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死なない僕が英雄になるまで。  作者: 穂藤優卓
第一章 成長編
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第十七話 体の異変

 彼、本田拓也が何故、放課後の体育館に優を呼びつけたかには理由があった。

彼は優に入学試験の時スライムを倒した内容を聞きたかったわけではない、優が最初考えていた、花見をした日の事件の事を聞こうとしていた。

だが、表情を読み取りすぐにあの日の事は惚けられると勘付き、鎌をかける


 あの日、拓哉は新入生歓迎会を休み、走り込みをしていた、そんな時、月火と並んで歩く優の姿を発見するが声は掛けずトレーニングに没頭していると、異変に気づいた。

すぐに走って駆け寄ると、そこには一人の女性が黒装束を身に纏った人物と争っていた、すぐに女性は無残にも殺される結果となる、その時、拓哉は一歩も動けなかった。それどころか、その場から逃げてしまう。

優は拓哉とすれ違うように森の中へ入っていく、その様子を遠くから目の端で捉え拓哉もまた森の中へと入っていく。

そこで見た光景は異常だった、内蔵を地面に撒き散らし倒れた優の姿、そして優を蔑む目で見下ろす女に拓哉は恐怖し動けなかった。

息を潜め気配を消し、女に存在がバレないように、その場から離れようと後ろを向いた時、後方から鈍い音が聞こえ咄嗟に振り向くと、死んだものだと思った優が女を殴り倒していた。

その時点で頭は混乱した、今見ていることが夢だと言われたほうが信じられる光景、拓哉は逃げるようにその場から離れた。


 だが後日のニュースで報道され、現実味の沸かないまま登校した結果、優はピンピンとしていた。

意味がわからず今日呼び出し鎌をかけた、そして見事に優はそれにかかる、『え?あぁ、そっちか』その言葉に彼は確信した、あの日の出来事は夢ではなく現実だと。

しかし妙だ、あの傷は致命傷だが生きている、優にはまだ隠された何かがある。

ただそれだけではない、拓哉は優に嫉妬していた。あの日、拓哉は逃げ出したが優は一歩も引かず勇敢にも立ち向かった。

優にあって、拓哉には無いもの。その何かを拓哉は考えるが、答えは出ずただ時間だけが流れた―――。



 ◇◇◇◇


 拓哉と別れ僕は仁の元へと向かっていた。これから近くの河川敷へ行き特訓をする予定になっている。

教室へ入ると仁から遅いと文句を言われるが、素直に謝り僕たちは学校から出ていく。

特訓の予定地になっている河川敷は学校からそこまで遠くはない、学校の体育館を使えればよかったのだが、月火に聞いたら個人での使用は申請やらと面倒な手順を踏まなければならないらしい。

仁は面倒くさがりな性格でそれならと、ここに来たわけだ。

河川敷に着くと思っていたよりも広々としており、余裕を持って模擬戦などの特訓ができそうだ。


「よし、それじゃまずは優がどれくらい出来るか把握したい、模擬戦だけじゃ全部はわからないしな」

「おっけい、何をすればいい?」

「それじゃ―――」


 それから仁の指示通り熟していく。

走る速度を測定したり、筋力を図るために仁に拳や蹴りを打ち込んだり、短剣を使っての戦闘や以前練習していたパルクールなどを一通り仁に見せる。

仁は考えるように頷きながら見ている、その姿は宛ら師匠の様にも見える。


「師匠どうでしたかッ!」

「師匠ってなんだよ、まぁいいんじゃないかな、体は出来てるし動きも悪くない、戦闘にパルクールの動きを取り入れているのも面白い、だがパルクールの動きを主軸に置いた戦闘は変えたほうがいいかもしれない」

「なんで?」

「障害物や木みたいな物があれば活かせるんだが、今日の体育館みたいな何もない空間で活かすには少し難しい気がしてな」


 仁が言うことは最もだと感じた、パルクールのデメリットはそこにある。

練習の副産物として咄嗟の動きにも対応出来るようになったが、それはパルクールを活かした戦い方とは違う。

ならばどうすればいいのか仁に質問すると、考え込む様に手を顎に当てた。


「まぁ、俺と模擬戦をしていく中で自分にあったスタイルを見つける事が一番いいが、取り敢えずは対人戦に慣れろだな、俺は親父からそう教わった」

「親父って、あの柳生 剣心だっけ?」

「よくしってるな」

「前に少し行き詰まってて動画とか見漁ってる時に見たんだよ、剣心さん凄いよな」

「あぁ、親父は天才だな、てか親父の話しはいいよ、それより模擬戦だ構えろ」


 無理やり仁は話題を変えると、そのまま模擬戦が始まった。

試行錯誤しながらの模擬戦は実に酷い内容であった、仁は手加減する事なく僕の攻撃を全て対応する。

だが何かを掴めそうだ、仁の動きには一切の無駄がない、そして仁の攻撃にはいくつもの駆け引きがある。

仁の攻撃手段は少ない模擬戦の中にもわかっただけで数十種類存在する、基本的な打撃から絞め技にカウンター、そして何よりも厄介なのがフェイントだ。

足の向きや目線、などで行動を読み取ろうとするが、仁はその上を行く。驚異的な関節の可動域が、普通は攻撃出来ないはずの無理な体勢での攻撃を可能としている。

戦いの中でも敵の行動を読み取る心理戦が仁はずば抜けて凄い、それを真似た所で僕に出来るかどうかわからない。


「はぁ、勝てない」

「しかしまぁ、優も対応してきてるしこれからじゃないか?」

「そうか?それならいいんだけど」

「おうおう、もう一戦と行きたいところだが既に暗くなってきてるしな、今日は終わりにしよう」

「そうだな、帰るか」


 僕達の変える方向は真逆らしく、河川敷でそのまま別れることとなった。

既に日は沈み辺りは暗くなっている、僕の帰り道には街灯が少なく薄暗い中一人で帰るのは少し心細い。

少し早歩き気味に僕は帰路を歩いていると、体に謎の異変が起こる、体が焼けるように熱い。この現象は以前、花見をした夜にも起こった。

それから何回か起こったがそれもすぐに治り気にしていなかったが、今日の体の熱は異常だ。

火に投げ入れられたかと錯覚するほど燃えるように熱い、立っていることすら困難になり、僕は崩れ落ちるように地面へと倒れる。

地面を這いつくばるながらも月火に助けを求める用にポケットからスマフォを取り出そうとする、だがそこで異変は更に加速する。

燃えるような体の熱さは比喩表現などでは無かった、実際に体が燃えていた。

近くにある草木に炎は燃え広がり、僕は異常な熱さに耐えることが出来ずそのまま意識を手放そうとしたその時、一人の男性の声が聞こえる。


「どうしたんですかッ!……君は確かッ―――」


 僕は男性の顔も確認する事も出来ず、意識を手放した。


 某悪魔の実を食べたようなッ!

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