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六十話 異物




カツン、カツンと無機質な靴音を響かせ薄暗い廊下を歩く。

そこは外の煌びやかな通路とは違い、ぼんやりとした光の球が宙に浮くだけの寒々とした空間だった。

歩みを進め移りゆく景観は、さながら洞窟の奥へ奥へと入り込んでいく感覚に似ている。


やがて道が開けて、遮蔽物の一切ないヘリポートのような広い空間がそこにあった。


正面―――30mほど先だろうか、固く閉ざされた金属の扉が見られる。


間違いなくあの先にあるのが、統括管制室だ。

サセッタで共有している情報と寸分違わず同じである。


だが、その手前に、唯一情報にないモノがそこにあった。


「カカッ、殺し尽したと思ったら、まだ蛆虫どもが沸きよるか。なんじゃおんしら、(わらわ)を起こして何がしたい」


黄金色に輝く瞳に、細く切れたような瞳孔が侵入者を舐めまわす。

おかっぱの黒髪には、可愛らしく黄色いカーネーションの華が添えられている。

華やかな着物にぽっくり下駄を履いていた。


それはモノなどではなかった。

人の言葉を話し、人の形をし、人であることをさもありなんと言わんばかりの存在感を放つ。

しかし、明らかに自然に溶け込めない不気味さを持ち合わせている。

画然たる異質な存在であることは、その場にいるだけで誰もが感じ取ったことだろう。


しかし―――


「……なァにがバケモンだァ。期待して来てみれば(わらじ)一人たァ、笑わせるねェ! ただ単にタモトの部下が弱かっただけかよォ」


エクヒリッチの皮肉に隊員全員が笑う。


それはあくまで自然界における異質な存在というだけで、強者の存在感ではない。

少なくともエクヒリッチはそう感じ取った。他の隊員たちも同じ心持ちだったに違いない。


「おい、お前らやっとけェ。俺は六戦鬼(セクスセイン)のとこに行く」


タモト隊を屠ったツワモノがどんなものかと来てみれば、拍子抜けもいいところである。

エクヒリッチはあきれ顔で踵を返す。

隊員たちをかき分け、元来た道を戻る。


「あのキッズはどうします」


隊員の一人、ファーデルが言った。


「あとは好きなようにしろォ。(わらじ)は犯そうが何しようが構わねェ。あァ、ただしクラッキングはしとけよ、ローシュタインの奴にやるっつっちまったからなァ」


「ひゃっほぉぉぉぉぉおおおお! ヤるぜ、お前たち!!! 久々のメスだ!」


その声と共に、盛りのついたサルのように鼻息荒くして、先頭にいた数十人が少女に向けて走る。

伸ばした手が色白の肌に触れようとした次の瞬間


「妾に気安く触るな、蛆虫どもが」


刹那の間、近寄った男たちの首が弾け飛んだ。隊員たちは次々と崩れ落ちる。

首から湯水のごとく湧いて出る生暖かい液体が、コンクリートの床を紅く染め上げる。

入り口付近のエクヒリッチ隊は目を丸くする。



「ひゅ~、あっぶね~!」


特攻していたファーデルは、済んでのところで上体を反らし、少女の攻撃を躱していた。

改めて少女を見ると、右足の外側が重点的に血に染まっていることが分かる。


彼女が繰り出したのは“ただの蹴り”であった。

ただし、それは常識を凌駕した桁違いのスピードで、の話である。

加えて、ぽっくり下駄の底からは収納式の刃が飛び出している。

べっとりと血のりが付き、それが命を刈り取ったというのは一目瞭然だ。


ファーデルはファイティングポーズをとり距離を測る。

形印(コントラー)を浮かばせ、セリアンスロープの真骨頂を発揮する。


「いくぜ」


体勢を低くし、身長の低い子供の目線に合わせる。

目は口ほどに物を言うではないが、一流の格闘家ともなると、目線の揺れだけで敵の動きを読むことができるという。


