは生き延びてほしいけど、そもそも開発が続けられるかも微妙だし」
二人は、顔を見合わせた後に、深く溜息を吐いた後に、それぞれの仕事に戻るのだった。
*****???*****
巨大な城の一室、その中でも特に豪華な部屋に一人の男が居た。
男は豪華なマントを身に着け、その下に竜の革で作られた特製のシャツを身に着けている。
「して、巫女よ、改めて問おう、我等が渡る事を巫女は決して認めない、そういう事であるな?」
巫女と呼ばれた幼い少女は赤い目で男〈王〉を見つめながら、こくりと頷く。
王は巫女を見つめ、巫女は王を見つめる、僅かな時間見つめあった後に、先に折れたのは王たる男であった。
「わかった、我等王国は決して国内の穴に近づくことはしない、また封印に関しても全面的に協力すると約束しよう」
王の言葉に巫女は頷く事で返事をすると、そのまま溶けるように消えていった。
「……追いましょうか?」
「やめておけ、俺は無駄に優秀な人材を殺す暗君ではない」
「……私では巫女には勝てませぬか?」
「あれに勝てる人間などいないよ、巫女という名は伊達ではないのだ」
自分の部下が不機嫌な態度を隠さない事に王は満足げに笑みを浮かべた後に、本来の仕事に戻るのだった。
今後、この作品の大まかな予定を活動報告で書いてますので、興味がある方は読んでもらえると嬉しいです