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十六話 選抜試験開始!!





ドーム内に周囲との距離をとるよう機械的なアナウンスが流れた。


建物内はかなり大きいのか、どこまで奥に行っても壁に行き当たらないかと思われた。

全体的に等間隔にスペースができたことをアスシラン及び他の監督官が確認する。



受験者の足元の地面が浮かび上がってきたかと思うと、説明があった通りヒトを覆いかぶさるようにカプセルが出現した。

次々と一人、また一人とカプセルに取り込まれ、そしてシオンやアイネ、周りにいたギンガ、そのお供も同様だった。



カプセルに入る直前、シオンは不敵に笑うギンガの顔が網膜に焼き付いた。




中に取り込まれ、完全に外界からの光がシャットアウトされた。

カプセルの中は思いのほか硬く少し窮屈さを感じた。




突如、目の前が明るく光ったかと思うと人工知能と思われる抑揚のない音声が聞こえてきた。

どうやら光ったのはディスプレイのようだった。




『今から概要について説明します。戦闘前にはワタクシ人工知能『Phantom-ereaM』による投影が行われドーム全体にバーチャル空間が映し出されます。同時に空間内いる人間にも戦闘用仮想体(レクター)というバーチャル化が適用されます。しかしながら、今回はアナタの初期配置や初心者ガイドのためにワタクシの中に入っていただきました』



―――なんだろう、最後の一言がすごい感情がこもってた気がする。機械なのに!


シオンの表情が一瞬引きつるも、そのまま機械音は流れ続ける。




『戦闘で負傷を負った場合でも投影内のものとなり仮想空間外では適用されません。つまりワタクシの管轄下で戦闘仮想体(レクター)であるならば、腕が吹き飛ぼうが頭が吹き飛ぼうが実体には何ら影響がないのです。すごいでしょう』



「おまえ……、実は感情あるだろ」




『……さて、ここまでは理解いただけたと思います。ここからはいくつかの質問ののち、今回使われる舞台についての説明に移りたいと思いますがよろしいですか』



「もういいよ……、なんでも……」



シオンは若干疲れた顔でそう答えた。

他の人のカプセル内もこんな感じなのだろうか。アイネやノイアはどう対応しているのだろうか。そんな想像をシオンは思わずしてしまう。




―――アイネは馬鹿正直にほめたりしてそうだな。ノイアは……間違いなく戸惑ってるだろうな。ビビりだからな、あいつ。




そんなことを考えていると、≪Phantom-ereaM≫による質問が始まる。


『では、質問を始めさせていただきます。端的にお答えくださいね。まずお名前をお伺いします。嘘はつかないでください。しっかりと脈拍・瞳孔・脳波の計測を行っていますので見破っちゃいますからね』



気付くと体中の至る所に吸盤がついていた。



『では……お名前は』

「……シオン」


『年齢』

「12」




『両親の所在地は』

「……二人ともいねえよ。父親はHKVで、母親はドセロイン帝国に殺された」

『……なるほど、失礼いたしました』

「別にいいって、律儀な奴だな」





『次、身長・体重』

「だいたいでいいか? 孤児院入ってから全然測ってないんだ」

『いえ、このカプセル内で把握できますので結構です』

「だったら何で聞いた!?」





『では、次の質問に』



そのあともシオンの身辺に関することや生い立ち、サセッタに入ろうと思った経緯などについて聞かれた。


何度か質問のやりとりを終えた後、ついに終わりが見えてきた。



『では、最後の質問です』

「やっとか……」

『好きな人はいますか』



長い沈黙が流れる。



『おや、すみません。難しかったですか。質問を変えましょう。意中の相手はいますか』

「いや、質問内容変わってないから! 言い方変えただけだろ!」



『心拍数上昇を確認。脳波に大幅な乱れ、同時に交感神経作用による分泌物を確認。解析中……同定完了。脳内分泌物はドーパミン、他三種類を確認。以上の結果を踏まえワタクシ Phantom-ereaM は計測被検体シオンを興奮状態にあると結論付けます』 



「急に人工知能らしいことするのやめろよ!!!!! しかも全くもってどうでもいいことに人類の英知をつかうな!!!!」




顔を真っ赤にしながらシオンは腹の底から突っ込んだ。

人生で一番感情を表に出した瞬間だったかもしれなかった。


『思春期ですね』


そう言ったかと思うとカプセル内に子供たちの笑い声が流れる。

よくテレビのコメディー番組で流れるSEである。

シオンは孤児院で年下の子供たちが観てたのを何度か一緒に見たことがあったのですぐにそれだと気づいた。



しかし、今の状況で流されるのは完全に悪意のある使用法だとシオンは思わざるを得なかった。



『では、最後に今回の舞台について説明します』



人工知能は何事もなかったかのように次の説明に移ろうとする。

シオンは恥ずかしさからか顔から汗をにじませていた。




『フィールド範囲は200m×200m×20m。シュミレーション戦闘地は市街地。補給武器有。天候・風速・温度は時間と共に変更。エリア感知人数22人、登録確認。カプセル内の者は無線イヤフォンをお付けください』



目の前のディスプレイから小型の片耳用イヤフォンが差し出される。


シオンはおとなしく指示通りに右耳にそれをつける。




『無線イヤフォンはワタクシ Phantom-ereaM と常に連絡が取れるようになっています。質問などがあればお気軽にお呼びください。また、使用者が半径1m以内で相互に共闘認定した者との連絡も取りあえるようになっています。終了時間は開始から1800秒後となります。なお、開始地点はランダムにカプセルが移動し決定いたしますのでご了承ください。カウントダウン開始、60、59、58……』




刻一刻と時間が過ぎていく。

数字が減っていくたびに緊張感が高まっていくのがわかった。



『シオン』


カプセル内から流れるカウントダウンの音とは別に、小型イヤフォンから声がした。

先ほどまでと同じ機械音特有の抑揚のない声から Phantom-ereaM だと理解できた。




「どうした」


『ワタクシのことはミスターファントムと呼んでください』



「……」



そしてシオンは考えるのをやめた。





『……5、4、3、2、1、start!』




合図とともにカプセルが開くと、隙間から外界の光がシオンに向けて差し込んだ。



挿絵(By みてみん)



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