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死なない僕が英雄になるまで。  作者: 穂藤優卓
序章
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第七話 入学試験 1

 入学試験当日、僕は早霧と別れ戦闘科を受験する生徒達が集まる部屋へと来ていた。部屋の中へ入ると受験生の熱気が凄く、皆やる気に満ち溢れている。

自分が使用する武器の手入れや最終調整など各々が試験に向けて調整をしている中、皆の前に一人の先生と思われるスーツを来た女性が部屋に入ってきた。


「えっ」


 僕はその女性に見て思わず声を上げてしまった、結構大きな声を出してしまったらしく他の受験生からの視線が僕に刺さる。

何故僕が声を出してしまう程驚いたのかは、受験生の前に立っている先生が僕がよく知っている人物だったからだ。


「皆さん静かにしてください、今日の試験を担当します伊藤 月火です、これから試験内容の説明をしていきますね」


 驚いた理由はこれだ、目の前に立っている女性は月火だ。スーツを着こなし大人女性の風格をしている。普段の明るいおちゃめな雰囲気は無くなっていた。

僕は月火を見ていると目が合う、数秒間見つめ合い月火の表情がニヤッとしてやったりな顔に変わった。僕は先程の言葉を前言撤回する、妹は妹だったと、今回のことは後で問い詰めるとして僕は説明へと耳を傾けた。


 入試試験の説明が始まった、まずは試験内容である。

試験内容は特別に用意された施設内でゲームで言う魔物の様な生物との戦闘との事。

試験に使われる生物は先生が異能力で作り出したもので、最大限安全に配慮されており死者は出ないが軽い怪我はするらしい。

 ここからが本題である、異能力で作り出した生物には全てランク付けされており、討伐ランクが高ければ高いほど点数が加算されていく仕組みになっている。最後に総合点数上位の受験生が合格できるらしい。そして試験中もしもの事があった場合に備え、先生が試験場内で待機しているらしく、大声を出したらすぐに先生が駆けつけてくれる事になっている。

 試験の制限時間は1時間、受験者数は300名を超え合格者は60名まで絞られる、かなりの倍率だ。


 説明が終わると、月火は部屋を出ていく、試験開始時間は今から30分後に予定されている。

受験生は部屋で待機するよう言われると、皆は再び各々の武器の手入れを始める。


 二十分が経った、再び月火と他数名の先生が入ってくると試験会場に移動するらしく皆は先生の後をついていく。

 移動中では驚くことが何度もあった、まずはそれは学校の敷地の広さだ。レンガ作りの学校で校舎とは別に大きな体育館が何個も周りにある、そして広いグラウンドもあった。

 そんな学内の敷地を歩くこと5分、大きな体育館の前へと来る。体育館の入り口には第三体育館と書いてあった。体育館は敷地内に何個あるのだろうか考えていると、先生に先導されみんなが中に入っていく。


 順番が来ると、扉をくぐった、僕は扉の先にある光景に目を丸くする。

入ったら目の前は密林の様に木々が密集し、熱帯の様な蒸し暑い大自然が広がっていた。

某機械猫が使うどこでも行けるドアを通って海外にでも行ったのではないかと錯覚してしまうほどの変わりようだ。周りの人達も目の前に広がる木々に呆気にとられたのか、口を開けあたりを見渡している。

 

 しかし僕にとってこの環境は好都合だった、パルクールを最大限に活かす事が出来る。

短剣も刃渡りが短いおかげで振り回す際に木が邪魔になる事もない、どれだけ効率良く生物を狩って行くかを頭の中で検討していく。僕は進むルートを考えていると、僕の思考を中断させるように先生の声が響いた。


「それでは今から新宿区異能力育成校の入学試験を行います、制限時間は一時間。そして終了時間になる五分前に発煙弾で皆さんに知らせます。制限時間を過ぎれば森を徘徊する生物達も消えるので、この場所に戻ってきてください。それでは皆さん準備が整っているようなので始めます」


 先生が信号拳銃を持ち、発煙弾を上に打ち上げた、それと同時に皆が一斉に森の中へ駆け出す。

僕も置いてかれまいと森へ駆けていく。森の中は日課での鍛錬で慣れている、森の入口では大勢が一斉に森に入ったせいで混雑している、僕は日課で鍛錬してきた通りに猿のような身のこなしで木々を伝い先へと進んでいく。

