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死なない僕が英雄になるまで。  作者: 穂藤優卓
序章
2/33

第二話 異能力育成校

 

 月火が帰った後、僕は寝られないでいた。十年間も寝ていたのだ無理もない。

あの後、医者と看護師が来て精密検査が行われた、よくわからない機械に何度も通され確認される。

そこで従来では行われていない事をした、一人の医師が僕に手をかざすと異常はないとだけ別の人へと伝えていた。

 僕は気になって医者に何をしたのか聞くと、体を調べたらしい。どういう意味かわからず再び質問すると、医者は異能力を使用した言った。

 月火も言っていたが詳しい内容までは聞かなかった、異能力とは何かといった程度である。

僕は気になり医者に異能力について尋ねると、会話も診療の一つと考えているのか快く質問に答えてくれた。


 まずは一つ、異能力は個々により変わるらしく、医者が使った異能力はMRI等の機械で見ることの出来ない血の流れや細胞に異常が無いかを見たらしい。

 他にも看護師はゲームで言うところの治癒士の様な力で体の小さな傷を直したりすることも可能だとか。

 そして二つ目に、異能力の使用制限について聞いた。異能力によっては一日の制限があるらしい。

制限以上に異能力を酷使すると酷い倦怠感に襲われ、最悪倒れるとの事。僕がもし異能力を使う機会があったら気をつけなければ。


 この二つを聞いた後、僕の異能力はどういう能力なのか聞いてみるが、医者もそれについてはわからないらしい。

 その言葉を聞き僕が肩を落としていると、医者はもし自分たちみたいに国の公認を受けた仕事につくのなら、調べる機関があると教えてくれた。

 僕はその話しを聞き、俄然興味が湧いた。

医者との話も終わり病室へもどる。僕は今日の話しを思い出しながらベッドで横になっていると、次第に眠気に襲われ、いつの間にか眠っていた。

 


 次の日の朝。

僕は無事に目を覚ました、十年間も眠っていたのだ。また長い眠りにつくかもしれないと思っていたが杞憂だったようだ。

 昨日の検査後、体の拘束具は外され、点滴だけの生活となった、体の異常は無く正常に動くと診断されて今日は病院内を歩いてもいいと言われている。

 

 早速僕はベッドから体を起こし、病室を出る前に人前に行くのだから身だしなみを整えようと、個室にある洗面所へ移動する。

 そこで僕はある事に気づく、それは僕の顔が一切変わっていないことだった。

寝たきりだが十歳も歳を取っているのだから、顔は大人へと変わっているとものだと思っていた、だが鏡に映っていたのは見慣れた自分の顔。

どう見ても二十台には見えないその顔に違和感を覚える。

 何故変わっていないのだろうか、月火はあれほどまでに大人な女性へと変わっていたのに。

何度も手で頬を引っ張り、顔を歪ませてみるが変化はない、だが僕には何故こんな事が起きているのか予想はついた。これは僕の異能力に関係している事なのかもしれないと。

 ならばどういう異能力なのか、顔だけが成長しない体になったのか、それとも老いない体になったのか、だがそれは今考えてもわからない事だ、退院したら調べにいってみよう。一旦思考していた事を頭の隅に置き僕は顔を洗った。


 身だしなみを整え病室のドアを開ける、なんだか不思議な気分だ。

自分の感覚では一昨日まで普通に生活をしていたのに、実際は十年が経過したというのだから、だが十年ぶりの外は以外にも普通だった、ただ点滴が邪魔だなと思うだけ。

 点滴スタンドを手に片手に移動していくと広間に出た。中学生くらいの子供達が談笑している。

僕はその子供達と少し離れた距離に座ると、辺りを見渡した。十年経っても病院は変わらないみたいだ。

辺りを見渡していると、子どもたちの話し声がこちらまで聞こえてくる。


「お前退院したら異能力校に行くの?」

「迷ってるんだよね、今募集してるみたいだし俺もうすぐ退院だから願書出してみようかな」

「俺もそうなんだよな、んじゃさいつか外出許可でたら一緒に対異能力機関で俺たちの異能力が何か見に行かね」

「それもいいな、そうしよっか」


 子どもたちの会話は異能力学校についてだった。

どうやら今は受験者を募っているらしい、僕もすぐに退院出来るのなら興味がある。

僕は広間を後にし次は中庭まで歩いていく。僕の個室は何故か窓が無く閉鎖的な空間で久しぶりに外の空気を肺に入れた。中庭にあるベンチに腰を下ろすと知らないお婆さんが隣に座ってきた。

