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死なない僕が英雄になるまで。  作者: 穂藤優卓
序章
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第四話 僕の異能力

 対異能機関に入ると中は役場の様になっていた。

異能機関というのだから重々しい雰囲気をしているのかと思って拍子抜けである。

受付へ行くと、名前を確認され一枚の紙を渡される、紙には番号が書かれており順番が来たら呼ばれるらしく、僕は近くに会ったソファへ腰を下ろした。

 ソファに座ると、周りを見渡す。周りには中学三年生ぐらいと思わしき人達が落ち着かない様子で座っていた。どうやら周りの人達も僕と同じく異能力を調べにきたようだ。


 僕も他の人と同様にそわそわと落ち着かない様子で座っていると、隣に一人分の空間を開け女の子が座った。女の子の容姿は、髪が短く切りそろえられ目は大きく可愛らしい。

そわそわと落ち着かない様子で座っている、どうやら隣の女の子も僕と同じく異能力を調べに来たのだろうなといった感じだ。

 待ち時間が長く暇な時間が続いた、異能力が使える物なのか不安もあり忙しなく辺りを見渡していると隣に座った女の子と目があってしまう。少し気まずい思いをしすぐに目線を外すが、隣に座った女の子は僕に話しかけてきた。


「君も異能力を確認しにきたの?」

「そうだよ、何だか不安でさ」

「私も同じ気持ちだよ、けどさ何だかワクワクするよね、異能力って普段の生活じゃ使えないから確認してないんだけど、自分が何を出来るのかなって思うと楽しくなっちゃう」

「だよね、僕もゲームみたいに炎とか出せたらかっこいいんだけどなぁ、そういえば君も異能力校に行くの?」

「うん、それで今日調べに来たんだ、私にあった異能力だったらいいんだけどねぇ……」


 そんな他愛のない話しをしていると、番号が呼ばれた。その番号に反応するように隣の女の子はソファから腰を上げた。


「呼ばれたみたい。あっ、それと私の名前は桐原早霧っていうの、もし同じ学校だったらよろしくね」

「うん、わかったよ。僕の名前は伊藤優っていうんだ、またね」


 早霧は可愛らしい笑顔で手を振りまたねと言うと奥の部屋へと消えていった。

僕はその早霧の背中を見送ると、自分の番が来るまで大人しく待つことにした。

 それから十分後程で僕の番号が呼ばれる、僕は席を経つと、先程早霧が入っていった通路へと足を運んだ。

 通路の先には一つの個室があり、職員が座っていた。その前にある机には一枚の用紙があり、僕は椅子に座りその用紙に目を通した。用紙の内容は生年月日や住所などの個人情報の記入欄の他に、異能力についての注意事項が記されていた。

 注意事項の内容は大まかに纏めると、異能力の悪用した場合は法律に基づき罰せられる事、そして確認された個人情報は対異能力機関内で厳重に保管される。

 次にもし新しい異能力が確認された場合、定期的な情報の提供と能力を一般に公開するか否かの選択が出来るらしい、重要なことはそれくらいだった。

 僕は用紙の下にある空欄に自分の名前を記入し、拇印を押すと職員へと渡した。職員は用紙に目を通すと、異能力の検査についての説明を始める。

異能力の検査には検査対象の血液が必要らしく、注射をする。そしてその後、異能力の検査を行い十分程度でわかるらしい。

 僕は了承すると、職員は僕の腕に注射し血液を抜いた。その後、言われるがまま僕は席を立ち待合室へと移動する。


 待合室で待機しはじめて既に三十分が経過した。

職員の説明では十分程度で終わると聞いていたがあまりにも長い待ち時間に僕はそわそわと体を揺らしていた。

 何か問題があったのではないか、もしかしたら自分に異能力が無く職員が混乱しているのではないか、僕は不安で押しつぶされそうになっていると、ようやく僕の名前が呼ばれた。

 待ち望んでいた瞬間に僕は勢いよく椅子から腰を上げ職員の後をついていく、先程の個室でまた説明が行われるのだろうかと思っていたが違った。通された部屋は何やらお偉方が来るような豪華な部屋へと通される、僕は何事かと不安になり辺りを見渡す。

 その部屋には真ん中に机が置かれており、ソファには屈強な男性が座っていた、先程の職員が説明するものだと思っていたがどうやら違うようだ。僕はソファの横に立っていると座ってもいいぞと、腹に響くような低い声で指示され、言われるがままソファに腰を下ろした。

 目の前の男性は僕を睨むような目で見てくる、体は筋肉に覆われ顔には無数の傷があり歴戦の剣士の様な風貌だ。本当に職員なのか疑問に思うほどの容姿である。


「いきなりですまないが、少し事情が変わって俺が説明することになった。一応心の準備はしておいてほしい」


 男がそう言うと、何やら部屋の中は息が詰まる様な重苦しい雰囲気となる。

僕は覚悟するように生唾を飲み込み、心の準備をした。


「どうやら良いようだな、それでは説明していく。わからない事があったら後で聞いてくれ」


 男はそう言い終えると、一呼吸付き説明を始めた、話の内容は僕の異能力について。

僕の異能力は検査によって明らかになったが二つあるとの事、この話を聞き僕は少し浮かれたが、どうやら二つ持ちは結構多いらしい、珍しいのは二つ以上の異能力を持つケースとの事。そして極稀に後天性で能力が発動する者も居るらしい。

