ダンジョン13話
バッタにいきなり飛び蹴りを食らわされて驚いていた北原君だがそれ以降が雄兄があっさりと動きを止めた為にキックを食らう事なく狩りを続けていく。
ちなみにバッタのキックは雄兄であっても避ける事は出来ないらしく何度か食らっている姿を見たが、北原君と違い無防備に受ける事なく右手に持っている剣で弾くなどの行動はとれるようで体で受けるダメージはほとんどなかった。
「さて、午前中はこの位にして休憩するが、午後からはどうする?交代するか?」
バッタを20体近く狩ったが残念ながら北原君はレベルが上がらずにスキルを覚える事が出来なかった。
だからだろうか雄兄は私達に尋ねてくる、私は北原君の方を見ると、続けて狩らせてほしいと言ってくる。
「このまま北原君が疲れていないなら続けてくれていいよ、私は明日以降でいいから」
私がそういうと北原君は嬉しそうに
「全然疲れてないっす!」
そう言って雄兄に向かって走っていく。
「それじゃあ、午後からも北原に前衛を担当してもらう、今日中にレベルが上がるかは分からないがな、上がらなくても17時には切り上げるぞ」
雄兄は北原君を見て苦笑を浮かべながら言う、この感じではレベルが上がるまで狩りを続けていたいというかもしれない
「北原さんは、何のスキル取るんですか?」
休憩地点で安全を確保した後、キララ嬢は北原君に近づいて問いかける、彼は確か剣術スキルを先に取るつもりだと言っていたはずだが。
「俺は火魔術を取るつもりだぜ!その後は金属性を取って相克士のジョブを取るぜ!」
思わず私が北原君とキララ嬢、その後に三橋さんの方に顔を向けると三橋さんは申し訳なさそうな顔をした後に横を向く、いや、私に申し訳なさそうな顔をされても。
続けて、雄兄の方を見ると、こちらも苦笑しながら首を振る、後で聞いたのだが何度も思いなおすように言ったのだが、決意は固いようだ。
ま、まぁ、雄兄が相談を受けているようだし私が何か言う事でもないか、私が取得しようとしているスキルと違って北原君が取得予定だったスキルは戦闘系スキルだから幾らでも取得者がいたみたいだし。
「そうなんですか、キララいっぱい応援しますね!」
とキララ嬢は嬉しそうに北原君の腕に抱き着いた後に、私の方を見るが、そこで私を見られてもなぁ。
多分、キララ嬢の動画を盛り上げるスキルを取れ、という無言の圧力なんだろうけどねぇ、相手は仮にもアイドルだし、手の届かない花よりも、来月のお給料を取る年なんですよ、私は。
「まぁ、スキルは一生物だが、5階までの狩りなら何とっても困らねえから、好きにしていいぜ、太郎が変えるなら一声かけてほしいがな、国でもお前さんの取るスキルには期待してるからな」
そう言って、雄兄が私に話しかけてくるので、私は首を横に振り、変える気はないと意思表示する。
「ところで相克士ってどんなジョブなんですか?」
この世界のダンジョンでは魔法の属性は4元素ではなく5行である。
木火土金水で、ジョブも魔術師ではなく、相生士と相克士である。
相生士は味方を強化したり、回復魔法が強化されるタイプで、相克士は敵を弱体化したり、敵への攻撃魔法が強化されるタイプである。
「なるほど!じゃあ北原さんの魔法はもっと強くなるんですね!」
きゃっきゃとはしゃぐキララ嬢に北原君は嬉しそうにしている。
仕方ないね、男の子だからね。
「実際、相克士と相生士ってそんなに違うの?」
そう私が雄兄に問いかけると、半分ほど食べた弁当を一気に食べきり、お茶で流し込むと
「それじゃあ、魔法を扱うジョブについて説明してやろう」
といって、私の方を見る。
「ご飯をかまずに食べると体に悪いよ」
そう私が言うと
「レベルが高いから大丈夫だ」
と返された、そんなことに高い能力を利用しないでよ……
「スキルで取得できる魔法は、木、火、土、金、水、の5種類だな、俺もあまり詳しくないが、5行と呼ばれていて、中国から流れてきた、考えらしい」
「ジョブを持っていなくても魔法を手に入れた時点でいろんな魔法を使える、今回北原は火を取るつもりみたいだが、火だから攻撃魔法とかってことはない、身体能力を強化する魔法も使えるし、回復魔法も使える、もちろん攻撃魔法もな、その上でジョブがあると、それに対応する魔法が強化されるってわけだ」
北原君の場合、火と金の相克士なので火の攻撃魔法と、弱体化魔法、金の攻撃魔法と、弱体化魔法が強化されるのだと。
逆に、相生士だった場合は、回復魔法と、強化魔法が強化されるらしい。
「結構な違いが出るからな、ジョブは大事だぞ、特に消費する魔力?まぁ、一日に使える魔法の回数が変わるからなジョブに対応する魔法だと」
具体的な数値化が出来ない為に説明が難しいが体感では相克士が使える攻撃魔法の回数と回復魔法の回数は倍近く使用可能回数が変わるという。
「いっそもっとゲームらしくパラメーター表示位つけてくれりゃいいのにな」
雄兄はそう言うが、普通に考えて人間の能力を数値化するのは難しいと思うんだが
「いやいや、地球の常識で考えたら、バッタがキックを放つときに動きが止まるのもおかしいし、心臓のない動物がいるのもおかしいだろ?なら案外数値かできるんじゃね?」
そう言って雄兄は笑うのだった