 お婆さんはこちらを見ると笑顔で小さく会釈をする、僕もそれに答えるように会釈した。


「初めて見る顔だね、坊やは何処が悪いんだい?」

「僕はもうほとんど大丈夫みたいです」

「そうなのかい、それは良かったね、ところでよかったら占わせてくれないかい?」

「え?あぁ、お願いします」


 唐突に話題が変わり一瞬戸惑ったが、お願いすることにした。お婆さんは瞼を閉じ、僕の手を掴みだす。何をしているのかわからないが、僕はただじっと待った。

 待つこと数分、お婆さんは手を話し瞼を開いた。


「そうかい、君はこれから色々な苦難が起こると思うけど頑張れば報われるよ」

「はぁ…、わかりました」


 お婆さんは含むような笑みを浮かべると、ベンチから腰を上げ何処かへと去っていった。

僕はその後ろ姿を見ながら考え事をした、さっきの占いはお婆さんの異能力なのだろうか、曖昧な占い結果だったが僕はお婆さんの言葉を胸に刻む。


 散歩をしていると12時の鐘が鳴る、どうやら昼になったようだ。僕は部屋へと戻ると、扉の先には月火が居た。月火は僕を見るやいなや歩いても大丈夫なの体は平気なのと質問攻めをされたが、医者に大丈夫だと言われたと説明すると、ホッと息を吐いた。僕はベッドへと腰を下ろすと、月火も椅子に座る、そして僕は疑問に思っていたことを月火に聞くことにした。


「そういえばお父さんとお母さんは来ないの?」


 その質問に月火は明らかに動揺していた。

目を泳がせ、口を開こうとしまた閉じるの繰り返す、僕はその様子を見て不安が募る。


「お兄ちゃん、聞いてほしいんだ、お母さん達は8年前に亡くなったの……」


 その言葉に僕は戸惑った、最初は聞き間違いだろうと何度も月火に確認するが、返ってくる言葉は同じ。両親は僕が眠っている間に亡くなった、その事実は受け入れがたい事だった。

 何故、二人は亡くなったのかを月火に聞く、すると月火は昔を思い出してか涙を流しながら僕に説明しはじめる。

 僕の両親は二人とも自衛隊だった、二人とも正義感が強く自分が人々を守る事を誇りに思っていたほどの人。二人は隕石による世界の異変が起きた直後、自衛隊が異変の対応をしていたらしい。

 そこでの事故で帰らぬ人となったと、死因は知らず両親の死は人伝いで聞いたとの事。


「そうか……そうだったのか……」


 死の理由を聞けば納得がいく、あの二人ならば自分の命を捨てても無力な人を守っただろうと。

僕は二人を親としても人としても尊敬している、その二人の様になりたいとさえ前から思っていた。

ならば僕はその二人の意思を継ぐべきではないだろうか、そして残った大切な妹を守れるほどの力を付けたほうがいいのではないだろうか。

 僕の中で考えていたことが、今纏まる。僕は僕に出来ることを全部やろう、両親の意思を継いで、妹を守る、その為にはまず強くならなければならない。ならば――――、



「僕は決めたよ、月火を守るために僕は異能力育成校に行く」

「え、そうだよね、お兄ちゃんも考えることは一緒なんだね……」

「どういう意味?」

「秘密だよ、それならお兄ちゃんの異能力を調べなきゃいけないね」

「月火は僕が異能力校に行くのを駄目って言わないのか?」

「まぁ話をしたときこうなるんだろうなーっての思ってたからね」


 月火はそう言うと、先程まで泣いていたのが嘘のような笑顔を僕に向けた。

それから月火は僕に異能力校に入るまでの説明を始めた。


 まず異能力校には年齢制限がある、高校と同じく15歳以上の人が入学できる、年齢はクリアしている。

そして次に入試の事、今日の日付は8月12日、出願締切が1月で試験当日は2月に行われるとの事。

いまから半年程しか時間がないことに僕は焦るが、月火は焦ってもしょうがないと、僕を宥めた。

 そして最も大事な事は入学試験である、異能学校の入学試験は実技だ。異能力を使用し何処までの事が出来るかの試験。

 この試験内容は異能学校の学科によって変わるらしい、主に異能動物や異能力による犯罪者を取り締まる仕事に将来付く人は戦闘科、異能力による救助や戦闘の補助といった事を行う人はサポート科、異能力の実験や研究を主にした研究科に別れる。

 僕の場合は考えているのは戦闘科かサポート科になる。

戦闘科の試験は模擬戦闘による試験、サポート科は職員の戦闘補助等が行われるらしい。


「ここまではいい?」

「うん、続きをお願い」


 月火は一呼吸入れると、再び説明を始めた。

次に願書記入欄にある自分の異能力を書く欄がある為、それまでに僕の異能力を調べなければならない。

そこで、出てくるのが対異能力機関である、対異能力機関は各所に点在しており、異能力事件専門の警察のといっていい、そこで自分の異能の力も調べることが出来るらしい。

 調べるためには事前に予約をし、後日行うとのこと。今の時期は異能高校に行く人達が多いらしく混み合ってるらしい。もし行くことになったのなら事前に電話をしておくといいとの事。


「これくらいかな、思い出したことがあったらまた明日にでも話すよ」

「わかった、それで今の僕は何をすればいいと思う」

「うーん、トレーニングかな、戦闘科もそうだけどサポート科も最低限の体力はいるからね」

「わかったよ、お医者さんに相談してどれくらいの運動をしていいか聞いてみる」

「それじゃ私はもうすぐ昼休憩終わるから行くね」


 そう言ってそそくさと月火は部屋を出ていった。

昼休憩と言っていたのだから、月火は今は学生じゃなく社会人として働いているのだろう。

自分の入院費も出している様だし、僕も甘えてられない。異能学校には特待生制度もあるらしく、それに入れるよう努力をしようと僕は思った。

 意識を失っていたら両親が死んでいた、考えるだけでもショックですね。

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