ダンジョン21話
「まじっすか、俺が1日半もかかったのを半日で上げちまったんすか……すごいっすね」
「まぁ、地獄のようなパワーレベリングだったけどね、私としてはゆっくり時間をかけてレベルを上げたかったよ」
休憩地点で待っていた北原君達と合流した後、私のレベルが半日で上がった事を聞いた北原君は少し妬ましそうな表情を浮かべるが、それに対して私は、心の底から疲れた表情を浮かべる事で反応する。
私の態度が気に食わなかったのか北原君がイラっとした顔を浮かべるが、残念ながら今の私に取り繕う余裕はない、申し訳ないと思うが疲れ切っているのだ。
「さて、今日はこの辺でかえんぞー、それと北原、これをつけておけ」
雄兄はパンパンと手を叩き視線を集めた後に、北原君に腕輪を放り投げる。
「隊長これは?」
北原君が受け取った腕輪を手で弄びながら雄兄に尋ねる、見た目は武骨な感じで決しておしゃれな作りではない、北原君みたいな人間からすれば出来ればつけたくない見た目なのではないだろうか?
「そいつはダンジョン以外での魔法を封じる腕輪だ、ダンジョン内では今まで通り魔法が使えるから常につけておけよ、それを外すと場合によっては捕まる事になるからな」
「えーっと、そんなことを言っていたような聞いてないような、これつけないとだめっすか?街中で魔法なんて使わないっすよ?信じてないんすか?」
そう言って嫌そうな顔を雄兄に見せる、彼のファッションセンスには合わなかったのだろう。
「勘違いするなよ、俺はお前の事を信じていないわけではない、だがそれはあくまで俺と、そしてお前を推薦した森さんは、という話だ、お前とほとんど接したことがない人間にお前の事を無条件で信じろなんて言っても無理な事はお前にだって分かるだろうが?」
そう言われて北原君は、うっと言葉に詰まる、残念ながら北原君は僕同様に世間から見て尊敬される人生を送ってきたとは言い辛い、むしろ履歴だけを見れば落ちこぼれのレッテルを貼られそうな人間である。
「お前が魔法を使えるという事は公表しなければいけない、これはお前だけじゃなくて太郎もそうだ、レベルを上げた者、スキルを得るほどにレベルを上げた者は一目でわかるようにしなければいけないし、国のホームページでも名前が公表される、そんなお前が何も制約なく街を歩いていれば怯えられる恐れもあるし、怯えた人間が根も葉もない噂を流す恐れもある、それだけではない、ダンジョンに入る事が出来るお前を妬んだ人間が悪い噂を流す可能性もある、そういった事を避ける為に政府がスキルの使用を制限しているという事実が必要になるんだ」
北原君は雄兄の言葉に少し考えた後に腕輪をはめる、決して納得した表情を浮かべているわけではないが、それでも必要な事だと認められたのだろう。
「残念ながら民間人のお前に対するイメージなんていうのは銃や刃物を持った人間のようなものだ、もしお前達が何の力も持たない人間だった時に街中を銃や刃物を剥き身で持ち歩いている人間がいたら恐ろしいだろう、だから本当に魔法でいいのか?と念を押して聞いたのに魔法スキルを取る事を選んだのは、北原お前自身だ、だから諦めろ」
雄兄も北原君が魔法を選んだことに思う所があるのか、言葉がきつめである、そんな雄兄の言葉にキララ嬢が不満げだが、雄兄は気にしていないようだ。
悪くなる職場の空気に胃が痛くなるのを感じながら私は胃薬が必要になる前に一人で仕事できるようになるといいなぁと重い足取りで今日の仕事を終えてダンジョンの外へと向かうのだった。




