ダンジョン22話
時間が一気に飛びます
言い訳させてください、作者の中ではこのダンジョンの上層の話はプロローグでぱぱっと飛ばす予定だったんです、でもなんか全然進まなかったんです!
という事で、この辺は大胆にカットしていきます、すいません
初めてのスキルを取得してからの日々は正直あまり覚えていない。
と言うのもあの日を境に仕事中の空気が大きく変わり、胃が痛い毎日に変わったからだ。
まず一番大きく変わったのは北原君だろう、彼はキララ嬢の為に魔法スキルを取得したわけだが、そのせいで、センスのあまりいいとは言えない腕輪をつける事を強制されてしまった。
雄兄曰く、事前に相談を受けた際にちゃんと説明をしたが、アイドルのお願いにやられてしまった彼はすっかり出来上がっており、話半分に聞いていたらしい、いつか女に騙されてツボを買わされるんじゃないだろうかとひそかに思っていた私としてはあまり驚きはない。
そんな北原君だが、最初はキララ嬢に言われるままに派手な魔法を使っていたが、それが毎日となると負担になる。
魔法スキルは非常に便利だ、魔法の形や威力、消費する気力のような物を全てその都度自由に決められる。
しかし、魔法を派手にするというのは基本的に無駄な行為だ、敵を倒すだけなら、炎で鳥を形作ったりする必要はなく、矢じりの形にするとか、ただの玉として飛ばした方が効率がいいのだ。
北原君が頑張っても中々キララ嬢の動画の順位は上がらない、だから更に派手な魔法を北原君にねだる、北原君は更に無駄な魔法を使うの悪循環だった。
その無駄は確実に北原君の精神的な負担となっており、北原君とキララ嬢の仲は確実に悪くなっていった。
私と雄兄はそんな二人に最初こそ二人の仲の仲裁等を頑張ったのだが、結局実を結ぶことはなかった。
元々雄兄の仕事は僕達のレベルを10に上げる事であってアイドルのランキング稼ぎは二の次であるし、私は元々人付き合いが得意な人間ではなく、二人の仲裁で精神を使った結果、胃が荒れて、5キロ痩せたのだ。
まぁ、元々太りすぎだった為全てが精神的な苦痛による減量ではないのだけど、それでも食欲が落ちたのだから精神的に参っていたはずだ、うん。
三橋さんは私達に助けを求めるような視線を向けてくることがあるが、諦めたようで存在感を極力薄くしてカメラを回すだけの存在に自発的になっていた。
そんな中、私達は3階のバッタ、4階のカタツムリを攻略し、5階の野犬を攻略開始、ここで雄兄が懸念していた事が起きる。
ダンジョンの潜る階層が深くなりすぎてキララ嬢と三橋さんの移動にかかる時間と負担が大きく増えたのだ。
ダンジョンを5階まで降りると書くと、大した距離じゃなさそうに思えるが、実際には階段から階段までにそれなりの距離がある、1階層直線距離で2キロでも、5階まで降りるには10キロとなるのだ。
実はこれ、自衛隊のダンジョン攻略部隊があまり深い階層まで降りられていない理由だったりする。
現在自衛隊の攻略している最深階層は23階である。
深い階層でも安全地帯があるとはいえ、ダンジョン内で1週間も2週間も過ごすのは厳しい。
その為、現在自衛隊では、月曜日に潜って、金曜日に戻ってくるというスケジュールを取っており、行きに1日、帰りに1日でレベル上げに費やせる時間は3日しかないのだ。
また、これは例によって雄兄が酒を飲みながら私にぽろっとこぼした話なのだが、アメリカの精鋭チームが30階層に到達したところ、大きな扉があり、中には今までのどのモンスターよりも強力なモンスターがいたらしい。
幸いな事に部屋に入ったら倒すまで出られないデスマッチ形式ではなく、いつでも逃げる事が出来た為に、数人の犠牲者を出したものの情報の持ち帰りができたのだ。
それもあって、現在日本ではレベル上げと、レベルを上げた事によって得た身体能力を使いこなせるようになるための訓練等で足止め状態らしい。
話がそれたが、キララ嬢と三橋さんが足を引っ張っていてダンジョンの移動に時間がかかりすぎる事を嫌った雄兄は、三橋さんに相談し、少し早いが随伴するのをやめてはどうか?とキララ嬢を含めて相談した。
これは雄兄なりにキララ嬢を考えての事である、毎日、往復20キロ以上を移動する生活を送れば、足に筋肉が付いて太く見えるのではないか?と今後のアイドル活動を考慮しての提案でもあった。
実際に、何人かのアイドルは既に動画の配信を終了し、アイドルとしてのレッスンに戻っていた。
それでもキララ嬢は首を縦に振らなかった、上位陣が動画の配信をやめた今が好機であり、自分の知名度を上げる為にはやめられないと言ったのだ。