拳を握りタメを作った後、スマッシュを放つ体勢に入る。

仮想空間の中でシオンと対峙した際に繰り出した技である。

空圧で家一つをも容易に吹き飛ばすそれは、掠っただけでも致命傷になりかねない。


「オラァ、喰らいやがれ!!」


ファーデルの究極の一撃が放たれる。



だが―――


少女はわずかに体を傾けさせたかと思うと、そのまま迫りくる拳を片手で受け止めた。

衝撃と爆風が部屋中に巻き起こり、建物全体を揺らした。


「バ、バカな……! う、受け止めた……だと!?」


ファーデルは狼狽する。


彼女が行ったのは防御態勢を取るというわけでもなく、かといって躱すわけでもない。

ミット打ちの練習であるかのように、平然と殺人級の拳を小さな手のひらに収めたのだ。


一同が唖然としている中、少女はファーデルの腕の関節を外す。

ゴリッと腕と肩から音が鳴る。

ファーデルがたまらず腕を引き戻した時にはもう遅かった。


少女が懐に入り込むが早いか、両手でファーデルの頭を掴むと、そのまま跳び上がり空中で体を一捻りする。

その捻りは体全体から腕に伝わり、ゴキッという鈍い音がファーデルの首から響いた。


少女はそのまま華麗に着地し、着物についたほこりを払う。


「カカッ! 息巻いておいてその程度かえ。なら今度はこちらから行かせてもらうとしようかの」


ぎらりとした黄金の瞳が、入り口付近に立っているエクヒリッチ隊に向けられる。


「上等だ! かかってこいやぁぁぁぁあ!!」


エクヒリッチ隊が怒号を上げ襲い掛かる。



「蛆虫のボスは―――」



少女が呟く。

その瞬間、隊員たちの目の前から姿を消す。



「―――お前かえ?」



縮地を行ったかのように、3000人いた隊員たちを全て背後に置き去りにして、一瞬にしてエクヒリッチとの距離を詰める。


少女は矢継ぎ早に蹴りを繰り出し。

エクヒリッチもそれを予想していたかのように、歯をむき出しにしてスピアを腕に顕現させ。


両者の攻撃が激突し空間を揺らした。






電力機能管理施設から脱出し、迂回しながら城下街を走り抜ける。

目指す先はヌチーカウニー帝国城付近で、激戦を繰り広げている本部隊だ。


屋根を飛び、塀を走り、人工的に作られた川を飛び越える。

十分ほど走り続けたところで、


「音が聞こえますね、クロテオードさん」


風に混ざる衝撃音や叫び声を聞きながらアイネが言った。


「あぁ、あと三分も経たずして戦線が見えてくるだろう。決して気を抜くな。全方位警戒しながら戦え」


「……はい」


「どうした、体調がすぐれないか?」


先頭を走るクロテオードは振り返らずに言う。


「いえ、そういうわけじゃないんです。ただ、元は同じ人間なのにどうして争わないといけないんだろうって」


「……」


「分かってはいるんです。争うことは間違いだっていうのも、そして、世界を変えるにはそれ以外に手が無いことも」


アイネの表情に影がさす。


当然だった。


人類完全人造人間化計画(C.C.レポート)という、全ての人間の自意識を奪い支配下に置く非人道的な計画が露見したのが六年前。

人権や人としての尊厳を全て踏みにじる謀略が明るみに出たことで、人造人間(レプリオン)技術を有するマセライ帝国の信頼は地に落ちるかと思われた。


しかし、実際に暴動や反マセライ運動を起こしたのは、人造人間(レプリオン)技術を持たない諸外国だけ。


マセライ帝国を筆頭に、その傘下に収まっているヌチーカウニ―帝国、ドセロイン帝国、ロンザイム帝国に住む人々は、その謀略に対しリアクションを示すどころか、まるで何事も無かったかのようにだんまりを決め込んでいた。


