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死なない僕が英雄になるまで。  作者: 穂藤優卓
第一章 成長編
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第十六話 模擬戦 3

 本田拓也の模擬戦が終わり僕は考察していく。

明らかに鈍くなり高度も下がった事から考えられることは数個、まずは体力切れを加速させる能力、それか重力による行動阻害。

僕の考えでは後者の可能性ほうが高いだろうと思う、だからこそ地面に降り立った時の翔の状況だろう。

重力により地面に押さえつけられ、最後には動くことすら困難になっていた、重力の影響が受け始めるまで5分と長い時間は掛かっていたが、それでも発動すれば相手は身動き取れずに倒されるだろう。

流石、主席で入学しただけはある、決着は早かったが見応えのある模擬戦だった、いつか僕も手合わせをお願いしたい。


 そして最後の模擬戦となった、最後を飾るのは僕と仁の戦い。

ちゃんとした対人戦はこれが初だ、だが仁はどうも慣れているような感じがする。

だがそれもそうだろう、仁は柳生家当主の息子である、対人戦を基本とした柳生家では毎日のように対人訓練を行っているだろう。

僕と仁では経験値の差がある、そして柳生家では太刀や大太刀などといったリーチの長い武器を使うことが特徴だ。

それに比べ僕が持つ攻撃手段は刃を丸めた短刀、リーチの差は明らかである。

ならば僕が取るべき行動は懐に入り、リーチの差を無くした戦いが基本の動きとなるだろう、間合いをとっていては負けるのは目に見えている。

作戦が纏まると、二人は定位置に着いた。


「なぁ優は俺が刀を使うって思ってるだろ」

「え?違うのか」

「まぁ、俺は刀は使わない、これはハンデでも何でも無いから気を悪くしないでくれ」

「それはそれで助かるけど……」

「はい、お喋りは終わり、それじゃ準備も整ったみたいだし最後の模擬戦を始めるね、では試合開始ッ!」


 僕たちの模擬戦が始まった、始まる前に仁は刀を使わないと言った。これは布石でも何でも無いだろう。

実際に入学試験では仁が刀を持っていなかった、だが仁には対人線の経験が豊富にある、刀を使わない事は僕に対してハンデとなるだろうか。

だが僕の身体能力も前と比べてばかなり向上している、素手の殴り合いならば僕にもまだ勝機はあるだろう。


 当初考えていた、太刀相手の作戦だが、僕はそれを実行する。地面を蹴り一気に加速し間合いを詰める。

僕の俊敏さは先程の模擬戦を見ていてもクラスでは上位に食い込むレベルだろう、仁との間合いは一瞬で無くなる。

先手必勝、僕は初速の勢いを乗せた拳を仁の腹部へと叩き込む。だが僕の手は腹部へと到達せず、仁は膝で拳を受けた。

力を込めた拳が膝に当たると、激痛で堪らず後ろへと飛び距離を取った。最速の攻撃だったにも関わらず仁は余裕を持って対処した。


 愚直に攻めても駄目かもしれない、攻撃の中にフェイントを入れつつ、次の一手を見切られないよう立ち回る。

再び間合いを詰める、僕は拳を握りしめ再び打撃を繰り出すと見せかける、だが仁は釣られない僕の考えていることがわかっているかのような動きだ。

一旦拳を引き、左足を軸に右足で横っ腹を蹴り上げる、仁は寸前の所で屈んで躱し、反撃してくる。

自分の体を支える軸足を足払いし体のバランスが崩れる、このまま倒れてしまえば追撃を食らってしまう。咄嗟に左手を軸にし上体を起こす。


「やるじゃん、追撃で終わるかと思ったぜ」


 仁にはまだ余裕があるようだ、それに引き換え僕には余裕が無い。

僕は後ろに手を回すと、腰に刺さっていた短剣を手に取る。仁に悟らせないように握ると、短剣を投げつける。

この方法は以前、柳生家で見た事のある短剣の使用方法だ、仁相手には通用しないだろうとわかってはいるが、一瞬の隙きを作るには十分だろう。

考えていた通りに、仁は短剣を余裕を持って躱した、だが短剣と同時に迫りくる僕に一瞬気づくのが遅れる。

