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死なない僕が英雄になるまで。  作者: 穂藤優卓
序章
3/33

第三話 対異能力機関

 

 朝が来た、目を覚まし洗面台で顔を洗ういつもの日常、だが今日はやることがあった。

昨日、月火が帰った後に医者とどの程度、体を動かしていいかや、外出はいいかなどの相談をした。

 医者曰く、体を動かす事はこの間の検査で問題が確認されなかったから大丈夫との事、しかし激しい運動は控えておくよう言われた、けど軽い筋トレ程度ならばと了承してくれる。

外出の件もタクシーなどの乗り物を使って移動する場合のみと条件を出され許可が下りた。


 僕は相談した事を思い出しながら、病院内にあるリハビリ施設へと移動した。

リハビリ施設では色々な人が居た、車椅子に乗った人や手すりに捕まり歩行している人、僕はその人達の邪魔にならないよう部屋の隅へと移動する。

 今日やることは基本的な筋トレである、腹筋や腕立てなど皆が行っているような普通のメニュー。

医者からは過剰にしてはいけないと言われているので二種類のトレーニングを30回2セットで行っていく。

 以前は自衛隊の両親に憧れそこそこ鍛えていたが、流石に十年も寝込んでいては筋肉は萎んでいた。

再び鍛え直すという意気込みでトレーニングに励む。


 そして今日の筋トレが終わる、昔ならばこの程度は余裕で熟せたが流石にキツく途中で休憩を挟まなければいけなかった。

体力の低下が酷く体力の強化は今後の課題とし、僕は疲れた体を休めるため椅子に座る。

これから毎日、退院するまでこれを繰り返していく、今後様子を見て医者と相談し回数は増やしていくつもりだが、この速度で間に合うのだろうか疑問に思った。

 今年受験をするのなら後半年しかない状況で、受験に備えた人達と肩を並べる事は難しいのではないか、ならば僕はどうするべきか考える。

 そこで思いついた事は、自分の異能力についてだ。まだ自分が何の能力を持っているかはわからないが、それに見合ったトレーニング方法を考え効率良く鍛えていく事が一番いいのではなかろうか。

 トレーニングが終わり、既に昼頃。今から対異能力機関へ連絡し予約しておくほうがいいだろう。

思いついたら即実行、僕はすぐに椅子から腰を上げ歩き出していた。


 向かう先は僕の受け持ちの先生の場所。

相談の内容は今日の筋トレの事を話す。筋トレはまだ様子を見ていて欲しいだそうだ。

歯がゆい思いだが仕方のないことだと割り切り、僕は昼食を取った後、対異能力機関へと電話をかける。

異能力を調べるには事前に予約のような形を取らなければならない。僕はスマホから番号を調べ電話をかけると、すぐに電話は繋がった。

 電話が繋がる、職員に異能力を調べたいという事を伝えるとすぐに日程が決まった。日時は今から一週間後の午前11時、僕はメモを取ると、そこで電話を切った。


 電話が終わると、する事が無くなり、何となく部屋に備え付けられたテレビを付けるがこの時間帯にバラエティはやっておらずニュースばかりだ。十年も年月が経ったはずなのにニュースの内容はあまり代わり映えはしなかった。だが一つだけ気になるニュースを発見する


『今日未明、何者かによる異能力事件が発生した模様です、被害者は対異能力機関会長の森 英文氏である事が確認され、異能力による殺害の痕跡が発見されたと報告されています、加害者は今も尚見つかっておらず、近隣の方々はご注意を―――』


 そのニュース内容は異能力事件であった。

何やら国の偉い人が誰かの異能力によって殺害されたらしい、詳しい内容はニュースでは出なかったが結構な話題になっているらしく、別のニュース番組を見ても同じ報道がされている。

 どうやら国の偉い人は、対異能力機関に所属していたとの事。僕はこんな事件もあるのだなと思いながらチャンネルを切り替えた―――。

 


 テレビを見終えると既に夕方になっていた、窓から外を見ていると部屋の扉が開く音がする。

扉の先に居た人は月火だった、疲れた様子から考えるに仕事帰りなのだろう。僕は気になり月火が今何の仕事をしているのか質問してみる。


「秘密だよ」


 月火は可愛らしい仕草で人差し指を唇の前に持っていきそう答えた。

秘密ならば仕方がないと僕は諦め、今日の出来事を話す。月火も異能力については早めに知る方がいいという事で賛成してくれた。

 賛成とついでに月火の異能力は何か聞いてみたが、この内容も秘密とだけ言われ話題を逸らされる。

どうやら昔のように兄に何でも相談する妹は大人のなったのだという思いに僕は少し気を落とした。


「それで、これが願書ね、そういえば住所の欄だけど取り敢えず私の家の住所でいいよね、退院後も私の家に住んでもらうつもりだから」

「ありがとう、それよりお母さん達が亡くなってから月火は今までどうやって過ごしてきたんだ?」

「それはね―――」


 月火は僕が眠っていた十年間の事を話し始めた。

両親が死去し身寄りのなかった月火は、親戚の家で預かってもらっていたらしい。

その時、親戚の人達は僕の入院費も払ってくれたらしく、時間がある時にお礼をしに行くことを決める。

 月火が高校を卒業し、仕事を始めて今は一人暮らしとのこと、今は僕の入院費を月火が払ってくれているらしい。


「そんな事があったんだね」

「うん、けどいい人達だったよ、お兄ちゃんも退院したら一緒に会いに行こうね」

「そうだね、けど受験が終わってからかなー」


 そんな話しをしながら気づけば既に日は沈んでいた。

月火は家事が終わっていないということで、今日は早めに帰宅した。

僕も夜中することが無く、すぐにベッドへ横になるとそのまま意識を手放した。



 あれから一週間後―――。

僕は身支度をしていた、今日は予定していた対異能機関へ行く日だ。

自分が何の異能力を持っているかわからないが、気持ちが高揚しないはずがない。駆け足気味に身支度を終わらせる、月火が置いていったお金を手に持ち、約十年ぶりとなる外へと出た。


 外出した感想だが、以外にも普通だった。もっと隕石の影響で建物が崩れていたりしているのだとばかり思っていたが、普通の都会と言った感じ。そして10年ぶりの外出した感想は感覚では一週間とちょっとしか経っていないのだから別に何も感じなかった。


 対異能機関がある場所は新宿区にある、新宿区の中心にある役所のような場所だと聞いている。

僕は早速、病院の前に止まっていたタクシーの窓を叩き、車の中に入ると、運転手に場所を告げた。

タクシーはすぐに発進すると、僕は窓から外の風景を眺めていた。

 移動中もあまり代わり映えのしない風景。だが一つだけ目につく建物があった、それはスカイツリーのすぐ近くにある、それ以上に大きなタワーが立っていた。

あれは何だろうかと、窓からタワーを凝視していると、バックミラーで僕の事が見えていたのか運転手が説明を始める。


「あれは監視塔らしいよ、以前隕石の騒動があった後、もしもの時に備えて国が建てたものらしいが、金の無駄にならなきゃいいがねぇ」


 運転手はやれやれと言った様子で再び運転に集中しはじめる。

僕はスカイツリーにも登れるのならあれにも登れるのだろうと考え、今度月火と一緒に行ってみようと思った。

 病院から出発し、30分程が経過すると、タクシーは停まった。

どうやら目的地に着いたらしい、車から降りると目の前には大きな建物があった。

新宿区の中心によくこんな大きな建物が建てられたものだ。僕は逸る気持ちを抑え、建物の方へ歩き扉を開いた―――。


 僕も何か能力に目覚めたらッ!

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