ダンジョン10話
唯一の女性キャラがこんなのいいのだろうか?
午後からの北原君も私同様に兎の首を落とすのに苦労をしていた。
気づかないうちに力任せに斬る事に慣れていたようで雑になっていたようだ。
「……太郎さんはスキルはどうするつもりなんですか?」
キララ嬢が私に話しかけてくる、雄兄からは私達と話をするなとは言われていないようだ、なので年の近い北原君とはよく話しているのを見かけるが、私は年齢差などもあってほとんど話しかけてこない。
レベルを後3つ上げれば一つ目のスキルを覚える事が出来る、2つ覚える事が出来るスキルは事前に政府に報告してあるが、報告の義務はない、実際ダンジョンに潜る事でほしいスキルが変わったりするので、あまり当てにならないからだ。
まぁ、私は変えるつもりはないので、キララ嬢の質問に答える事は出来る。
「私は身体能力強化のスキルを取るつもりだよ?」
「身体能力強化ですか?ですか?」
私はキララ嬢に嘘を付く、解体スキルの存在はあまり公にしないでほしいと頼まれたたからだ。
解体の効果を現在国は詳しく把握していないが、もし解体のスキル効果によって使用者がダンジョンから金になる物を持ち出せた場合、冒険者の数を抑制するのが難しくなるからだ。
現在は魔石しか持ち出せない、だから冒険者がダンジョン探索だけで生きていくのは難しい。
企業がバックに就くことでプロ冒険者が生まれるかもしれないが、その数は少ないだろう。
だから解体というスキルの存在自体知る人間は少ない方がいい、というのが総理の判断である。
外国から情報が入ってくるだろうが、それについては総理達が手を考えているらしい。
キララ嬢と話しながら雄兄との話を思い出していると、キララ嬢が私を見上げて何かを言おうとする。
だが、そんなキララ嬢の様子を見た三橋さんがこちらに走ってやってきてキララ嬢を止めた。
キララ嬢はそんな三橋さんに機嫌を悪くすると、先を早足に進んでいく、残された三橋さんがすみませんと頭を下げる。
「いえ、別に謝られることではないんですが、私の取得スキルに何か問題があったんですか?」
私の言葉に三橋さんは少し悩んだ後に、私の耳元に口を近づけるとキララ嬢に聞こえないように
「前に言ったかもしれませんが、私達はダンジョン内での事を動画で上げているんです、今はどこも似たような内容なんですが、この先お二人がスキルを2つ所持すると戦闘の見栄えが変わりますよね?動画を見るのはアイドルファンがほとんどなんですが、やはり派手に戦闘する後ろで応援する方が動画映えが良いというか」
三橋さんが言い辛そうに頭をかきながら私に告げた。
二人とも近接戦闘よりも、どちらか一人、もしくは両方魔法のほうが戦闘が派手になるということだろう。
「そこは戦闘が地味になっても自分の魅力でカバーするくらいの事は言ってほしいと思うのは無理があるんですかね?」
そう私が笑って言うと三橋さんは苦笑しながら
「自信がないのでしょうね、アイドルなんて言ってもまだろくに活動もしてませんし、後はまぁ、彼女のルックスは際立っているわけではないですから、ね」
私が困ったような顔をしていると三橋さんは取り繕うように言葉を続ける。
「歌唱力やダンスではトップクラスなんですよ、それは間違いありませんし、彼女の魅力なんですがね」
第一印象という意味では他のアイドル達に負けると、それを自覚しているから焦っていて、私の取得スキルが地味だったのが不満だったと。
「北原君は剣術と身体能力強化を取って剣士を目指すそうでしてね、もし、佐久間さんが魔術系スキルを取ってくれれば嬉しいのですがねぇ」
三橋さんは私を見ながら笑顔を浮かべて言ってくる、が私はそんな使い勝手の悪い物を取るつもりはなかった。
「あいにくと、魔法には興味がなくて」
「そうですか、残念です」三橋さんはそれ以上何も言わずにキララ嬢の下に早足で駆けていった。
思ったほど口説いてこないなと思ってから、自分達が公務員であるという事を思い出す、あまりスキルの取得に口出しをできない立場なのだろう。
「中々難しい立場なのかもしれないなぁ彼等も」
私はキララ嬢と三橋さんの背中を眺めながら周囲の警戒に戻る事にした。
少しだけ内容を変更。
キララ嬢に解体を取得する事を伝えていたのを、身体能力強化と嘘のスキルを教えたことにしました。