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アイドル登場

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雄兄に誘われてから1ケ月後5月の始め、初のダンジョンアタックの日の事である。

この日、私は実家から車で1時間程の距離にある道東にあるダンジョンに来ている。

人よりも野生動物の方が多いなどとネット上で言われる道東にすら少ないとはいえダンジョンがあるのだから、この世界のダンジョンの総数がいったいどれほどになるのか。恐らく、まだ誰も見つけてないダンジョンがあるのだろうなと思われる。


「大陸には一体どれだけのダンジョンがあるんだろうな、日本にすらこれだけのダンジョン数があるんだからなぁ……」

ダンジョン数が多いという事はそこから算出される捜索者も多く輩出されるというわけだ。

その結果が国家転覆なのだから分からないものだ。


「私がよく読む小説ならダンジョンの数が国力増強に貢献したりするのになぁ」

「残念ながら俺等の世の中はそうはいかなかったつーわけだわ」

私の言葉に3人の人間を連れてやってきた雄兄が答える。


「あれ、雄兄、今日一緒に潜るのは一人だって言ってませんでしたっけ?」

「あー、それなんだがなぁ……」

「ここからは私がお話ししましょう」

雄兄の後ろからついてきた男が前に出てきて握手を求めてくる。


「わたくし、DBガールズ、キララのマネージャーをしている三橋と申します」

「DBガールズ?ドラゴンボール?」

「おい、あんたDBガールズをしらねえのかよ!」

そう言って私の言葉に反応したのは、雄兄の後ろにいた茶髪の男だった。


「えーっと、君は?」

「そんなことはどうでもいい!DBガールズだよ、ダンジョンバスターガールズ!最近大人気の女性アイドルグループだっての!」

「ダンジョンバスター?つまりその子達は自衛隊員ってことですか?」

ダンジョンが攻略されたという話を聞いたことはないが、攻略するとなると自衛隊員だけである。

「いえいえ、彼女達は自衛隊員ではなく、ただのアイドルですので、ダンジョン内では貴方達に守ってもらわねば困ります!」


マネージャーを名乗った男はそう言って焦りを隠せないのか両手を振り、茶髪の男はというと。

「当たり前じゃないっすか、キララちゃんは俺が守りますよ!」と胸を叩き、その態度にキララというらしい女性は腕に抱き着いて彼の男らしさを讃えていた。しかし私にはいまいち理解ができない。


「じゃあ、なんでダンジョンバスターズなんですか?民間人って5階までしか入れないですよね?5階までしかないダンジョンを攻略したとか?」

「よっし、太郎ちょっとこっちこい!」

私が疑問を隠せずにいると、雄兄が私を引きずって、3人から引きはがす。


「それで雄兄、結局彼女はどういう立場なんでしょう?」

「あー、民間人を捜索者にするのに莫大な額の金がかかってるんだ、さすがに捜索者に軍の装備を使わせるわけにはいかないからね、で、大口のスポンサーになってくれたのがアイドルグループの事務所だったというわけだ、その代わりにダンジョン内にあの子らを連れて行ってくれってよ」


深く溜息をついた雄兄に私はお気の毒に、としか声をかけられなかった。

この場合どう考えてもあのアイドルのお守をするのは雄兄であり、さらに戦闘行為が初めての私達のフォローもしなければいけないのだ、おまけにあの感じでは私達はともかくとして、あのアイドルに傷一つつけただけでもスポンサー様は文句を言ってくるだろう。


「お悔み申し上げます」

「やめろ、やめてくださいお願いします」

私がダンジョンの雄兄のダンジョン内での精神的なストレスを想像して思わず言葉にしてしまった言葉に雄兄もまた同じことを想像したのか胃の辺りを押さえながらこちらに助けを求めるようなすがるような視線を飛ばしてくる、が


「いや、私も初ダンジョンだからどう考えても自分の事で精一杯ですし……」

「ですよねー、ちくしょーーーー」

せめて、もう一日ずらすなど融通を利かせてくれればいいのになー等と思いながら私は叫ぶ従兄を眺めるのだった。




「すまん、待たせたな」

雄兄が一通り自分の身に降りかかるであろう苦労を嘆いた後、私達は3人と改めて合流する。


「じゃあ、ダンジョンに潜る前に自己紹介をしようか俺は青木 雄一二佐、国から君達をフォローするように命じられている、ダンジョン内では俺のいう事に従ってもらう、これに逆らった場合捜索者候補の二人は捜索者としての職を辞してもらう事になるので注意してほしい、それじゃあ、太郎から時計回りに頼む」