否、事実を無視し、何事もなかったかのように振る舞っていたのではない。

そもそも彼らには、その事件があったことすら覚えていないのだ。

すなわち、帝国の統括管制室にある人造人間(レプリオン)制御装置によって、都合の悪い記憶部分だけを削除されていたのだ。


さらにその後のサセッタの調査によって、最近になって驚くべきことが明らかにされた。


都合の悪い部分を削除するだけでは、前後の記憶に齟齬が生じてしまう。

そこで帝国側が行ったのは、事実とは異なる情報を刷り込むことでその辻褄を合わせるということを秘密裏に行っていたのだ。


どんな証拠を突きつけようと、どれだけ実証しようと帝国は変わらない。

その一方で、マセライ帝国に組しない者たち、つまり人造人間(レプリオン)でない者達には迫害にも似た行為を行っているのだ。


それはアイネやシオンたちが身を持って体験している。

孤児院の子供たちが一人残らず殺された光景は、今となっても夢にでてくる。


最初は小さな悪の種だった傲慢や不遜は、いつしか大きな実へとなっていくものだ。


半永久的な命を持つ我々こそが人間の究極進化だと。

不可能だと思われた不老不死を得た我々の方が上だと。


故に、話し合ったところで、マセライ帝国やその属国には馬の耳に念仏である。

強大な権力の前では何の意味もないのだ。



「だったらアイネ、お前はどうする? 争うのは嫌だと子供のように泣き叫び続けるか」


クロテオードは無感情に言う。

目の前には本部隊のアイリス隊が戦っているのが見えてきた。


アイネはかぶりを振る。


「いいえ、そんなことはしません。何も行動しないことは逃げ出すことと一緒です。絶対にいつか後悔する日が来ます」


目元に形印(コントラー)を浮かばせる。

身体に電気がほとばしり、戦闘態勢が整う。


「私の願いは誰もが笑って過ごせる世界。それが私の守りたいもの。だからこそ一刻も早く、一分一秒でも早くこんな世界を変えなきゃいけないんです」


それはおそらく世界にとって救いであり、その存在こそが救世主と成りえる者なのだろう。


少なくとも彼女だけはそれ信じている。

小さな体にその(ともしび)を燃やし続ける限り。

変わることはできると。

どれだけ暗闇にいようと、変われないものなどないのだと。


クロテオードは正面を見ながらも小さくうなずいた。

副隊長だけではない。後から着いてくるランプも、ルナも、ブロガントも。

全員が同じ思いだった。


「デヒダイト隊B班、本部隊に合流する。決して死ぬな」








ミラージの頬に汗がつたう。

肩で息をして、白いマントのところどころに血痕がついている。

形印(コントラー)は消え、隊員たちが次々とやられていくのを横目で見る。


ミラージは能力を最大限に行使したことで、ほとんどのスタミナを使い果たしていた。



一般的なセリアンスロープの能力は自らに働きかけるものが多い。

タモトのように攻撃力を上げたり、シオンのようにスピードを強化したり、ノイアのように姿を消したりといった類のものだ。


もちろん、ミラージにもそのセリアンスロープとしての能力は備わっている。


だが、今回彼が行ったのは外界に干渉する力、いわば能力応用の臨界点ともいえるもの。

範囲は広大、少しでもほころびを見せればそこから崩されていく。

故に、集中力・体力を普段以上に消耗させる諸刃の剣。


モデル生物にカメレオンを持つミラージだけが到達できる、セリアンスロープの究極極意である。


しかし、それであるがために時間制約がある。

戦線を維持するため、そして愛する者のために能力の使用に踏み切ったのは、ひとえにエクヒリッチ隊が統括管制室にたどり着いたからだ。


一分とかからないであろうと踏んでいたミラージにとって、最大の痛手であった。