速さの乗った拳を放つ、防御が一瞬遅れ拳は腹部へと直撃した。僕は拳を戻そうとするが、がっしりと掴まれてしまう。


「掴まえた、これでおしまいだな」


 仁は僕を背負投の要領で僕を投げ、関節技をキメる、そこで月火からストップが入った。

模擬戦は仁の勝利で幕を閉じる。


「危ねぇ、負ける所だった」

「悔しい、もう一回だもう一回ッ!」

「こらこら、今日はもう終わりだよ」


 月火からお叱りを受け、僕は渋々了承した。

今回、浮き彫りとなった僕の経験の少なさが勝敗を決めたと僕は考えている。

対人戦に置いて経験値とは技量以上の力になる、僕は今回の模擬戦の反省点を仁と話し合う。


「優はセンスが良いけど、毎回動きが単調すぎるな序盤から簡単に動きが手に取るようにわかったぞ」

「だよな、実は初めて対人戦したんだよね」

「まじか、ならこれから経験を積めば化物になりそうだな、楽しくなってきた。それじゃ放課後とか暇なら俺と特訓するか?」

「いいのか、是非お願いしたい」

「おっけおっけ、それじゃ今は取り敢えず終わりだな」


 僕の問題点も浮き彫りになった、これからの課題として頭に入れておこう。それ仁との特訓は僕の力になる、本当にありがたい。

それにしても仁は強かった、刀を使わないと言っていたが刀を使った仁はこれ以上に強いのだろう、見てみたい。

いつか使うことになるだろうと僕は気長に待つことにした。

頭の中で今日の出来事を整理していると、何やら作業をしていた月火も終わったらしく、生徒の前に立った。


「皆凄いね、レベルが高い模擬戦を見れて期待が膨らんだよ、それじゃ皆の事は把握したし今日の模擬戦はここで終了です、皆お疲れ様でした」


 こうしてAクラスの初めての模擬戦は終了した。

僕はタオルで汗を拭いながら教室へ戻ろうとすると、僕を呼び止める声がし足を止めた。

振り返ると、そこに居た人物は本田拓也であった。


「後で時間あるか?」

「まぁあるけど」

「少し聞きたいことがある、放課後にこの体育館に来てくれ」


 一方的に要件だけ伝え、本田拓也は教室へと戻っていく。

咄嗟に時間があると言ってしまった後気づく、さっき仁と約束をしていたんだった。

僕は以前から話したかったこともあり、仁には少し遅れるとだけ伝えると、仁も了承してくれた。



 そして放課後―――。

僕は模擬戦が行われた体育館に来ていた、そこには既に拓也が立っており僕を待っている。

少し駆け足気味に駆け寄ると、相手も気づいたのか僕の方へと振り向く。


「ごめん遅くなった、僕も聞きたいことがあるんだけどいいかな?」

「まぁいいが」

「今日の模擬戦で見せた異能力ってなんだろうなって」

「あれは重力操作だ、まぁ制限を掛けたから初歩だが、わからなかったのか?」

「いや、候補には上がってたけど、確証が無かったから聞きたかったんだ」

「そうか、それじゃ俺も質問するが良いか」

「うん」


 拓哉は考えるように少し唸ると、僕に伝えることが纏まったのか顔を上げた。


「先日のあれは何だ」


 先日のあれと聞かれた時、僕の頭に過った光景は花見をしていた日の出来事である。

あの時、拓哉もその場に居た、もしかしたら彼は僕の秘密を知ってしまったのではないだろうか。

背中に汗が流れる、ここでバカ正直に花見の時の事を答える事は出来ない、僕は質問への答えは惚ける事にする。


「おい、聞いてるのか?君がスライムを倒したときのことだ」

「え?あぁ、そっちか……あれはね―――」


 拓哉が聞いていたのは事件の日の事ではなく入学試験でのスライムの事だったと安堵する。

隠すことでも無いし、一緒に入学試験を受けた人は殆どが知っている話しを僕は拓哉に教える。

拓哉は、なるほどと頷き体育館から去っていった、何か引っかかるが気のせいだろうと僕は仁が待つ教室へと向かう―――。

 ブクマや評価ありがとうざいます!

模擬戦はここで一旦終了です!

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