そんなこんなでキララ嬢のわがままで余分な時間がかかり、それに肉体と精神的な疲労から不満を持った北原君のイライラで悪くなる職場の空気に、私は何も考えずにただ淡々と仕事をすることを選んだのだ。
そしておよそ、初めてのスキルを得てから1ケ月後、私はレベル10になり、2つ目のスキル剣術を取得した、残念ながら、〈解体〉と〈剣術〉ではジョブが発現する組み合わせではなかったようで、ジョブを得る事は出来なかった。
それから2日後に北原君もレベル10になり、〈金魔術〉を取得し、〈火魔術〉と〈金魔術〉でジョブ【相克士】を取得した。
その翌日これを見届けるように、キララ嬢も東京に帰り本格的なレッスンを開始したのだ。
そして北原君がジョブを取得した翌日の土曜日に、私は雄兄に誘われて地元の焼き肉屋にいた。
「いやー、これで北原もレベル10になった事で一段落だな」
そう言って雄兄はジョッキに注がれたビールを喉を鳴らしながら一気に飲み干す。
私はと言うと、焼き肉には白米派の為、ウーロン茶を片手に肉をひたすら食べていた。
「まぁ、確かにキララ嬢がいなくなったのは雄兄としては気分的には楽なのかもね、私は来週から、雄兄の手助け無しで一人で戦うのがちょっと不安だけど」
レベルが10に上がり、私達はこれから自分一人でモンスターと戦わなければいけなくなった、1階のネズミを一人で倒し、2階、3階……と下層に降りていく。
北原君とペアを組んでもいいのだが、レベル上げの最中に色々とあって私達は残念ながら週1くらいならともかく、毎日ペアを組んで仕事をするのは難しいという結論に至っていた。
「ま、大丈夫だろ、今のお前ならネズミの前歯で噛まれようが、バッタに蹴られようが、野犬に噛みつかれようが、傷にならんよ」
ダンジョンの5階までをクリアした結果、私の皮膚はモンスターの犬に噛まれても傷一つ付かないようになったらしい、ついでに言うと日本の警察が使う程度の銃なら、撃たれても痛いで済む程度の耐久力も手に入れているらしい。
らしいというのは、雄兄に
「試しに撃たれてみるか?」
と言われたが断ったからだ。
なぜ、好き好んで銃で撃たれなければいけないのか、これがわからない。
「そういえば、政府が民間人のダンジョン入場許可者、所謂冒険者の募集を考え始めたらしいぜ」
ぽろっと、まるで明日の天気は晴れだくらいの気軽さで、とんでもない事を言い出す、私、そんなニュースを見た覚え無いんだけど、後冒険者じゃなくて、探索者じゃないのだろうか?
「そりゃあ、まだ検討段階だからな、問題となってるのは、魔石を誰が買い取るからしい、政府としては買い取っても使い道の薄い弱い魔物の魔石を税金で買い取りたくない、かといって民間企業では使い道がない、だけどこのままダンジョンを政府が管理し続ければいつか、馬鹿共が暴走を始めるのは目に見えている、その辺を上手く調整するまでは募集が出来ないからな、後民間人と公人で分ける為に、民間人は冒険者って呼ぶ方針らしいぜ」
現在、ダンジョンに入れろと言っている人間は実はそんなに多くない、何故ならダンジョンから魔石以外のアイテムを持ち出せない事を一般に公開しているからだ。
ゲームやマンガの様に、ダンジョンに潜ってドロップ品でお金を稼ぐという事は出来ないと発表した事で今の職からの転職を考えていた人間はダンジョンに入ろうとするのをやめた。
それでもなお、入りたいというのは、政府の言う事を信じない人間達である。
政府が嘘を吐いていて、自分達が資源を独占する為に真実を隠しているとか騒いでいる人間は一定の数いて、彼等は今でもダンジョンに潜らせろと叫んでいる。
「現実を見せる為に日本各地で自衛隊の監視の下、ダンジョンに潜る一般人を募集するっていう話もあるらしいな、ま、今すぐどうこうなるっていう話でもないが、もしかしたらお前にも手伝ってもらうかもしれないから覚えておいてくれ」
そう言って、ビールを上手そうに飲む雄兄を見て、私は今日聞いたことを忘れる為にビールを頼むのだった。
主人公が何気なく食べていた焼き肉ですが、主人公の住んでいる地域が海沿いの田舎町で、魚も畜産もしているから気軽に食べられるものです
また、キララが東京に移動するのに使った手段は飛行機です
金や権力がある人間と言うのは贅沢をしたがるもので、主人公の地元周辺でとれる海の幸を週1程度の頻度で東京に送る為に飛行機が飛んでいます(トラック→船だと鮮度落ちちゃうからね)
その飛行機に乗って帰ったと思ってください




