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死なない僕が英雄になるまで。  作者: 穂藤優卓
序章
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第五話 妹の手料理と誕生日

 異能力を調べ無事に病室へと戻った、病室に着く頃には既に昼を過ぎ腹の虫が鳴っている。

僕はお腹をさすりながら食堂へ向かい軽食を取ると再び病室へと戻った。異能力の内容に向上力強化とあった、ならば尚更先日から始めた筋トレは続けなければならない。


 病室へ戻ったがすぐに外へ出て僕はリハビリ施設へと向かうと、日課である筋トレを行う。

医者との相談で経過を見て内容を見直していく、どうやら向上力強化の影響は自分が考えている以上の物らしい、昨日まで日課を熟す事が苦痛だったが、今では疲れはするが余裕がある。

 筋肉も既に付き始めている。昨日の説明で思ったことがあるが向上力強化の効果と不老の効果が合わさった結果なのだろうと考えている。

向上力強化で通常よりも早く筋肉が付き。筋肉は細胞が破壊され再生される時に発達する、その過程を不老の効果によって加速されているのかもしれない。ボディビルダーみたいになるのは避けたい……気をつけなければ。


 だが今は恩恵を最大限に活かそう、僕は筋トレの内容を少し変えていく。最初は回数を増やす程度、だがそれでも体への負荷は大きくなり、より向上力強化の効果は強まるだろう。

 頭から垂れてくる汗が鬱陶しく腕で拭うが、それでも落ちてくる。リハビリ室の片隅で一人玉のような汗をかきながら筋トレをしている入院者が他にいるだろうか。周りの人は物珍しさにチラチラと僕を見ているが、気にしないことにした。


 日課の筋トレが終わると、今日は月火を呼び出していた、何故呼びたしたかは昨日聞いた異能力を話す為である。

 月火は夕方に来るらしく、それまで僕は部屋でのんびりと過ごしていた。

ベッドの上でゴロゴロしていると、扉をノックする音が聞こえる、どうぞと声をかけると、扉の先には月火が居た。夕方と言っていたが少し早い時間での登場だ。


 呼び出しという形で月火を呼んだせいか、何かを察しているのだろう真剣な面持ちをしている。

僕は月火と向き合い座ると、真剣な表情をした、何だか久しぶりな感覚だ。

以前、家族会議だといって時々、みんなで真剣な内容を話し合っていた。真剣とは言っても今日の外食は何処に行くかなどの事だが…。

しかし今日は違う、僕は深呼吸し話の内容を頭の中で整理していく。そして僕は月火に昨日の出来事を話し始めた。


「そっか、不老不死かぁ……そっか、そうか」


 月火は自分に言い聞かせる様に小声で呟く。

その表情は重い話をしたにも関わらず何故か嬉しそうに思えた。


「なんだか嬉しそうだけど、なんで?」

「え?だってお兄ちゃんが私の前から居なくならないってことだよね」


 その言葉と同時に僕が目覚めた時と同じぐらいの満面の笑みを僕に向けてくる。

月火の笑顔を見た僕は絶対に妹だけは守り抜く事を改めて誓う。それからは、色々な話をした、今後の予定や退院後など。

 取り敢えず今は現状維持でトレーニングを中心とし体作りをする、退院まではこれが続くだろう。

退院後は月火が住んでいる場所に一緒に住み、異能力育成校の資料や対策などを練っていく事になった。

後半年あるが、逆に考えれば後半年しかない、まだまだやることはたくさんあるだろう。

だが今は月火の笑顔を見ることに専念しようと僕は思った―――。


 一ヶ月後、八月は終わり九月に入る、肌を焼くような日差しは無く、夏は終わりなのだと少し黄昏れる。

僕は九月に入り、忙しなく動いていた。毎日の筋トレに加え十年間の空白を埋める為に新聞や本を読んでいく毎日の繰り返し。異能力のおかげか、日に日に成長を感じられる事が心地良い。


 そしてとうとう、僕の退院日が決まった、来月の十月二十日である。

目覚めた後の経過も良く、ここまで動けるのならば退院しても問題ないだろうとの事らしい。

僕はそれまで毎日の日課を熟していく、その間にも病院内で調べることのできる異能力育成校の事を調べていく。そんな毎日を過ごし九月、十月と日は進み、今日ようやく退院日となった。

