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死なない僕が英雄になるまで。  作者: 穂藤優卓
序章
6/33

第六話 春が来た。

 僕の誕生日が終わり、あれからも僕は毎日忙しい日々を過ごしていた。

11月も終わり、12月も後一週間程で終わろうとしている、練習していたパルクールも板についてきた。

昔は出来なかったバク宙でさえ軽々と出来るほどだ。最近は近場の森やビル街に行き、体を動かしている。壁を蹴り登ったり、木々の枝を伝い進んでいったりなど、普通の人ではやらないであろう事をやっていた。


 そんな時、ふと気づいたことがあった、それは僕の異能力は他と比べ決定力が無い事だ。

どうすればいいのだろうかと僕は悩んでいると月火から、短剣を使ってみたらどうかと提案される。

 僕としても短剣は悪くない選択肢である、身につけたパルクールの動きを邪魔しない取り回しの効く短剣は僕が今やろうとしている戦闘スタイルと合っているからだ。

だが男としてはどうしても短剣より太刀の様な刀身の長い刀に憧れてしまう、だがそれも仕方がないだろう。


 ―――と諦めることが出来れば苦労はしなかった、僕はネットで剣や刀について調べていくと一つの動画を見つける、この動画を見て僕は太刀は諦めようと決心が付いた。

 その動画は、太刀よりも更に刀身が長い大太刀を使った男の動画だった。

刀身が長く扱いづらい大太刀を、自分の手足の様に縦横無尽に操るその姿に見とれてしまった。

どうやら動画の男は刀の名家らしく、太刀や大太刀を使っての戦いでは右に出るものは居ないと言われるほどの人物らしい。僕はそっと動画を閉じ、短剣の練習に励もうとそう思った。


 短剣の練習を始めて数日が過ぎた。結論から言うと、一長一短では難しいことがわかった。

いくら刃渡りが短くとも、短剣を使いながら今までの動きが出来るはずもない、無意識に刃を意識してしまいぎこちない動きになってしまう。

 居合抜きの様に短剣を鞘に収めておけば、動きは阻害されないが、実際にはそうもいかない。

不意の出来事に抜く暇があるのかと言われれば、無いのだから。


 ならばどうするべきかと考えたが、こればかりは動画などを見て独学で練習するしかない。

誰か短剣の使い方を教える事が出来る人が身近に居れば話は違っただろうが、ないものねだりである。

僕は怪我をしながらも毎日、地道に短剣の練習に励み続けた。


 

 時は流れ新年を迎え既に一月の中旬、夜中の凍えるような寒い季節も終わりを迎えようとしていた。

積もった雪は溶け始め昼間は暖かくなり、僕は眠い目をこすり今日もまた短剣の練習に励む。

 練習を始めて既に一ヶ月、最初と比べぎこち無さは消えたが、それでもまだ足りない。最近では短剣を抜き自由自在に動くことを主に課題として練習している。

 向上力強化の恩恵で、上達速度は早いが、それでもまだ失敗を繰り返す毎日。

月火も家に帰ってきた僕を見ると毎回心配される、このままでは特待生はおろか入学も危ういかもしれない。


 ここで今日、僕はある事を考え実行しようとしていた。それは刀の名家である柳生家の道場へ見学をする事だ。

柳生家とは少し前に動画でみた大太刀を使う男性が家元である。道場では門下生に刀の使い方を教えている。太刀や大太刀などを主にしているが、実際や剣など刃物全般を教えているらしく最近それを知った。

 道場は都内にあり、電車に乗れば行ける距離という事で僕は今電車に乗って柳生家へと向かっている途中だ。柳生家は、代々受け継がれる柳生流という流派があり、それに基づき刀を教えているらしい、入門はしないが見学することは出来ると書いてあったので、最近短剣の練習もマンネリ気味な事もあり何か盗める事があるかもしれない。


 僕は電車を降りると真っ直ぐ柳生家が営む道場へと向かう。

道場の外見は周りのビルなどの現代建築にそぐわない、和風建築な建物だった。

昔ながらの瓦を使い、木で出来た道場、外見からわかる迫力に少し圧倒されるが意を決して中に入る。

 中に入ると受付があり、そこで見学をしたいという事を伝えると見学用の場所を案内され、そこへ向かった。


 道場は中心が鍛錬場で周りを観客席のように囲むベンチが数箇所あった。

中心では門下生達が汗を流しながら、太刀を振り回している。その脇では短剣や剣などといった西洋の武器を使った鍛錬も行っているようだ。

 僕は短剣だけでは無く、大太刀や太刀などと言った武器も食い入るように見る。

道場で鍛錬しているだけあって、皆の動きは無駄が無かった、足の動きから腕の動き、そして全身の筋肉を巧みに使い剣を振る。僕の短剣ではそこまでの動きは必要としないが、これはこれで勉強になる。