「わかりました、私は佐久間 太郎です、よろしくお願いします」

「俺は北原 和樹、19歳!キララちゃんは俺が守るから安心してくれ!」

「キララです、よろしく」

「マネージャーの三橋です」


捜索者は北原を名乗った若者らしい、19歳と若くやんちゃな印象を覚える茶髪の青年だ。

キララと名乗ったアイドルは私がアイドルと聞いてイメージするようなキラキラの衣装は着ていないがそれでも私達が厚手の皮のジャンバーとジーンズを履いているのに比べれば薄手の衣装だった、大丈夫なのかこれ?と雄兄の方を見ると全てを諦めたような目でキララ嬢の方を見ていた、お疲れさまです。


マネージャーを名乗る三橋の方は私達と同じような格好だが、手にはカメラを持っている、カメラ?

「三橋さんは何故カメラを持たれているのでしょうか?」

「このカメラでキララとダンジョン内部の写真や動画を収めるのが私の仕事だからですよ」


そこそこ高そうなカメラを構えた三橋さんと、その言葉を聞いて。

「もしかして俺達も映るんですか?キララちゃんと一緒に!」

とテンション上げている北原君、ニコニコとその様子を見ているキララ嬢と、現実に帰ってこようとしない我が従兄殿。

どうしよう、話を進めてくれる人間が私以外にいない……


思わず、頭痛が痛い等という鉄板ネタが頭に浮かんだ私の耳に

「政府はダンジョンを独占するのはやめろ!」

と言う叫び声が届き、雄兄の方を見ると、険しい顔でダンジョンのある方を睨みつけていた。

「雄兄、あれはTVでやってたダンジョン開放運動家って奴等ですか?」

ダンジョン開放運動家、その活動は主にダンジョンに民間人を入れろとデモを起こす事である。


表向きはダンジョンに入って高レベルの人間が少ないと他国からレベルの高い人間が攻めてきたときに自国の防衛がままならないという物、その裏にはヤクザや自分の子飼いをダンジョンに潜らせたい有力者がいるらしい(あくまでネットやテレビの知識なので詳しい事はわからないが)


「そうだな、あそこにいる人間の立場は色々だが、一番多いのは一攫千金狙いの人間だ」

「一攫千金狙いですか?」と私が聞くと

「そうだ、ダンジョンには宝箱があってその中には鉱物等が沢山入っているに違いない、そんなものを政府が独占するのは悪だ!だとさ」

そう言って雄兄は肩を竦める。


そんな雄兄に対して、北原君は疑問を投げかける

「でも、高レベルの人間は多い方がいいんじゃないですか?隣国が攻めてきたときとかに対処するためにも」


北原君の疑問に、きらら嬢も同意するが、雄兄は首を横に振ると

「隣国は攻めてこないぞ」

そう強い言葉で切り捨てる、私を含め、全員がその理由を聞きたくて雄兄を見つめると


「いいか、本来戦争ってのは何かを得るために起こるもんだ仮に他国が日本を攻めたとしても、その維持管理には沢山の人間がいる、が、日本に限れば大量の人員を送り込むことが不可能なのさ」


「それは何故ですか?船や飛行機等幾らでも輸送手段はあるじゃないですか?」

キララ嬢が雄兄を見つめて小首をかしげながら尋ねる、これがアイドルの媚売りって奴なのかと実物

を見て感心している私と、その態度に苦笑しながら雄兄は


「船や飛行機なら、俺達が領空に入った瞬間迎撃できるからだ」

とその理由を告げた(なお、北原君以外が自分の態度に対して反応しなかった事が不満なのか若干キララ嬢は不機嫌そうだった。)

「日本の兵器という事ですか?さすがの日本も現状では防衛兵器の使用には躊躇がないと?」

「いや、俺や他の自衛隊員が槍投げたり、弓矢で撃ち落とすからだ」

どや顔でそんなことを言う雄兄に私は思わず「何言ってんだこいつ」と本音を漏らしてしまうのだった。


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