 木を伝って移動するメリットとしては混雑を回避できる事以外にもある、それは通常より高い目線で獲物を発見する事が出来る。だが、この試験で僕より有利な存在は居る、それは空を飛べる人だ。空から飛び獲物を発見すれば急降下し一気に倒していく戦法を皆が取っている。それに負けじと僕も森を駆け回り、ようやく最初の獲物を発見した。


 発見したのは狼の群れだ。普通の狼よりも体が大きく統率の取れた行動、一切の乱れもなく陣形を組んで歩いている。だが僕の存在に狼はまだ気づいていない様子、僕は木の上から様子を眺めていた。

狼の数は4匹、先頭に一匹が歩きその後ろに一匹で最後尾に二匹が陣形を組み歩いている。

もし初激で狙うのならば統率者と思われる先頭を歩いているリーダーだがをリスクが高い。もし外せば囲まれる結果になる。この状況ならば頭数を減らすことが先決だろうと、僕は木の枝を蹴り飛んだ。


 僕の両手には短剣が二本、落下地点には隊列の後ろで並んで歩いている二匹の狼、その首筋に落下の比重を上乗せした刺突で首を狙う。

 僕の短剣は見事に命中した、首には深々と短剣が刺さり、狼は絶命と共に消滅する。

残りは二匹、だがここからが厄介である、二匹は既に臨戦態勢を取り、唸り声を鳴らしている。

ならば僕はと短剣を持ち直し対面する。狼の次の行動はわからない、腰を落とし次の行動に備え構える。


 だが狼は唸るばかりで僕を警戒するだけ。

何故だろうかと考えていると、昔何かの本で見たことを思い出す、狼の隊列は最後尾に群れのリーダーが居る場合が多い。

先頭が獲物を追従し囲い、リーダーが後方から仕留めるという陣形だ。ならば初激で殺した二匹の狼のどちらかがリーダーだったのだろう。

僕は初動で制したことになる、統率者の居なくなった狼の群れは唸りながら後ずさりし、尻尾を巻いて逃げていった。だがここで逃しては後の点数に関わる、狼の脚は早いがそれでも僕の方が早かった。

 木を避け荒れた地面の上では走る速度も制限される、それと比べ僕の場合は木々を伝い最短距離で近づき、最初に狼を倒したように上空からの刺突で仕留めていく。

こうして残り二匹も倒し終わると一息ついた。流石にこの動きを常にしていては一時間も持たない、狼を全滅させる為に要した時間は体感で十分程度、休憩は三分ほどで済ませ、僕は息を整え次の獲物を探しに行く。


「ふぅ、これで何匹だろうか」


 僕はあれからも見つけては初手で数匹を仕留め、その後苦戦しながらも倒していくことを繰り返していく。だがこれで満足してはいけない、何故ならば僕たちには今倒した獲物が何点なのかは教えられていない、そして他の受験生の点数もわからないのだ。森という事もあってか戦闘音は度々聞こえるが、その人がどのくらい倒しているのかも把握する事も困難。受かるためには虱潰しで森の中を駆け回らなければいならない、これは体力もそうだが精神的にも結構なダメージがある。


 僕はそれでも森を駆け回っていると、木々が倒れる音が森一体に響く。

この音は何かとすぐさま視線を音のした方へ向けると、そこには一匹の青く球体状をした水のような生物がそこにはいた。

その生物は見上げるほどの大きさだった、その姿を見た僕の感想は、某ゲームに出てきたスライムがそこに居ると興奮していた。

スライム、それは粘着性のある体で球体状の形をしており、体内には核が存在する、これが僕のゲームでの知識、だが目の前のそれは規格外に大きかった。

そして半透明だからこそ目視で確認できるが、木々や生物を吸収し体内で徐々に溶かしていく、ゲームでの可愛さなど微塵も感じない、どちらかと言えばグロテスクなR18の光景が目の前に広がっていた。


 受験生は立ち向かうことはせずに皆が逃げ惑う、だが僕にはこれはチャンスだと思った、あの大きなスライムを倒せば多くの点数は稼げるだろう。

 

 考えたら即実行、僕はスライムに向かって走り出した―――。

 入学試験は懐かしい思い出に浸りながら書いてました!

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