「Holy shit、嫌な予感が当たったってことなのかね~。エクヒリッチ、一体何をやってるんだ」





空をはばたきながら次々とレーザーを躱す。

その隙間を縫うようにして、ミラージ隊副隊長コロンヌは急降下しショットガンをぶっ放す。

手前にいた人造人間(レプリオン)の騎士風の鎧は砕け散るも、核までは届かない。


帝国兵はすぐさまレーザー銃を構え、コロンヌに狙いをつける。


「チッ!!」


背後から迫りくる閃光を右へ左へと避け、上空へと避難する。

その時、視界の隅に天艇小隊の一人がレーザーで羽を貫かれたのを見た。

上空で体勢を崩し、そのまま落下していく。


「くそっ!! 今助けに行く!!」


コロンヌは高速で暗い夜空を旋回し、急いで仲間の元に向かう。


だが―――


続けざまに地上からレーザーがマシンガンのように、落下する仲間に放たれる。

光に呑まれながら悲痛な叫び声を上げる。

胴体が裂け、腕が飛び、羽がもげる。

四散した体からは、血の雨が地上に降りそそぐ。


「あぁ……、っくしょう、ちくしょうがぁぁぁあ!!」


コロンヌは叫び、滑空していく。

再びショットガンを構えるが、しかし、砲煙弾雨の如くレーザーが襲い掛かる。

たまらず回避行動をとるが、運悪くその流れ弾が仲間を打ち落とす。


コロンヌは歯を軋ませる。

手の打ちようが無い。

どこにも攻める隙が見当たらないのだ。


仲間は次々と倒れていき、サセッタ陣営は崩壊寸前。

何もできない自分が歯がゆかった。


されど、敵の攻撃は止むことはない。

このままいけばただひたすらに蹂躙されるだけだ。


だが、それでもまだ希望はある。

人造人間(レプリオン)兵の動きを止めさえすれば。

統括管制室をクラッキングしさえすれば。



まだ、勝機はある―――。



「くそ……、くそッ!! 頼む、……頼むッ、エクヒリッチ隊!! このままじゃ全滅だ!! はやく……、早くしてくれぇぇぇええ!!」








「ふむ……、少しは骨のある奴じゃった。それがゆえに、今回の経験値は大きいのぉ」


隠し扉の先にあった統括管制室前の広大な空間。

そこに艶やかな着物を着たおかっぱの少女が、紅に染まる地面に一人佇む。


右手にはエクヒリッチの生首がぶら下がり、切断面から血の雫を滴らせている。

ゴミを捨てるようにそれを手放した後、手の動作を確認する。


「……まったく、ドン・サウゼハスの阿呆めが、妾の定期メンテをしろとあれほど言っておいたではないか」


憎々しげにマセライ帝国の王の名前を口にする。

動かしている指先は滑らかに見えるが、彼女にとっては気に食わないらしい。


ひとしきり体の関節を動かした後、不満げな表情をうかべる。


「さて、この調子だと一年はここに放置されておったな。妾の電源を切っているのをいいことに、ここまでの不敬を働くとは……。奴め、どうなるか思い知らせてやろうかえ」


ぴちゃりと血の海を一歩進み、エクヒリッチ隊が侵入してきた場所に行こうとする。


「……まてよ、ガキが。まだ俺との戦いが終わってねえだろうが」


鉄の匂いが蔓延する空間に、低い声が響き渡る。

少女が振り返ると、今やエクヒリッチ隊でただ一人生き残っている男―――ギンガが血にまみれながら立っていた。

銀に輝いていた髪の毛は紅に染まり、もはやどこから流血しているのか分からないほどである。


「カカッ、蛆虫は生命力もしぶといのか。覚えておこう」


不機嫌な表情から一転して、どす黒い笑顔を浮かべる。


「腹に穴をあけたはずじゃったが……、なかなかどうして。妾のデータには記録されてない状況だのう。カカッ、愉快愉快」


「ッハ! ラッキーパンチが入ったぐらいで浮かれるなんざぁ、いかにもクソ雑魚ナメクジがしそうなことだな、オイ。くっちゃらべってる暇があんなら、俺をもっと楽しませろよ」


