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死なない僕が英雄になるまで。  作者: 穂藤優卓
第一章 成長編
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第十八話 新しい異能力

 僕は夢の中に居た、体中が燃え上がり炭になっていく体、だが僕の体は動かない。

炎を消そうと藻掻くが炎はより燃え広がっていく、そんな悪夢に魘され飛び起きた。

体中に汗を掻き寝ていた制服がべっとりと濡れている、気分が悪い目覚めだ。

未だ回らない頭を覚醒させるように目を擦り辺りを見渡すが、ここは何処だろうか知らない部屋だ。

洋風な作りの部屋に最低限の家具が置かれた簡素な部屋、自宅ではないことは確かである。

僕は気絶する前の記憶を思い出す、確か体が突如燃え気を失い男性の声が聞こえたまでは覚えている。

起き上がろうと体を起こすが思うように動かない。


「おっ、起きたか」


 その聞き慣れない声に僕は視線を向けると。部屋の扉の前には知った顔が立っていた。

金剛 敦、対異能力機関や花見の時にお世話になった人だ、しかし何故僕は金剛さんの家に居るのだろうか。

寝た状態で首だけ動かし金剛さんに尋ねる。


「覚えてないのか、まぁ無理もないか。優君の体に起こったことを教えるよ」


 金剛さんは説明を始める。僕の体に起こった事は異能力の暴走であった。

稀に起こる現象らしく、異能力を使うための体が出来上がってない幼子や、後天的に異能力が発症した時に起こる現象らしい。

僕の場合は後者だという、新しい異能力の発症。何か大きな出来事がきっかけで発症するらしい。

思い当たる節があった、体が異常な熱を帯び始めたのは花見をした日からだ。何がトリガーとなったのか、それは言うまでもなく死んだことだろう。

死にかけて新しい力に目覚める、某アニメの戦闘民族の様な内容だが実際に起こったのだ。

金剛さんは僕の異能力について知っている、それならば相談しても大丈夫だろう。


「そうか、不死を発動してしまったのか……。気付かれた可能性が高いな」

「注意していたつもりなんですが、状況が状況だったので、すみません」

「いや、いいんだ。勇敢な行いをした結果での事だ、しかし困ったことになったな」

「何がですか」

「知らなくて当然か、君も片足を突っ込んだのだ。機密だが説明しておいたほうがいいだろう」


 金剛さんは話すか最後まで悩みながらも、僕に説明を始める。

以前、僕が花見をしていた日に出会った黒装束の人達、その正体である。

最近、巷で問題となっている異能力事件の首謀者、組織名はわかっていない謎の組織。

だが一点して共通点があるとのこと、数名の身柄を確保し身辺調査をしていく中でわかっていたことだが、全員が逃亡者、そして国に仕えていたという事実。

最近では動きが活発になっており、行方不明事件も起こっているらしい。

そんな過激な組織に、僕の異能力がバレた場合、何かしらアクションがある可能性があるという事らしい。

それが話し合いなどで解決するものならいいが、そうとは言い切れない実力行使に出る場合もある。


「てことだ、という事で君を俺自ら鍛えることにした」

「え?どういう事ですか」

「まぁ乗りかかった船だ、事情を知っている者も少ない。それに感だが君とは繋がりを感じるんだ」

「繋がり?」

「まぁ感だ、それよりも異能力についてだ。新しい異能力が発症したのなら何か感じないか?」


 金剛さんに言われ気づいた、僕の中に何かが渦巻くような感覚が残っている。

そして何故か僕はその扱い方を知っている、以前までの異能力は使い方などはわからなかったが今回は違う。

僕の新しい異能力、それは炎を操る異能力だと感覚で理解した、そしてその使い方も理解できる。

早速、僕は使ってみたいという欲求に襲われ、体を動かそうがするが未だに体は動かない。


「いい忘れてたが、暴走を抑えるため薬を飲ませたから今日一日は寝たきりになるぞ」

「え、じゃぁ学校は?」

「それも大丈夫だ、以前月火さんとは話をしたことがあるから、連絡しておいた。事情も事情だからな数日間は俺の家で安静にしておくといい」

「わかりました、それでさっき言ってた鍛えるってのはどうするんです?」

「それはまぁ言葉通りの意味だ、襲われても自分で対処が出来るように俺が鍛える」

「ありがたいですけど……、お手柔らかにお願いします」


 僕はこれから始まるであろう金剛さんとの特訓を想像して体を震わせていた。

