ダンジョン18話
この作品の魔法は想像力が命です
バッタ討伐2日目、土日を挟んだせいなのか、北原君のテンションは朝から高かった。
キララ嬢もそんな北原君のやる気に引っ張られたのか、いつもよりも元気にダンジョン内を歩いている。
心なしか、三橋さんも嬉しそうなのは担当アイドルの人気が上がる気配があるからだろうか、確かに逆に微妙なランキングって探しにくいよね。
そんな3人の前を歩く雄兄は既にお疲れの気配があるのだが、まぁ、頑張ってほしい。
バッタ狩りを始めて2時間程が過ぎた、そろそろお昼休憩かな?と思っていた時北原君がよし!と叫ぶ、その声に反応してキララ嬢が北原君に駆け寄り、三橋さんはカメラの録画を切り二人を見ている。
「やった、やりましたよ、キララちゃん、俺ついに魔法を手に入れました!」
ガッツポーズをしながらキララちゃんの方を見る北原君と、その北原君に笑顔を向けながらすごいすごいと言っているキララ嬢。
これで少しはキララ嬢のランキングが上がってくれればいいんだがねぇ、と私が思っていると、雄兄が昼休憩を取る為に安全地帯に移動する事を告げる。
「待ってください、一匹、一匹だけでいいんで、スキル使って倒させてください!」
まぁ、新しい玩具を手に入れたら使いたくなるよねぇ、まして気になる女の子がその玩具に興味持ってるんだし、なおさらだよね、と私が思っていると、雄兄は少し考えた後に、休憩地点の近くのモンスターならいいぞ、と許可を出す。
その言葉に北原君は嬉しそうに頷き、キララ嬢も雄兄に礼を言って隊列の中央に戻る。
休憩地点が見える所まで移動すると、そこには一匹のバッタがいた。
雄兄は北原君に
「スキルを使う準備をしておけ」
と声をかけて、頷いたのを確認すると、バッタの所まで一気に駆け抜け、そのバッタの首を掴み押さえつける。
普段なら踏みつけるのにどうしてわざわざ?と疑問に思っていると、北原君が左手で右手の手首をつかみながら右手をバッタに向ける。
キララ嬢はそんな北原君を応援し、三橋さんも期待した目でカメラを向けている。
そして、30秒くらい経過した時、北原君の右手から、バレーボールサイズの炎の塊が生まれバッタに向かって飛んでいく。
ただ、残念ながら飛んで行った先はバッタではなく、バッタを押さえた雄兄だったが、その事に気付いた北原君は顔を真っ青にし、キララ嬢は手で目を覆う、そんな中雄兄は手に持っていたバッタを摘まみ上げると、そのまま飛んできた火の玉にバッタを投げつけた。
雄兄が勢いよく火の玉へと投げたバッタは空中で回転し、凛々しい顔で火の玉へと向けてキックをする、その顔は決して自分の勝利を諦めることなく、最後まで自分の力を絞り切った漢の顔だった……
まぁ、北原君の火の玉であっさりと燃え尽きたんだが。
「す、すいません、青木さん、大丈夫っすか?!」
私がバッタの最後まであきらめない姿に心の中で称賛を送っていると、北原君は雄兄の下に駆け寄ろうとして、その場で膝をつく。
多分、北原君の火の玉が直接当たっても問題にはならないのだろうけど、慣れない力を雄兄に向けて焦ってそこまで頭が回っていないのだろう、そして混乱した状態でやったことは言い訳等ではなく、雄兄の事を心配したのは個人的に、北原君を良い子だなぁ、と思う。
人間、混乱した時ほど本心が出るものだからね、私がやった時に言い訳とかせずにまず謝る事が出来るだろうか何てことを考えていると、雄兄は北原君に大丈夫だと伝え、そのまま膝をついた北原君に肩を貸す。
「それで雄兄、北原君はどうしたの?」
と私が問うと
「お前は従兄である俺をもう少し心配してもいいんだぞ?」
と返事が返ってくる、どうせ焼かれたって痕も残らないんでしょ?と私が言うと
「服は燃えるぞ、放送事故になるな」
と三橋さんが持っているカメラを指さす、30超えたおっさんの放送事故って誰得なのか。
「北原に関しては魔力の使いすぎだな、多分さっきの一撃で7、8割の魔力を使ったんだろう、そのせいで体のバランスを崩したんだろうよ」
と言う、支えられて立っている北原君はと言うと、首を捻った後に
「よくわかりません」
と言って手をグーパーさせている。
「使った本人が一番よくわかるんだろうが、魔法は呪文名を言えば適当に魔力を調整して発動してくれるものじゃないからな、恐らく、キララの前で良い所を見せようと、過剰に魔力を注ぎ込み、コントロールが出来なくなったんじゃないか?」
と言う雄兄の言葉に北原君は首を捻った後に
「そうかもしれないっす」
と頷く。
なるほど、これは魔法を使って戦うっていうのは私が思っていた以上に大変かもしれない
1日1発だけとか1時間に1匹だけを相手にするなら調整が甘くてもある程度はいいかもしれないが、一応ある程度の数のモンスターを狩るのが私達の仕事だ、まぁ、昨日の雄兄の話を考えれば別に倒さなくても国としては困らないのかもしれないが、特別扱いしている以上は一定の仕事はしないと文句を言う奴等は必ず出る。
しかし、1日に何発も魔法を撃つとなると、その都度、その時に適切な魔法をイメージして撃たなければいけなくなるわけだ。
戦闘中に、自分を殺そうと向かってくる相手と向かい合いながらだ。
確かに今なら噛まれても爪で引っ掻かれても大した傷は出来ないかもしれない、だからと言って自分に殺気を向けてくる相手に相対する精神的な負担はかなりのものだろう。
「貧乏くじ引いたんじゃないかなぁ、北原君」
私の言葉は彼の耳にも届かなかったようだが、彼もきっと同じことを考えているだろうと、その引き攣った顔を見て思ってしまった。
今のはメラゾーマではない、メラだ、が出来ます(なお消費MPはメラゾーマ並み