 その事を聞き少しがっかりするが、本題は別にあった。本題は僕の発症した異能力ついてらしい。

1つ目の異能力は『向上力強化』という異能力らしく、人より早く筋肉や知恵などといった物を身につけることが出来る、だが向上力とついているだけあって努力しなければ身にならないとのこと。

 そして問題となっていたのはもう一つの異能力であった、その異能力は今まで発見されておらず、新しい異能力である。

 異能力が発症して既に十年が経過し、新しく発見される異能力も無くなっていた時期にこれだ、この異能力がもしあまり使えないものならばここまで大事にはならなかっただろう。

 だが僕の場合違った、僕の異能力は『不老不死』、字面でわかる通り、老いず死なずの異能力、不老だけの異能力ならば今まで数件の事例があったが、そこに不死の能力が付けば話しは変わってくる。


 取り敢えずと男は不老の事だけの説明を始める。

不老とは細胞の維持、再生の効果らしく年齢を重ねていく過程での細胞の破壊を和らげ破壊された細胞を再生して行く事が不老だという。

そして不老にはもう一つの効果があった、細胞の再生は多少の傷ならば瞬時に癒やすことも出来るらしい。次に不死の説明になるかと思ったが、不死は事例が無いために字面だけで判断する事しか出来ないとだけ男は言った。


 僕はピンと来る不老不死の不老の能力に思い当たる節があった。

それは十年間の意識不明の状態にもかかわらず、目覚めた後にすぐ動けたことである、普通は筋力の低下が著しく歩くことさえ困難なはずだが、実際に一週間そこらで外を歩いている。

 次に僕の顔についてだ、十年間もあったはずなのに顔が一切老いていなかった、これは間違いなく不老の影響によるものだと合点がいった。不死は死ななければわからないので今は考えても仕方のないことだ。


 続けて男が説明を始める、異能力には等級が付けられる、A~D等級でその等級は珍しさや有用さが付けられるらしい。

僕の異能力はA等級と言っていいのかすらわからないほど希少性のあるものらしく困惑したとのこと。

 ここで男は一呼吸付くと、鋭い目つきは更に鋭くなった。

 

「そしてここで本番だ、君の異能力について、この情報を公開するか否かだが、公開しない方がいいだろう」

「何でですか?」

「そうだな、例えばの話だが、もし老いず死なない体の人間がいると公表すると仮定しよう、一般の人達はすごい能力だで終わるかもしれない、だが全員がそうではない、その能力を悪用しようと動く人もいるかもしれない、その人達から自分の身を君は守れるかい?」

「いえ……無理だと思います」

「不老不死とは言え薬物や催眠と言った異能に対抗できる術を君は持たない、ならば公表せず対異能機関の加護下にいるべきだと思う」

「しかし、僕は異能力校に行こうと……」

「それも一つの手だろうな、自分を守るすべを身に着けて自分で対処が出来るのならばそれが一番だ、しかし不老不死がバレないよう上手く立ち回る様に、学長にはある程度事情を説明しておこう」

「わかりました……」

「重荷を背負ったがこれはチャンスだと思って欲しい、未来の日本の為に頑張ってくれ、それと自己紹介がまだだったな、俺の名前は金剛 敦だ、また合う機会があれば気軽に声をかけてくれ」


 そこで話は終わり、最後にお礼を言うと僕は扉を開け部屋を出ていく。

再び最初で待っていた待合室へ行くと、今から帰ろうとしている早霧がそこには居た、既に異能力の確認は終わっているだろうが何故居るのだろうと思っていると、早霧も僕を見つけたのかこちらへ小走りで駆け寄ってきた。


「優君どうだった?」

「そうだね、僕は結構いい異能だったよ、そっちは?」

「私も結構良かったよ、私はどちらかと言えばサポート科になるのかな?回復系だったよ、優くんは?」


 僕は一瞬、不老不死の事を早霧に伝えようとしてしまう、寸前の所で口を噤む。

少し早霧は不思議に思ったのか首を傾げ僕の言葉を待っているようだ。


「僕は向上力強化らしいよ」

「じゃぁ優君は戦闘科か研究科になるのかな、私とは別々になりそうだね」

「そうだね、でもお互い無事に受かるよう頑張ろ!」

「うん!」


 そこで会話は終わり、二人は別れた。

僕は先程の迂闊に話しそうになった事を反省し、扉を開く外へと出た。タクシーを捕まえ病院へ帰る最中、考え事をしていた。

それは僕の異能についてだ、他言無用だと言われた異能だが、自分の唯一の肉親である月火には伝えようと思っている。月火にも言わないという選択肢はあるが、家族にだけは嘘を付きたくないという思いで、次にあった時には正直に話そうと決めた。



 不死はいらないけど不老は欲しいですね。最近老いを感じます……。

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