「……下等生物はよう吠えるのぉ。妾に対するその不敬、死を以て償ってもらうぞ」


ドン、と風が揺れた気がした。

少女は一切の予備動作を見せずにギンガとの距離を詰める。

鬼のような笑い顔を浮かべながら、頭めがけて回転蹴りを放つ。


ギンガはとっさに身をかがめて躱し、左の拳を少女めがけて繰り出す。

だが、拳は空を切り反撃には至らない。


互いが距離を取る。


少女は黒い艶やかな髪を揺らし、切れ長の瞳孔を金色の瞳の中で大きくしながらギンガを見つめる。

やがて、ゆっくりと口角を上げると、我が意を得たりといった表情を浮かべる。


「カカッ! これは滑稽よ! もしやとは思うてたが、右腕が使えぬのか。見たところ焼け焦げているのかえ。蛆虫にはお似合いよな」


呵々と笑う少女とは対照的に、ギンガは息を深く吐き出す。


―――もっとだ。……もっと早く、より強く! 俺自身が進化してるのが分かる。俺はまだ強くなれる。


ギンガは思わず笑いをこぼす。

それを見た少女は眉根にしわを寄せる。


「妾の挑発に乗らぬと申すか、蛆虫の分際で!!」


刹那―――少女が消える。

立っていた場所から地面に溜まる3000人分の血潮が宙に弾け飛ぶ。


一気にギンガの懐に潜り込み、着物の袖から仕込み刃が刀身を覗かせる。


「ッハ! 見えてるぜ!!」


しかし、ギンガは避けようとしない。

左手を振りかぶり、クロスカウンターを狙う。


だが―――


「カカッ、左手ばかりとは馬鹿の一つ覚えよの。その右手は飾りかえ」


少女は小さく跳び、宙で体を一回転させ右足で拳を弾き飛ばす。


その瞬間、ギンガの胴回りががら空きになる。


「―――終わりじゃ」


仕込み刃を心臓に突き刺す。

それで勝敗はきっした。

そのはずだった。


少女が切っ先を突き刺すその刹那。

死という概念が左の視界に映り込んだ。


「なっ!?」


迫りくるそれは、壊死していたはずのギンガの右手。

今までにないほど早く、今まで以上に強力な拳。



まだギリギリ躱せる。



少女はそう判断する。

だが同時に、袖から繰り出した仕込み刃も、ギンガの胸に切っ先が僅かに突き刺さる。

コンマ一秒の間に、心臓をくりぬくことが可能な位置にまで達していた。


このまま突き刺せば、間違いなくギンガは致命傷を負うだろう。

しかし、それは彼の攻撃が少女に直撃することを意味する。

放たれた拳の勢いが死ぬことはない。


敵を屠るか。

身を守るか。



少女の瞳にギンガが映る。

狂っていた。たった一つしかない命を使った遊び。

命が尽きかけようとしているその瞬間に、彼の興奮は最高潮に達していた。

浮かべた彼の表情は愉悦以外の何物でもない。



さあ、どっちが先に死ぬか遊ぼうぜ。



そんな妄言が聞こえてくるようだった。


その瞬間、地面に溜まっていた血潮が爆発でもしたかのように弾け飛ぶ。

大量の血のりが天井にまき散らされる。


静まり返る空間。

充満した鉄の匂いがより一層濃くなる。

やがて、天井に散った血が雨漏りのように一つにまとまり、紅い雫となって落ちる。


「……ッハ!! 避けやがったな」


紅く照らされる空間にギンガの声が響いた。

その双眸の先には小さな体をうずくまらせた少女がいた。


少女はゆっくりと立ち上がると、左の頬をなぞる。

塗装が剥がれ、鉄の塊が顔を覗かせていた。



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