退院日には月火も迎えに来て、病院の先生方も見送りに来た。


「体を壊さないように気をつけてくださいね」

「はい、長い間ありがとうございました」


 僕は深く一礼すると、病院を後にした。

病院の外のは月火の車がありそれに乗り込むと、車は動き始めた。

なんだか改めて思うと変な気分だ、僕の感覚では中学3年生で記憶が止まり年齢は14歳で妹は今23歳、なんだか童話の浦島太郎の様な気分だ。

僕は妹だけど姉な月火の運転している姿を見ながらそんな事を考えていた。


「あっ、お兄ちゃんはもうすぐ誕生日だよね、15歳?25歳?わからないけど誕生日会しないとね」

「そういえばそうだった、毎年みんなで誕生日会してたもんね、僕もなにか手伝うよ」

「うん、一緒に部屋を飾ろっか」


 昔、家族全員で誕生日会をしていたのを思い出す、僕の誕生日が十月三十一日という事もあり家族全員がハロウィンにちなんで仮装して楽しんでいた。

今は両親がおらず月火と二人だが、十年間の穴を埋める事が出来るのなら精一杯一緒に楽しもうと思う。

月火も後ろ姿からだが、なんだか楽しそうにしているのが伝わってくる、必ず成功させなければ。


 車を走らせること30分ほど、月火が住んでいるアパートは少し中心街から離れていた。

僕は少ない荷物を持ち、月火が住む部屋へ入る。月火の部屋は20代前半の女性が一人暮らしをするには広すぎるくらいだった。ますます月火が何の仕事をしているか気になるが秘密だと言われては聞き出せない。

 僕は使っていない部屋に荷物を下ろすと月火と僕は二人で昼食の準備を始める。

これからは月火と二人暮らしになる。楽しみだが不安があった、それは昼食の時に思い出す。


「そういえば月火、料理出来たっけ」

「当たり前じゃない、外食が多いけど一人暮らしなんだよ?任せなさいッ!」

「そっか、わかった」


 僕の考えは杞憂に終わりそうだ、確かにあれから十年経っているのだしかも一人暮らしならば料理の腕は上がっているだろう。

 僕はまな板の上の野菜を切りながら横目でチラチラと月火の様子を見る。

月火は手際よく鍋をかき混ぜていた、内心ほっとするが、それはすぐに間違いだったとわかる。

鍋から異様な匂いが部屋に立ち込め、僕は恐る恐る鍋の中を見ると、謎の液体がそこにあった。


「月火さん、なんだいこれ」

「え、スー……プ?」

「うん、取り敢えず月火は部屋で待機で」


 やはり月火の圧倒的料理センスには惚れ惚れする、悪い意味で。

僕は鍋の中身を流し台へ流すと、中からは異様な形をした野菜がゴロゴロと転がってきた。

これを食べれば不老不死という異能力を持つ僕でさえ、死んでしまうのではないかと思うほどだ。

呆れて物が言えないで居ると、月火が後ろから言い訳の様に、いつもは上手く出来ていると言っていた。

その言葉を右から左へ聞き流しながら僕は料理をしていく、ため息を付きながら今日からは僕が料理担当になるだろうと考えていた。



 ―――月火の家に住みはじめて二週間近くが経とうとしている。

そして今日は待ちに待った僕の誕生日である、僕は何の仮装をしようか考えていた。

何故当日になるまで考えていなかったのかは、日々の筋トレや走り込み、調べ物などに追われていたからである。

 トレーニングを始めてから既に2ヶ月以上行っている日課、すでに僕の体に変化が出ていた。腕や脚、腹筋は勿論のこと全身に筋肉が付き、体は引き締まっていた。問題視していた体力強化だがそれも順調である、既に十キロ程度ならば休憩なしで走れる程には体力が付いた、向上力強化様様だ。


 そして僕は次の段階を考えていた。

僕が目をつけたものは昔動画などで流行っていたパルクールだ、何故僕がパルクールに目をつけたのかには理由がある。

身体能力は向上したが、それに使いこなす為の動きを知らない。そして対人戦や動物相手に有効になるであろう、動きを取り入れようと考えた。それがパルクールである、どんな地形でもそれを活かし体を動かしていく、今の僕ならば練習をすれば出来るようになるだろう。

 だが現実は甘くはなかった、過程で何度も怪我をしては不老の効果で体は治る事を繰り返しながら練習していく。


 しかし今日はその日課も休みの日、朝から僕は仮装の事で頭がいっぱいになっていた。

何をしようか迷っているとふと、考えが纏まる。


「僕ならあれがいいかもしれないな」


 そう言うと僕は準備を始めるのであった―――。


 夜になり月火が返ってきた、部屋の中に備え付けのチャイムが鳴り響き、僕は玄関へと急いだ。

玄関を開けると、何やら変なものが立っていた。


「フランケンシュタイン……?」

「あったりーお兄ちゃんはやっぱり吸血鬼?」

「そうそう、不老不死ってイメージがぴったりじゃないかな」

「いいねいいね、似合ってるよっケーキも買ってきたから一緒に食べよっ!」


 月火が何故フランケンシュタインになったのかはあえて触れないでいると月火から説明が入った。

お兄ちゃんは吸血鬼しそうだから、西洋風にしようと思ってねっとドヤ顔をしていたが意味がわからない。

どうやら昔と変わらず少しおちゃめな所は治っていないようだ、僕はそんな事を考えながら誕生日を楽しんだ。

 ちなみに親近感が湧くように優と僕の誕生日はかぶせました。

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