 次に短剣の鍛錬を行っている人に目を向けると、そこでは刺突や投擲などの練習をしていた。

短剣は刃渡りが短く斬撃では致命傷にならない可能性がある、そこで刺突で突き刺す事が短剣の最大の火力になる。

投擲では短剣の軽さもあり、投げて敵を牽制したりする事も出来る、短剣は取り回しやすさだけが取り柄ではないという事がわかった。

 だがどれも僕のスタイルとは違っていた、パルクールと短剣の組み合わせは俊敏さや身のこなしが主である、それに対し門下生が練習している内容は短剣はあくまでサブといった感じだ。

僕は得られるものはあったが、ネットに転がっていないような参考になることは無いのだろうと肩を落とした。


 見るものは全て見たと思い、僕は道場から立ち去ろうとすると、一人の少年に目が行く。

その少年は身長こそ高いが顔にあどけなさが残っている。見る感じ僕と同年代だろう、少年が道場に入ると道場の生徒達は皆一礼していた。

 偉い人なのか、それとも腕が立つのか、これは見ておこうと思い僕は再び腰を下ろす。

少年が道場に入ってから既に一時間程が経過するが、少年は刀を持とうとはしない。

生徒達を見ては、歩き別の人をまた見る。何をしに来たのだろうか、わからないが刀を振らないのなら別にいいと思い僕は道場を後にすることにした。


 家に帰り、僕は刺突をやってみるがどうもイマイチピンとこない。ならば刀の動きはどうだろうかと思い、実行してみる。

太刀の様に大ぶりで短剣を動かすが、これならば太刀の方が良いだろう、ならば筋肉や関節の動かし方を真似てみる。

 短剣を振り回すのに筋肉を最大限使うのは過剰だったが、関節を上手く使う事が出来れば、より取り回しがスムーズになり動きがよくなりそうだとわかる。

腕の可動域が広ければ短剣を使う時にメリットとなるだろう、日課に柔軟も入れて置こうと決めたのであった。



 一ヶ月後

 

 僕にとって運命の日がやってきた二月一日、異能力育成校の入学試験日である。

僕が通う学校は新宿区にある学校で、他の異能力校とは比べ物にならないほど施設や行事が充実した学校。

その事もあり、倍率は他の異能力校よりも高くなっている、何故この学校を選んだのかと言えば、家が近い事もあるが、それ以上に月火がこの学校は良い所だと押してきたのだ。

月火のおすすめとなっては兄として聞かないわけにはいかない、この事が学校を選ぶ一番のきっかけとなった。

 試験時間に遅れないように、いつもより早めに起き身支度を済ませる。

以前通っていた中学の制服に腕を通し、受験票や筆記用具、そして短剣を忘れずに持っていく。

異能力校の入試試験は他と変わっている、僕が志望している戦闘科では模擬戦が行われるとの事だが、詳細まではわからない。緊張からか少しお腹が痛いが、我慢し身支度を済ませ朝食を終える。


 今日は月火も僕より早く家から出ていた。

仕事がいつもより早く始まるのだろう、頑張ってと一言だけ僕に伝えると行ってしまった。

僕は今までの練習や鍛錬を思い出し、頬を手で叩き気合を入れ家を出た。


 学校までは電車で向かうことになる、電車の中は受験生なのか緊張した面持ちで電車に揺られている学生が大勢居た。皆も受験で緊張しているのだろうと思うと、僕の気持ちも少しだけ和らいだ気がする。

 電車を降り、スマフォで地図を開き、道案内を見ながら学校へと足を進める。

学校に近づくにつれ、学生服を着た人達が増えていく、僕はどんな人達がいるのだろうと周りを見渡す。

緊張で顔を青くした男の子や、刀を背中に背負った女の子など、周りの人達は皆、僕と同じ学校へ入試を受けに行くのだろう。

 

 そんな中に一人、知っている女の子が居た、あれは確か対異能機関で知り合った桐原 早霧である、どうやら同じ学校に受験するらしい。

僕は後ろから声を掛けると、早霧も僕と気づくと笑顔で手を振る。


「早霧ちゃんだったよね?同じ学校なんだね」

「偶然だね、びっくりしちゃったよ優君は学科は決めたの?」

「うん、僕は戦闘科を受験するよ、今日の為に体も鍛えてきたんだ」

「そういえば、前に比べてガッチリしてるね、なら今日は絶対受かるよっ、学科は違うけど一緒に頑張ろうね」


 そんな会話をしながら僕達二人は一緒に受験が行われる新宿区異能力育成校へと向かった―――。

 もう今年も終わりで入試シーズン、学生は勉強を頑張りましょうッ!

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