見た目から察するに想像以上の特訓が待ち構えているのだろう、だがそれも僕の為だと思うと嬉しく感じる。


「それじゃ、今日は寝ておくといい、明日の朝から早速始めるからな」

「わかりました」


 金剛さんは部屋を出ていくのを見送り、僕は目を閉じ金剛さんが言っていた事を整理していく。

僕を狙う可能性のある黒装束の謎の組織。そして僕の新しい異能力。

これから様々な事が加速的に進むだろうそんな予感に身震いがする。

今までの平和な日常が崩壊する音、月火にこれ以上の心配を掛けないよう僕は金剛さんに全てを教わる気構えをする。


「新しい異能力か……」


 僕は小さく呟くが実感が沸かない。

頭の中では新しい異能力が発症している事は把握している、そして少し怖い。

そんな事を考えながら、いつしか僕は眠っていた―――。



「お……起きろ、起きろッ!」


 聞き慣れない男の声で目を覚ます。

そういえば金剛さんの家で寝ていたのだった、声の主はもちろん金剛さん、どうやら寝坊したらしい。

眠気が取れず気怠い体を動かすと、体が軋むが昨日とは違い普通に動いた。


「ようやく起きたか、顔を洗ったら早速走るぞ」

「わかりました、洗面所は何処にありますか?」

「部屋を出て右だ、それと服も用意してある。それに着替えたら玄関に来るといい、玄関はこの部屋から洗面所の方へ歩いていくとある」


 金剛さんは先に部屋を出て玄関で待つようだ、僕も待せるわけにはいかず、すぐに洗面所へ行き眠気を覚ます。

洗面所にはランニング用の服が用意されており、それに着替え玄関へと向かった。

玄関から外へ出ると、日はまだ昇っておらず辺りは暗い、そんな時間から金剛さんは動き出す。

まずは柔軟をする、次に走り込みとは言っていたが、どのくらいの距離を走るかわからない、離されないよう後を付いて走っていく。


 走っている最中は常に無言、走ることだけに集中する。

かれこれ一時間ぐらいだろうか、既に息が切れ体力も底を尽き始めている。その様子を察してか足が止まった。


「結構体力はあるな、及第点だろう。それじゃ家に戻るぞ」


 数分の休憩を取り家へと戻る頃には既に夜が明け、太陽が顔を覗かせていた。

家へ戻ると、再び体を解す為に柔軟を行う、基本的な事だが一番重要である。

そして器具を使っての筋トレを行っていく、僕はハードなメニューに付いていくことがやっとだが、金剛さんは難なく熟していく。この人の体力は底がないのだろうか……。


「よし、準備体操も終わったことだし本番と行くか、これを持て」


 僕が持たされたものはパンチングミットであった、交互に打ち込んでいくらしい。

まずは金剛さんがお手本を見せていく、現役から離れているとは聞いていたが、パンチは鋭くミット越しでも痺れるほどの威力に僕は驚く。

だが時々フェイントを混ぜてくるのは少し辞めて欲しい。それを交互に2セット行い、一旦休憩を行う。


「休憩も終わりだ、それじゃ次は優の異能力を試してみるか」

「待ってましたっ!」


 いつの間にか金剛さんは僕を呼び捨てで呼んでいた、何やら師匠としてスイッチが入ったのだろう。

だがそんな事はどうでもいい、僕は新しい異能力が感覚ではわかっているが実際に目にしないことにはわからない。

暴走した事もあってか少し怖いが、そんな事を言っている場合ではない。


 体内のある何かに意識を集中させていく、そしてそれを一気に放出するイメージ。

所謂、炎や水などを扱い異能力に共通する事だが、物体を具現化し扱う異能力はイメージが大切である。

向上力強化や身体能力強化などの常時発動型とは違う点だ。任意で発動する異能力を扱うにはそれ相応の訓練が必要となる。

今回、金剛さんが危ない場合は止めると言っていたからその言葉に甘える事にした。


 目を閉じ手掌から炎を放出するイメージを固めていく、火の弾を正面へ飛ばす。

頭の中でイメージを確定させると、後は異能力が発動する。

体外へと何かが流れ出る感覚、異能力が発動したのだろうと目を開くと目の前の光景に驚いた。

庭に生えた草が音を立て激しく燃えている、もしこれを人に放った場合の事を考えるとゾッとする。  

 

「やはり難しいか、最初はこんなもんだろう庭の事は気にせずどんどん使っていけ」

「はいッ!」


 僕はそれから何度も異能力を発動しては微調整を繰り返していく。

最後には少しコツが掴めかけていたが金剛さんが仕事に行く時間となりここで終了となった―――。

 やっぱり炎って魅力的ですよね、厨二心が・・・。

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